「私の娘がマタハラのない平和な社会で成長していけるように、裁判で闘う」 ~妊娠、出産で企業に追いつめられたマタハラ被害者たちが過酷な実態を語る 2015.6.24

記事公開日:2015.7.3取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・花山)

※7月3日テキストを追加しました!

 「妊娠がわかると、突然解雇を告げられた」「育児休暇を終えて職場復帰すると、説明もなく雇用条件が変更された」「妊婦でも特別扱いしないと言われた。せっかく宿した子を、会社が堕ろせと言っているのと同じ」──。

 働く女性が、妊娠や出産をめぐって職場で不当な扱いを受けるマタニティハラスメント(以下、マタハラ)の実態を、被害を受けた女性たちが明らかにした。被害女性たちは、労働組合や弁護士を通した交渉、労基署や労働局への相談などを行ってきたが、「マタハラは企業への罰則がない」という現状では解決に至らず、やむを得ず裁判で闘っている。

 2015年6月24日、東京都千代田区の厚生労働記者会にて、マタハラNet主催による「STOP!マタハラ 被害女性の合同記者会見」が行なわれた。登場した女性たちの勤務先は、公共交通機関、介護事業所や医療機関など、弱者への配慮が求められるところであるにもかかわらず、妊娠、出産した女性職員へのマタハラが起きていた。雇用者側にマタハラの問題意識が薄く、コンプライアンス違反の自覚がないという共通点も浮かび上がった。

 妊娠がわかって解雇された女性は、「裁判所の力を借りて、子どもを産む権利を守りたい。私の娘がマタハラのない平和な社会で成長していけるように、少しでも力を注ぎたい」と語った。

 マタハラNetをサポートする新村響子弁護士は、「マタハラとは何か、という定義がない。きちんと法律に書いてほしい。どういうことがマタハラになるのか、まったくわからない現状が、さらなるマタハラ被害を生んでいる。セクハラと同様に、事業主が対策を講じなくてはいけない措置義務を設けるべきだ」と訴えた。

記事目次

■ハイライト

  • 日時 2015年6月24日(水) 13:00~
  • 場所 厚生労働記者会(東京都千代田区)
  • 主催 マタハラNet

子どもが3歳になった途端、長時間不規則勤務へ

 はじめに、関西の私鉄で働く女性駅員が、自身の被害状況と心境を語った。

 「下の子どもが3歳になるまでは、法律に規定があったおかげで、分娩休暇、育児休職、短時間勤務制度を取得して働き続けることができた。しかし、法律の規定は子どもが3歳を超えると、使用者に努力義務を課すに留まっている。下の子どもが3歳になった途端、会社は私に異動を命じた。その部署は朝8時から21時45分までの8~10時間労働。長時間不規則勤務で、子どもを保育園に預けて働くことが困難となった」

 夫と調整しても不可能だったため、女性は勇気をふり絞って勤務時間の配慮を会社に申し出た。ところが、駅長や5人の役員は、「あなたの家庭環境のことは知らない。働きたいなら自分で何とかしなさい。法律的に、子育てへの配慮は3歳までで終わり。できないなら辞めるしかない」と告げ、相談に乗ろうともしなかったという。

 女性は、「私の会社の親会社は、厚生労働省から子育てサポート企業として認定された『くるみんマーク』を受けている。にもかかわらず、育児をしながら働く人の味方になるどころか、継続就業を断念させようとしてくる」と悔しさをにじませた。

 「子どもが3歳になった途端、会社を辞めなければならないのかと、ワラにもすがる思いで弁護士に相談に行った。弁護士が何度も会社に掛け合ってくれたが、会社は『あなただけ特別扱いはできない』と話し合いに応じないため、大阪地裁に配転命令無効確認の仮処分の申し立てを行った」

 その上で女性は、「私は、今までお世話になった方々に恩返ししたい。今まで通りに働き続けることができたら、介護や出産をする社員のサポートをしたいし、会社のために精一杯働きたい」と語った。

マタハラによって人間不信「外に出るのも怖くなった」

 横浜に本社があるデイサービスセンターに、1年ごとの更新で5年間勤務していた契約介護職員は、2013年7月に妊娠が判明した。営業所長に妊娠を報告したが、勤務内容も勤務時間も妊娠前と変わらず、送迎介助、移乗介助、車椅子や歩行器を抱えての階段昇降、入浴介助に従事させられた。つわり症状も出てきて、入浴介助中に吐きそうになったり、送迎介助中にお腹が張るなどしたため、この職員は、「これではせっかく宿した子を、会社が堕ろせと言っているのと同じではないか、と考えるようになった」と話す。

 2013年9月中旬、今後の働き方について営業所長と面談した際、「何があっても働くという覚悟はあるのか。特別扱いするつもりはない。妊婦として扱うつもりもない。一生懸命やらなければ辞めてもらう。契約更新はない」と言われ、以後、所長や同僚から無視されるようになったという。

 「妊娠、出産、育児をきっかけに、不当な扱いをするマタハラだと、あとになってわかりました。精神的に追いつめられ、人が信じられなくなり、外に出るのも怖くなった」

 この職員は北九州地域一般労働組合に加入し、マタハラに対する謝罪と、所長の交代について団体交渉を行ってきたが、会社はマタハラの事実も所長交代も認めなかったため、やむを得ず裁判に踏み切った。2013年12月に切迫早産のおそれがあると診断され、2014年1月にうつ状態に。出産後の2014年3月には、うつ病の診断を受けている。「最近も、うつ症状に悩まされているが、家族や支援する人たちに励まされ、懸命に裁判を闘っている」と話した。

「妊娠することが間違っていたのか……」

 日本に来て11年になる外国人女性は、日本企業に正社員として勤務してきた。2014年の5月に妊娠がわかり、少し不安はあったが、きちんと仕事をすれば大丈夫だろうと思っていたところ、8月に突然、社長から解雇通告されたという。

 「解雇される予感は何もなく、仕事も順調だったので、頭が真っ白になりパニック状態となった。子どもを産んで、子育てしながら働き続けたいと思っていたのに」

(…会員ページにつづく)

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「「私の娘がマタハラのない平和な社会で成長していけるように、裁判で闘う」 ~妊娠、出産で企業に追いつめられたマタハラ被害者たちが過酷な実態を語る」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「私の娘がマタハラのない平和な社会で成長していけるように、裁判で闘う」 ~妊娠、出産で企業に追いつめられたマタハラ被害者たちが過酷な実態を語る http://iwj.co.jp/wj/open/archives/250383 … @iwakamiyasumi
    これが「女性が輝く社会」の実態。こんな社会で本当にいいの?
    https://twitter.com/55kurosuke/status/617280260397096962

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