「沖縄の歴史も知らず、簡単に沖縄のメディアを潰せると思うな」――反撃の狼煙上がる! 百田尚樹氏に「絶対潰さなあかん」と名指しされた沖縄2紙の記者が語った“覚悟”! 2015.6.30

記事公開日:2015.6.30取材地: テキスト動画
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(IWJ・原佑介)

 沖縄の歴史も知らずに、そう簡単に沖縄のメディアを潰せると思うな――。

 自民党の報道弾圧に反撃の狼煙があがった。

 6月25日に開かれた自民党の勉強会で作家・百田尚樹氏が「沖縄の二つの新聞社は絶対に潰さなあかん」などと発言し、その場にいた自民党議員らも「沖縄の特殊なメディア構造をつくってしまったのは戦後保守の堕落。左翼勢力に完全に乗っ取られている」「マスコミを懲らしめるには、広告料収入がなくなるのが一番」などと同調した。

 メディアはこれを問題視して大々的に報じ、野党も連日国会で責任を追及。波紋が広がっている。

 そんな中、自民党のメディア弾圧に懸念を示す超党派議員が2015年6月30日(火)、参議院議員会館で「言論の弾圧を許すな!怒りの緊急集会」を開催。集会では百田氏に名指しされた琉球新報、沖縄タイムスの記者らも参加した。

 沖縄タイムス東京支社報道部長の宮城栄作氏は、自由、平等を求めて闘った沖縄の戦後史を振り返り、沖縄のメディアは沖縄県民が育ててきたメディアであると指摘。

 「憲法が天から降ってきた本土とは決定的に違う。その歴史を知らずして、潰そうと思ったからといって潰せるか。(百田氏らが)いかに歴史を知らずに言っているかがよくわかる」と断じた。

■ハイライト

  • 発言 島洋子氏(琉球新報東京支社報道部長)、宮城栄作氏(沖縄タイムス東京支社報道部長)、永田浩三氏(武蔵大学教授)、新崎盛吾氏(新聞労連委員長)、樋口聡氏(出版労連中央執行委員)、岩崎貞明氏(民法労連書記次長)、ほか

民主党・枝野幸男幹事長「国会に議席を持つ者として情けない」

 集会には32名の超党派の国会議員が参加した。その中には民主党の枝野幸男幹事長の姿もあった。枝野議員は「民主主義の前提である表現、報道の自由がこうした状態になり、立憲主義、民主主義が危機にあることが明らかになった」と指摘する。

 そのうえで、満員となった会場に向け、「戦後の民主主義が70年も経ようとしているのに、こうした問題が公然と語られることは同じく国会に議席を持つ者として情けなく感じる。『おかしい』という国民の輪をいかに広げるかが重要だ」と語った。

 維新の党の初鹿明博議員も集会に参加した。初鹿議員は6月26日に、いわゆる「戦争法案」に反対する渋谷集会(※)に参加し、共産党の志位和夫委員長と手を取り合ったことで党から厳重注意を受けたばかり。

▲共産党・志位和夫委員長、民主党・菅直人元首相と手を握る初鹿明博議員 6月26日渋谷

 初鹿議員は副幹事長の辞表を提出した直後に、この日の議員会館での集会に駆けつけた。

 「いろいろお騒がせしている初鹿です。報道機関を懲らしめると言った大西英男議員が私の(選挙区の)相手なので、必要以上のことは言わないが、表現の自由、報道の自由を妨げることがあってはならない。そんな政権に、このような重要な法案(戦争法案)を審議する資格はない」

「デマの誹謗中傷が『表現の自由』として保護される価値があるのか」

 沖縄タイムスの東京支社の報道部長・宮城栄作氏は「この議員たちが安倍首相の側近とされる人たちだと考えると、やはり安倍政権の底流にある本音が明け透けになったとみるべきだ」と指摘する。

 さらに「読みもせず、勝手なデマをひろげて、『潰せ』とか、『あの2紙はどうにかしないといけない』などと中傷されるのであれば、それは『表現の自由』として保護される価値があるのか」と疑問を呈し、法的措置の対象にもなりうる、との認識を示す。

 「憲法では『表現の自由』を認めたうえで、特定個人の具体的な弊害が生じた場合、名誉毀損、業務妨害など、刑罰や損害賠償の対象になるわけで、過度の罵声が浴びせられる行為には侮辱罪になるということもある」

 また、宮城氏は「勉強会で相次いだ報道批判に、政権与党から当初、異論があまり出なかったのは、それは安倍首相がそういう言動を喜んでいると思っているからだろう」と推測する。

 「そうすると問題の肝は、安倍首相自身の『言論の自由』に対する考え方、あるいは、そもそもの憲法観が一番問われなければならない。発言した一人の大西(英男)議員は今日も、『懲らしめないといけない』『広告を自粛するべき』と発言しており、単に『議員の劣化』という個人の問題にとどまらない。所属する党の総裁は、ちゃんと謝罪しなければならない」

「沖縄の歴史を知らないで、潰そうと思って潰せるか」

 続いて宮城氏は「沖縄タイムス」の歴史を振り返る。

 「沖縄タイムスは1948年に創刊し、当時は、米軍の出版許可制のもとで検閲を受けてきた。だから沖縄タイムスも当初の論調は遠慮がちだったし、当初から基地被害を強く告発していたわけではない。ただ、米軍の事件・事故に怒る住民に背中を押されて、不条理を告発できるようになってきた。厳しい論調に鍛え上げられてきたと言える」

 また、報道に限らず「沖縄の戦後史」は、自治や自由、自主や平等、自己決定といった権利を求める運動の歴史だったと宮城氏は位置づける。

 「『憲法』や『言論の自由』が天から降ってきたような本土とはやっぱり決定的に違うのではないかと思う。沖縄は住民やメディアが一歩ずつ権利を勝ち取ってきた歴史があった。そんな沖縄の歴史を知らないで、潰そうと思って潰せるか。そういう歴史を知らないで言っているのがよくわかる」

 宮城氏は最後に、「安倍政権にとって、沖縄の世論形成に多少なりとも影響している我々2紙は憎むべき存在なんだと思うが、我々の報道は、県民に世論を突き動かされたものであって、世論を反映させているだけだ」と主張。

 「政府の言うことを聞かない報道を『偏向』と呼ぶなら呼んでもいいが、『どこに軸を置くか』ということで『偏り』は違ってくる。沖縄に軸足を置けば、安倍政権の考え方こそが偏向と言わざるを得ない」と断じた。

「これからも地元紙として政府寄りではなく、『沖縄に偏向した』報道をしていきたい」

 「勉強会なる会合で、沖縄の2紙を名指しで『歪んでいる』という風に言われたが、沖縄の新聞が『歪んでいる』ことの問題は、沖縄自体が歪んでいるからだ」

 こう語るのは琉球新報東京支社の報道部長である島洋子氏だ。

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「「沖縄の歴史も知らず、簡単に沖縄のメディアを潰せると思うな」――反撃の狼煙上がる! 百田尚樹氏に「絶対潰さなあかん」と名指しされた沖縄2紙の記者が語った“覚悟”!」への2件のフィードバック

  1. あのねあのね より:

     百田さんが問題発言をした文化芸術懇話会は、外務大臣の岸田文雄さんの『分厚い保守の会』に対抗し次の総裁選を無投票にするという文脈で、筆頭副幹事長で総裁の特別補佐の萩生田さんによって作られた会、つまり安倍晋三首相の党内後援会だ。文化芸術懇話会の設立のニュースは2015年5月23日、産経配信のネットニュースで報道された。
     記事によると、《関係者は首相の支援組織であることを認め》《「首相が仕事をしやすいように、邪魔者が出てきたら排除するのが役割だ」と強調》したそうだから、今回の“問題発言”はその一貫である。会の趣旨がそもそもそういうことなのだ。安倍首相は国会での答弁ではとぼけたことを言っているが、自民党がスポンサーに直接圧力をかけた過去がある。圧力をかけた番組はニュースステーションで、圧力をかけた政治家本人が言ってたのだから間違いない。これはラジオで大学の講師が証言した事実である。
     今回の文化芸術懇話会だが、メディアを会の冒頭だけ呼んで取材をさせており、会の途中ではメディアを締め出したがマイクを使っているためにメディアには丸聴こえだったようだ。実は、この会合はメディア対策を話し合う会合で、ワザと聴かせてメディアを萎縮させるのが本来の目的だった可能性が甚だ高い。百田さんがひどい発言をヒートアップさせているが、どうも百田さんに関心を引き寄せるのが狙いらしい。この問題の本丸はあくまでも安倍晋三首相である。百田さんは安倍の代弁を他人を装ってしているのだ、本当は仲間なのにだ。釣りで云うコマセだ。
     小林よしのり氏を呼んだ『分厚い保守の会』の会合を止めさせたのも自民党執行部で、目的は安倍首相を無投票で総裁に選出させるためだ。当たり前だが、百田さんはカネを貰って講演をしているわけで、百田さんのヒートアップしている発言の元を断つにはスポンサーを下ろさせ“懲らしめる”のが一番だ。
     辺野古の埋め立てで自民党の説明が二転三転するのは本来目的が全く別のところにあるからで、最大の理由はカネの話である。百田さんや安倍晋三首相はカネの為に沖縄県民を愚弄しているのである。羽田空港の最新滑走路は杭打ち工法、ケーソンを使った埋め立てなど共通点が多い。最新の工法の為にとても建設費がかかった、つまりカネも沢山抜けるのである。もうひとつ参考になるのは神奈川県の三浦半島の先端の三崎の埋め立てで、ケーソンを使った埋め立ての他に防波堤まで作っている。相模湾に面した外海だから防波堤が必要になった。
     三崎の埋め立て地は図面が神奈川県のホームページに載っていると思うが、辺野古の埋め立て地はやはり防波堤が必ず必要になるので、羽田空港の最新滑走路と三崎の埋め立て地を合わせた金額は軽くオーバーすることとなると思う。当初の予算を大幅に上回るダム方式になる可能性が高い。
     首相やネトウヨは“左翼”という用語の理解は悪い人程度の理解しかしていない。本当に勉強が出来ない中学一年生レベルで“左翼”という単語を使っている。仮にも大学を出ているはずの百田さんが“左翼”という用語をこのレベルで使うのは、ネットにあふれるネトウヨへ材料を提供しているに過ぎない。しかし、ネトウヨは組織的なので、どこからかカネがでているとは思う。いずれにしても、百田さんの発言も議員の発言も全て安倍晋三首相の考えていることと同じなので、百田さんと議員と安倍晋三は同時に批判するべきである。

  2. 佐藤うめ より:

    すでにマスメディアの意義を果たしてないのに存在する価値はあるのですか?
    自分達の良いように偏向報道してるだけじゃないですか
    やってる事は暴力団と一緒です。それよりタチが悪い
    私達健全な市民はわかりながらも目をつむってきました。もう我慢出来ません!日本人は立ち上がる時が来たと思いました!

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