TPP違憲訴訟、第2次提訴で原告数は約1600人に ~ハワイ閣僚会合の実相を山田正彦元農水相が報告「日本は明らかに失敗」 2015.8.21

記事公開日:2015.8.27取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田)

特集TPP問題

※8月27日テキストを追加しました。

 「日本のメディアは、ハワイ閣僚会合でTPPは最終合意に至ると見ていたが、実際は違った。メキシコが、国益に関わることを日米が勝手に決めることに立腹したのだ」──。元農林水産大臣の山田正彦氏は、TPPをめぐる日本の外交は、明らかに失敗していると断じた。

 「TPP(環太平洋経済連携協定)交渉差止・違憲訴訟の会」は、2015年8月21日、TPP交渉差止・違憲訴訟の第2次提訴を東京地方裁判所に行い、都内で記者会見を開いた。今回の提訴は、5月15日の1063人の原告による第1次提訴に続くもので、原告の数は527人である。

 第1次提訴も第2次提訴も、投資家対国家紛争解決制度(ISD)条項による国の司法主権の奪取や、TPP交渉の秘密性がもたらす「知る権利」の侵害に加え、交渉結果が食の安全、医療制度や保険、教育、公共事業、知的財産といった分野で、憲法に基づく国民の諸権利を脅かすことを問題視している。

 元衆議院議員の辻恵弁護士は、「原告の合計数が増えていくことを期待している」と発言。訴訟の会としては、1万人規模の原告団を目指しているという。

 訴訟の会の理事長を務める山田氏は、会見の終盤で、7月下旬にハワイで行われたTPP交渉の閣僚会合について報告。日本政府のみが、前のめりになっている印象が強いと語った

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■ハイライト

■全編動画

  • 原中勝征氏(日本医師会前会長)、山田正彦氏(元農林水産大臣)、赤城智美氏(NPO法人アトピッ子地球の子ネットワーク事務局長)、辻惠氏(弁護士)ほか

原料、産地、添加物など、食品表示の「劣化」を危惧

 訴訟の会代表で日本医師会前会長の原中勝征氏は、「TPPは、日本の国全体を根本から覆す悪しき協定。私たちは将来世代のために、TPP交渉の差し止めと、TPP交渉に日本政府が参加していること自体が憲法違反である、などの観点から、違憲確認を勝ちとらねばならい」と意気込んだ。

 原告の1人、アトピッ子地球の子ネットワーク事務局長の赤城智美氏は、「食物アレルギーを抱える消費者にとり、食品表示は、日々の安心・安全な食生活を営んでいく上で不可欠な指標である」と訴えた。

 その上で、日本の食品表示は、その厳格さで世界のトップ水準にある点を強調すると、「(TPP交渉が合意に至り)日本の食品表示の水準を、他国の緩い基準に合わせることになれば、食の危険にさらされる日本人が大量に生まれることになるのではないか」と危惧を口にした。

 弁護団に加わっている辻弁護士は、「第1次と第2次の訴訟を合わせれば、計1600人弱の原告がTPPに反対していることになる。今後は第3次、第4次と提訴を重ねるたびに、原告の延べ人数が増えていくことを期待している。東京地裁のみならず、全国各地での提訴が具体化すればいい」と語った。

 その一方で、東京地裁が門前払いをしてくる可能性にも言及。その対策として、「(国に各1万円の損害賠償を求めているため)原告一人ひとりが(TPP発効への不安から)精神的苦痛を受けていることの証拠調べが必要になってくる。また、自衛隊のイラク派遣をめぐる差止訴訟では、名古屋高裁が、平和的生存権を基礎に、原告側に訴訟の権利があることを認めている」と説明した。

「メキシコの怒り」が意味するもの

 7月28日から31日まで、米国ハワイ州のマウイ島で行われた、TPP交渉の閣僚会合について報告した山田氏は、「日本の新聞は、最終合意に至る確立をかなり高く見積もっていたが、実際は違った」と指摘し、メキシコの姿勢が、ことに印象的だったとした。

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 「自動車の原産地規制(※)で、日米が40%台後半で妥結しそうになった時に、メキシコは北米自由貿易圏(NAFTA)と同じ62.5%を主張した。国益に関わることを、日米が勝手に決めていることに立腹したのだ」

(※)原産地規制とは、その商品を構成する部品や加工などを自国か、もしくはTPP参加国で調達した比率が一定の割合を超えて初めて「自国製品」と認められる取り決め。

 自動車のように、生産国が異なる部品の集合体である工業製品の場合、決められた水準以上の部品が、TPP加盟国生産であれば、たとえば日本メーカーであれば「日本製」を掲げられるが、これが62.5%にまで引き上げられると、部品や加工をTPP不参加国に頼っている日本メーカー車の多くで、それが不可能になる。

 メキシコは自国利益を優先したのであり、日本のメディアが言っている、「日米交渉さえうまくいけば、TPPは最終合意しやすい」との説は、現実的ではないことが示された形となった。

 TPP交渉が漂流入りする可能性が強まった、との見方が出ていることについては、日本政府が依然として最終合意に意欲的であることを踏まえ、「予断は許されない」と山田氏は表情を引き締めた。そして、「(交渉で妥協の)カードを切るという点では、日本政府のみが、前のめりになっている印象が強い。TPPをめぐる日本の外交は、明らかに失敗している」と懸念を表明した。

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