「TPPは私たちの生活を豊かにする」「私たちにチャンスをもたらす」――。安倍総理は、TPPの「大筋合意」が発表された翌日、2015年10月6日に記者会見を開き、美辞麗句を並べた。この日の夕方、官邸前で行われたTPP反対の抗議行動でマイクを握った共産党の小池晃議員は、「軍事的に米国の属国にするのが戦争法案だとすれば、経済的に米国の属国にしまうのがTPPだ」と厳しく批判した。
「だいたい大筋合意と言うが、ドアのノブに手をかけてちょっとまわしたくらいの話。いよいよこれからが本番です。決してあきらめてはいけない。
日本の政府が何を要求したのか、相手国が何を求めたのか、これだけ国民の生活に深く関わるものでありながら、一切明らかにしないで、大筋合意だ、などと言っているが、これは国会決議(※)違反ではないか。
これから、合意文書の策定、協定文書の策定、調印、批准、国会承認、これからいくつもヤマがやってきます。これからがまさに闘いの本番です」
(※)衆議院でのTPP国会決議より 七 交渉により収集した情報については、国会に速やかに報告するとともに、国民への十分な情報提供を行い、幅広い国民的議論を行うよう措置すること。
後発医薬品の活用で「自国民の命を守りたい」という新興国の要求をふみにじった「恥ずべき日本」
「大筋合意」が発表された、米アトランタでの閣僚会合では、日本側の焦りは色濃かった。
参加12カ国のなかで、特に交渉が難航したのが「バイオ医薬品のデータ保護期間」をめぐる交渉だ。この期間が過ぎれば安い後発医薬品(ジェネリック)として活用できるため、貧困層を多く抱えるマレーシアやチリ、ペルーなどの新興国や、医療費を抑えたいオーストラリアなどは「5年」を主張。逆に、製薬会社の利益を最大限に確保したい米国は「12年」を主張し、両者は激しく対立していた。
そんななか、早く「大筋合意」に持ち込みたい日本側は、「この期に及んで交渉の駆け引きはやめ、誠実にギリギリの妥協点を探るべきだ」などと、米国サイドに立ち、その他の国を急かした。こうした日本政府の姿勢について、小池議員は「恥ずべきことだ」と痛烈に批判した。
「今回のアトランタ会合で日本が果たした役割は本当にひどい。日本はすべて譲歩して、交渉することが何もなくなったから、甘利さん(TPP担当大臣)は早く帰りたい、帰りたいと言っていただけ。何の主張もしていない。
(バイオ医薬品の)データ保護期間5年を守りたいという、自国民の命を守りたいという、そういう国の要求もふみにじって、米国の横暴に手を貸した。恥ずべき日本の役割だ」
内田聖子氏「この国の政府、官僚は一体誰のために、何をしているのか」
アトランタで会合を現地取材していたPARC(アジア太平洋資料センター)の内田聖子氏もスピーチで、この日本側の姿勢について怒りをあらわにした。
「怒りを通り越して情けない。早々に譲歩してしまった国が、ギリギリで頑張っている国に、早くしろよ、ときれている。どれほど倒錯した状況なのか。
米国は企業の意向を受けており、医薬品業界のロビイストもたくさん来ていて、何かあるたびに、製薬会社の人と何か話してから交渉に向かった。対するチリやオーストラリアー、マレーシアやペルーは、貧困層も多く、『薬の値段は命に関わる』という観点でぎりぎりの交渉をしていた。そんな国に向かって、『早くしろよ』という言い分が、どうしてまかり通るのか。
この国の政府、官僚は一体誰のために、何をしているのか」
日本政府が「大筋合意」を焦ったのは「組閣」と「参院選」のため!?
なぜこうまでして日本政府は、早急な「大筋合意」にこだわったのか。内田さんは、「組閣」と「来年夏の参院選」が理由だと分析。「現場で見ていると(日本政府の)醜態ぶりが目立った」と振り返った。
経済界と官僚が目指すは国家財閥という戦前回帰。JR東海の会長葛西氏が云ったといわれる「そろそろ戦争してくれねえかなぁ」が全てを表している。
その神輿に乗るのが安倍であり、祖父の岸信介がアメリカの言いつけに従って、この国を売り渡したことと同じ事を今また行おうとしている連中達なのだ。
このトライアングルは国民は家畜位にしか考えていないことの証明がなされただけの事。
ココで昔と少し違うのは、情報が結構早くに漏れてしまうという事と池田隼人という二番手が居らず、安倍一人で戦争と経済を進めなくてはならない、という人材不足の組織になってしまっているということだ。ここにこそ今の自公という枠組みの持つ弱点がある。
攻めるべきはこの人材不足の部分なのだろう。