全国の火山が立て続けに異変を起こしている。何か日本で異常事態が起きている印象を受けるが、本当にそうなのか。
仙台管区気象台は5月6日、山形県、福島県にまたがる吾妻山で火山性微動を観測したと発表した。今年に入ってから、1月と2月に続いて3回目の観測で、周辺に注意を呼び掛けている。吾妻山の噴火警戒レベルは昨年12月に、1から2に引き上げられていた。
福島県は関係機関の連絡会議を開き、登山客らに対する注意喚起の対応などを確認。福島地方気象台は「活動が大規模に活発化している状況ではないが、今後も監視していく」と話しているという。
吾妻山をめぐっては先月30日から、吾妻山を通る観光道路「磐梯吾妻スカイライン」が前面通行止めになっていた。基準値を超える火山ガス濃度が計測されたためだ。今月2日に基準値を下回ったため、通行止めは解除されたが、その後も火山性微動が観測されたということで、今後も警戒は必要だ。
阿蘇山でも20年ぶりに火山性微動を確認「噴火警戒レベル2」へ
熊本県南阿蘇村でも今月3日夜、震度1の地震があり、福岡管区気象台は「阿蘇山のマグマや熱水が移動して地面が揺れる火山性微動が原因」と発表した。阿蘇山の火山性微動で震度1以上の地震が観測されたのは、平成7年7月以来20年ぶりだが、気象台は「火山活動がさらに活発化する様子はみられない」と説明している。
阿蘇山は中岳第1火口の小規模噴火が続いており、気象庁は噴火警戒レベルを、火口周辺を規制する「2」に設定。火口から約1キロは立ち入りが禁止されている。
- 読売新聞 2015年5月5日 阿蘇山で火山性微動 震度1観測
過去最多の噴火回数に迫る鹿児島県・桜島
九州では、鹿児島県、桜島も活動を活発化させている。5月10日には、今年に入ってからの噴火回数が532回を超え、観測史上最多の噴火回数に迫る勢いだという。気象台は「活動が活発化している」として、降灰や噴石に注意するよう呼び掛けている。
桜島の昭和火口では13年8月18日、噴煙の高さが5千メートルに達する噴火が発生し、鹿児島市などに大量の灰が降り、交通機関に影響が出た。現在の活動について気象台は、「この時と同規模かそれ以上の噴火の可能性がある」と指摘している。
GWに観光地・箱根を襲った“異変”
今、もっとも注視されているのは、火山性地震を繰り返す箱根山である。火山性地震の増加を確認した気象庁は5月3日、「高温の水蒸気が突発的に噴き出す」可能性があるとして、噴火警戒レベルを1に設定し、周囲に立ち入らないよう注意を呼びかけた。
さらに6日、水蒸気爆発の可能性が高まったとして噴火警戒レベルを2に引き上げ、火口周辺の立ち入りを規制する「火口周辺警報」を発表。火口付近の大涌谷で小規模な噴火が発生し、噴石や火山灰が飛散する恐れもあるとして、警戒を呼びかけている。気象庁は水蒸気爆発が起きた場合、大涌谷周辺では直径50センチ以上の噴石が飛散する恐れがあるとしている。
また、国土地理院は8日、神奈川県・箱根山の大涌谷で、直径約200メートルの範囲が最大約6センチ隆起したと発表。何か重大な出来事が起きているのではないか。識者に聞いた。
壊滅的被害が発生する、ということはなさそうだが注意が必要
火山学者で静岡大学防災総合センター副センター長の小山真人氏は、IWJの取材に対し、箱根山の異変について「2001年の状態に近い」と話す。箱根山では2001年にも群発地震が発生し、今回のような隆起などの地殻変動、噴気異常といった現象がみられたという。
「今のところ箱根山が大規模噴火を起こし、壊滅的被害が発生する、ということはなさそうです。2001年も噴火しませんでしたが、しかし注意は必要です。
熱水活動が高まっているので、なにか土木工事したり、大雨で地すべりが起きるなどした場合、爆発する可能性もあります。それでも近寄らなければ大丈夫で、大雨の日や、強い群発地震で刺激があったときには注意が必要です」
6センチの隆起に関しても、「非常に局部的で、今の段階では得に気にする必要はありません」と話した。
また、小山氏は、噴火警戒レベルをすみやかに設定した気象庁などの今回の対応を比較的によいと評価する。
「御嶽山がきっかけで、みんな過敏になっています。気象庁も噴火警戒レベルを上げやすいし、マスコミも敏感になっている。2001年の時は今のような対応がなされず、自由に箱根山に出入りできる状態になっていました。気象庁などが情報を伏せたんです。当時に比べればいい対応だと言えます」
事態を矮小化し、観光客を呼び寄せようとする箱根町
一方で、規模を小さく見せようとする動きもある。イメージダウンを懸念する箱根町観光課は、避難指示が町内の一部に限られることを強調した地図をホームページ上で公開。箱根山周辺をアップで掲載するだけでなく、町のほぼ全域にわたる東西十数キロ、南北10キロ弱を掲載したことで、赤い円で示された大涌谷の半径約300メートルの避難指示区域が小さく見えるようになっている。
しかし小山氏は、この図の赤い「立入規制エリア」はよくみると、箱根町の設定した避難指示区域の半径300メートルになっておらず、視覚的効果を狙ったのか、半径150メートルほどに矮小化されている、と指摘する。
「避難の想定確保範囲は大涌谷から半径700mくらいが筋だと思います。箱根町が出した300メートルという指示に根拠はありません。しかも、観光課が出している地図では、300mではなく、150mほどになっています。避難指示などはいい対応をしていますが、ごまかしはいけません。明らかなごまかしです」
地元経済を不安視する自治体の気持ちはわかるが、こうしたごまかしによって失う住民や観光客の信頼は計り知れない。
「完全に地元の観光業者を守ることに力を入れており、これでは観光客の安全を守っていることにはなりません。また、情報発信も正直にすべきですが、出てきません。箱根町の火山防災協議会が専門家らを招いて会議しているといいますが、表に情報は出てきません。会を開いたなら、そこでどんな話が出て、どんな資料があったのか、記者会見して報告すべきです。他の火山では、例えば富士山などでは情報公開が取り決められています。リスク管理はいいのですが、情報発信はまずい」
今後も地震、地殻変動に注視が必要
【IWJブログ】「明らかなごまかしだ」――火山性地震が止まない箱根山 観光客離れを危惧する自治体が用いた「視覚的トリック」に火山学者が苦言 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/245186 … @iwakamiyasumi
まるで、安倍政権のようなやり方。この国は壊れ始めている。
https://twitter.com/55kurosuke/status/597505624151232512