共謀罪の歴史と、懸念される別件逮捕の危険性 ~「8.23 学習会 侵害される言論・表現の自由」 2012.8.23

記事公開日:2012.8.23取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・阿部玲/奥松)

 「通信傍受、ダウンロード規制など、新しい規制がどんどん準備されている。表現の自由は、なかなか手をつけられないため、外堀を埋めるような規制が増えている。怖い時代になる」──。

 2012年8月23日、神奈川県横浜市のかながわ県民センターで、「8.23 学習会 侵害される言論・表現の自由」が行われた。盗聴法に反対する市民連絡会の角田富夫氏が、「施行後12年間の盗聴法の適用状況と問題点」を報告。本編では弁護士の山下幸夫氏が、「侵害される表現の自由…コンピュータ監視法、ダウンロード処罰、共謀罪、新たな捜査手法導入」をテーマに講演を行った。

 最初に角田氏が、盗聴法(犯罪捜査のための通信傍受に関する法律・1999年施行)の適用状況と問題点を簡潔に報告した。「2011年の報告では、91%は犯罪に関係のない盗聴だった。本来、法律が対象としているのは、薬物売買、銃器取扱い、組織的殺人、密入国の4つだけだが、22条により、1年以上の刑を科せられるものであれば盗聴してよい、ということになっている」など、別件盗聴の問題を指摘した。

記事目次

■ハイライト

  • 山下幸夫氏(弁護士):「侵害される表現の自由…コンピュータ監視法、ダウンロード処罰、共謀罪、新たな捜査手法導入」、角田富夫氏(盗聴法に反対する市民連絡会):「施行後12 年間の盗聴法の適用状況と問題点」
  • 日時 2012年8月23日(木)
  • 場所 かながわ県民センター(神奈川県横浜市)

共謀罪法案が浮上してきた経緯

 本編に入り、山下氏は、まず共謀罪の歴史から解説した。「そもそも共謀罪は、自民党、公明党政権下で国会に法案が出された。2008年のG8先進国首脳会議の際、『国際組織犯罪防止条約批准のために、共謀罪の早期成立を図らなければならない』と、加盟国同士が確認している。当時の鳩山法相は、これをテロ対策に絡む条約だとして、『早期に成立させたい』と語った。その後、なかなかうまく進まなかったが、同年、京都でコンピュータウィルスを使った事件、2010年には同じ人物によるイカタコウィルス事件などが発生し、『サイバー犯罪法を、共謀罪と切り離したらどうか』という議論が起きてきた」。

 「民主党は、政権交代前の公約で、『共謀罪は作らなくとも、条約批准できる』と言っていたが、3〜4年前、FATF(マネーロンダリングに関する金融活動作業部会)加盟国が日本を審査した時、『国際組織犯罪防止条約を批准していない』という指摘がなされた。財務官僚からも、『共謀罪を成立させてほしい』という働きかけが、民主党に行われた。民主党は跳ね返したが、共謀罪とは切り離して、コンピュータ監視法案が通ってしまった」。

 これに対し、野党の方から「コンピュータ監視法をやるのに、共謀罪をやらないのはおかしい」と、批判があったという。2011年9月に発足した野田政権では、もともと共謀罪に反対していた平岡秀夫衆議院議員(当時)が法務大臣となった。山下氏は「進展はないな、と思っていたら、『通常国会で共謀罪を通すだろう』という記事が出た。その後、平岡氏は更迭となるが、のちに『共謀罪はいらないと思うが、条約を批准するのに必要な予備罪的なものは検討するつもりだった』と語っている」と、当時を振り返った。さらに今年(2012年)に入り、「5月、法務省の官僚が、日弁連の事務総長に『日弁連は、共謀罪には妥協してくれ』と言い寄って来て、これは『間違いなく出そうとしている』と確信した」という。

サイバー犯罪条約について

 サイバー犯罪条約は、2001年に欧州評議会で発案され、日本では、2004年4月に国会で批准の承認を得たものの、法整備上の問題のため、長いこと審議が重ねられてきた。

(…会員ページにつづく)

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