「国益にかなう」「チャンスをもたらす」——。安倍総理はTPP交渉の「大筋合意」を受け、その成果を誇った。しかしそれが「真っ赤な嘘」であることが、政府自身によって早々に明かされた。総理が「TPPによって最終的に撤廃される」と強調した日本車の関税が、米国内においては「無限に撤廃されない」可能性が露呈したのだ。
民主党が関係省庁の担当者からTPP交渉の結果をヒアリングする「経済連携調査会」の第4回が2015年11月11日、衆議院第二議員会館で開かれた。
政府の発表によると、自動車分野では日本が輸出する乗用車で25年後、トラックは30年後、バスは10年後に関税が撤廃されることになっている。
- 乗用車(現行税率2.5%)15年目から引き下げ開始、20年目で半減、25年目で撤廃
- トラック(同25%)29年間は維持し、30年目で撤廃
- バス(同2.0%)10年目に撤廃
ところが外務省の説明によると、TPP交渉の「入場料」として、日本と米国の2国間で自動車や保険分野について話し合う「日米並行協議」では、日本が唯一「攻め」の分野であった自動車についても、大幅な譲歩を強いられていた。
驚くべきことに、日本に協定違反があった場合、米国側は関税引き下げまでの期間を先延ばしにしたり、引き下げた関税率を再び上げるペナルティを課すことができるというのだ。
つまり、乗用車の場合、15年目までに日本に違反があった場合、米国は引き下げの開始時期を遅らせることができる。15年目以降では、引き下げた関税率を元に戻す(乗用車の場合は2.5%まで)ことができる。
- 日時 2015年11月11日(水) 14:00過ぎ~
- 場所 衆議院第二議員会館(東京都千代田区)
- 主催 民主党
永遠に関税が撤廃されない可能性の一方、米国側には自動車分野のペナルティなし!?
民主党の玉木雄一郎議員は、このあまりに「不平等」な合意内容について、厳しく追及した。
「自動車25年、トラック30年というのは延びると。延びる期間は理論的には無限だということか?最大10年とか最大5年とか決まっていない?(官僚うなづく)ですよね。加えて、撤廃が決まってからさらに10年間はセーフガードがあると言う理解でいいかどうか。めちゃくちゃ長いですよね。関税撤廃になってから復活する可能性がある期間がさらに10年間ぐらいある。半世紀ぐらいあるかもしれない、ということですよね」
外務省の説明によれば、関税率の引き下げの先延ばしや、関税率を復活させる期間について、最長何年という制限はないという。つまり、永遠に関税が撤廃されない可能性もあるということだ。
一方で米国側に協定違反があった場合も、同様のペナルティを日本側が課せられるということであれば、まだ公平な取り決めと言える。ところが、日本はWTO(世界貿易機関)協定の下で、すでに自動車関税をゼロにしており、関税率を引き上げると、WTO協定違反になってしまうためできない。
そこで、日本側の対抗措置としては、TPPで関税が引き下げられた「自動車以外の品目」の税率を上げることになるという。外務省の担当者は「そういう意味では同等性というか、米国だけが厳しい措置をとれるということではない」と説明するが、自動車業界にとっては一方的にペナルティを課されるだけの不平等条約だ。
国会で追及も…噛み合わない安倍総理の答弁
【敗戦・TPP】「攻める」はずの自動車分野で「関税が永遠に撤廃されない可能性」も!? 日米並行協議での驚くべき譲歩内容が民主党による官僚ヒアリングで明らかに! http://iwj.co.jp/wj/open/archives/274515 … @iwakamiyasumi これは「敗戦」の氷山の一角に過ぎない。
https://twitter.com/55kurosuke/status/667977905884925952