【IWJブログ・特別寄稿】人工放射線による内部被曝から子どもを守る・後編(松井英介 岐阜環境医学研究所) 2015.3.9

記事公開日:2015.3.9 テキスト
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(松井英介 岐阜環境医学研究所)

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 昨年、メディアで大々的に取り上げられた漫画『美味しんぼ』における鼻血描写問題。同作品に実名で登場したのが、医師で、岐阜環境医学研究所所長の松井英介氏だ。『美味しんぼ』バッシングでの、政府の意図とは何か。そして、3.11から4年、これから被害が拡大すると考えられる内部被曝の問題を、私たちはどう考えたらよいか。松井氏に寄稿してもらった。

(IWJ編集部)

記事目次

からだの中のホットスポット

 38億年もの昔から自然界や私たちのからだの中にあった天然の放射性元素(核種)は、比較的均等に分布しています。これに対して、自然界になかった人工の放射性物質は、原爆投下や水爆実験、原子力発電の結果生み出されたものです。これら人工放射性物質は、さまざまな大きさや性質をもった微粒子になって自然生活環境に拡がり、私たちのからだの中に入ってきます。そしてからだの中で、不均等に分布するのです。

 ヨウ素131は甲状腺に、セシウム137は心臓に、ストロンチウム90は骨や歯にという具合に、からだの中に入ってきたとき、集まる臓器や組織も違うのです。高濃度沈着部位が体内のホットスポットになります。

電離=イオン化、分子の切断

 私たちのからだは、60兆個もの細胞からできています。卵子の精子の出会いのときはそれぞれ一個です。脳、神経、心臓、肝臓、腎臓、眼、耳、筋肉、骨、生殖器官などすべての臓器が、さまざまな働きをもった細胞からできています。これらの細胞たちが力をあわせて、私たちのからだの中をよい状態に保っているのです。

 細胞はおもにタンパク質でできていますが、その約70%(新生児では80%)を水が占めています。水がなければいのちは生まれませんでした。水は私たちのいのちの営みに不可欠必須なものです。従って私たちのからだを一定の温度に保ち、安定した状態をつくる上で、皮膚と粘膜はとても大切です。

 このいのちの源である細胞をつくっているのは分子です。

 その分子の、原子と原子を結びつけている電子を外す、つまり私たちのからだをつくっている分子を切断する力を、電離放射線は持っています。つまり、水やタンパク質の分子を切断して、水やタンパク質でないものにしてしまう力を持っているのです。

 ということは、水の分子が放射線によって切断されると、私たちのからだの細胞の中に毒ができるということなのです。この毒が、細胞核の中にあるDNA、核内DNAにキズをつけます。細胞内外の胎内環境をかく乱するのです。

 人間は治す力を持っていますが、こうした影響でからだにいろんな症状や病気が起きる、そしてとくに子どもはおとなより放射線に敏感で影響を受けるということがわかっています。胎児は放射線感受性が、成人に比べると極めて高いことを、学校で教えるべきです。

エピジェネティックス

 また、エピジェネティックスという、遺伝子の配列変化しないまま、遺伝子発現の性質が長期的あるいは恒久的に変化することによって、障害や病気を起こしていることがわかってきています。

 この分野で今活発に研究されているのが、胎内環境に関わるものです。そのひとつが「細胞分化」です。私たちの細胞60兆個の元はたった一個の細胞=受精卵。私たちは両親から、別々かつ平等に遺伝形質を受け継ぎ、約10ヶ月で脳眼鼻耳手足心肝などの細胞に分化するのです。環境要因によるエピジェネティクッスな変化は祖父母から孫に伝わるものもあります。

「健康ノート」の発刊

 私たちは、自らの体調と自然生活環境の汚染を記録し、その営みを将来にわたって継続するため、最近「健康ノート」を発刊しました。

 「低線量」放射線被曝の健康影響は、まだ不明な点が多いなどと言う研究者もいますが、そんなことはありません。「低線量」放射線、とくに内部被曝による健康障害に関する多くの調査研究結果がすでに集積されています。

 ウクライナの医師たちの努力の結果はまとめあげられ、2011年に「ウクライナ政府(緊急省)報告書」として公開されました。2009年に発表されたニューヨーク科学アカデミーの論文集にも、チェルノブイリ事故後の増加した健康障害の実例が多数紹介されています。増えたのは甲状腺がんだけではありません。心臓病や内分泌異常、先天障害などさまざまな非がん疾患が子どもをふくむ住民を苦しめています。

 また、通常運転中の原発から5キロメートル圏内に住む5歳以下の子どもたちに二倍以上白血病が多発しているという、ドイツで行われた疫学調査(KiKK研究)の結果も重要です。この調査のあとイギリス、フランス、スイスで行われた疫学調査結果も、KiKK研究の成果を補強するものです。

 今後日本で放射線による健康影響を調査して記録していく上で不可欠の条件は、まず、原発から生活環境に出た全ての人工放射性核種を調べ、それら各核種の放射線量をベクレルで表示すること。そして、それらデータと自覚症状を含む病状、そしてさまざまな検査結果との関係を記録し解析することが必要です。抜けた乳歯に含まれる90Srを調べることも、子どもの内部被曝を評価する上で不可欠です。

 また、年間100ミリシーベルト閾値に関しては、「全固形がんについて閾値は認められない」とした放射線影響研究所の2012年疫学調査結果報告「原爆被爆者の死亡率に関する研究第14報 1950─2003年:がんおよびがん以外の疾患の概要」にも注目すべきです。

健康を保つために

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「【IWJブログ・特別寄稿】人工放射線による内部被曝から子どもを守る・後編(松井英介 岐阜環境医学研究所)」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    【IWJブログ・特別寄稿】人工放射線による内部被曝から子どもを守る・後編(松井英介 岐阜環境医学研究所) http://iwj.co.jp/wj/open/archives/238037 … @iwakamiyasumi
    3.11から4年、これから被害が拡大すると考えられる内部被曝の問題を、私たちはどう考えたらよいか。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/574892404190261248

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