脚本家で作家の辻真先(つじ・まさき)氏に2012年8月16日、戦前や戦時下での暮らし、現在の政治、日本の行く末などについて、岩上安身が話を聞いた。辻氏は、時として、放送禁止用語も織り交ぜながら、忌憚なく意見を語った。
辻真先氏は、1932年、名古屋市生まれ。名古屋大学文学部卒業後、NHKで多くのテレビ番組を演出し、NHK退職後は虫プロで『鉄腕アトム』の脚本を手がける。
ほかにも『キャプテン・ウルトラ』『悪魔くん』などの特撮脚本や、『デビルマン』『巨人の星』『サザエさん』『ドラえもん』など、黎明期のテレビアニメ界で、辻氏が関わらなかった作品がないといわれるほどだ。
また、作家として『迷犬ルパン』シリーズなどの推理小説も多く手がける。昨年2011年は携帯小説まで発表、その創作意欲はいまだ衰えを知らない。
軍人たちの出世手段に変わっていった大東亜共栄圏
昨年、終戦記念日(8月15日)に行ったインタビューの続きを、今年は再び、1日遅れの8月16日に行なった。
辻氏は戦時中の状況について、「知識人ほど、かっこつけがひどく、権力に迎合した。軍隊では、大学上がりの将校たちは知識人づらし、命令するだけ。その下の者たちには、レイプ、略奪、暴力など、傍若無人な行為をなんでも許した。そういう上層部の方が悪い」と、辛辣な言葉を投げかける。
辻氏が物心ついた頃はすでに、第2次世界大戦への足音が刻々と近づいていた。アヘン戦争で明らかになった横暴なイギリス、アメリカから、自立を目指した大東亜共栄圏も、戦争へと飛び火し、アジアの独立と資源確保の建て前が、私利私欲にかられた軍人たちの出世手段という本音に変わる有り様を、目の当たりにしたという。
辻氏は、戦後の日本について、「日本は村社会のまま、お上に従うことを美徳とする村人だ。このヒエラルキーは、戦後の今も変わらない」と話した。
現在の官僚組織と少しも変わっていない軍国主義