「儲かるから、テロとの闘いを続けたい人たちがいる」ジャーナリスト西谷文和氏が講演 ~「戦争のリアル、安倍政権の虚構」 2015.3.7

記事公開日:2015.4.7取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根)

※4月7日テキストを追加しました!

 「『イスラム国』の恐ろしさや残虐さを強調する、アメリカ側のイメージ戦略が功を奏している。その結果、『イスラム国』への空爆にも反対の声があまり上がらない。それは好戦派や武器商人にとっては、とても都合が良い」──。

 2015年3月7日、大阪府吹田市で、大阪YWCA平和・環境部委員会主催による、「ジャーナリスト西谷文和氏講演会『戦争のリアル、安倍政権の虚構』」が行われた。

 西谷氏は、講演の前半で「イスラム国」による邦人人質事件を検証し、そこからあぶり出される安倍首相と政府の不可解な対応に疑問を表明。また、この事件について、きちんと検証しないマスメディアの偏向報道を糾弾した。特に、人質の後藤健二氏については、「救う機会があったのに、救わなかった日本政府の対応は、絶対に検証しなければいけない」と強く訴えた。

 「私たちは、テロとの闘いを仕方なくしているのではなく、儲かるから、テロとの闘いを続けたい人たちがいることを、認識しないといけない」と指摘する西谷氏は、メディアは現状を伝えるだけで、なぜ、こうなったかを検証しないと苦言を呈し、「9.11でも、すぐにウサマ・ビン・ラディンを引っ張り出して、テロへの恐怖心を煽った。今回も日本人の不安を煽り、集団的自衛権や改憲につなげようと目論む動きがあるのではないか」と警鐘を鳴らした。

記事目次

■ハイライト

  • 講演 西谷文和氏(フリージャーナリスト)
  • 日時 2015年3月7日(土)14:00~16:00
  • 場所 大阪YWCA千里(大阪府吹田市)
  • 主催 大阪YWCA平和・環境部委員会(詳細

数々の疑問が残った邦人人質事件への政府の対応

 西谷氏が登壇し、まず、邦人人質事件について、「2015年1月20日、湯川遥菜氏と後藤健二氏が拘束された動画がアップされて驚き、すぐにトルコにいた知人と連絡を取った。その知人が仲介をし、『イスラム国』の幹部とスカイプで接触できた。その幹部は『ゴトウは殺したくない』と言っており、その時点では、後藤氏は条件次第で解放されるホステージ(人質)であり、救い出せる希望があった」と語り始めた。

 後藤氏は2014年10月に「イスラム国」に拘束され、11月末頃、後藤氏の妻に20億円の身代金を要求するメールが届いている。後藤氏の妻は外務省に相談するが、日本政府は「身代金は払わない」として動かなかったと、西谷氏は言う。

 2015年1月17日、安倍首相がエジプトで、「イスラム国」と闘う周辺各国に2億ドルを支援する、と言うや否や、湯川氏と後藤氏が捕われた映像がインターネット上に公開された。その時の「イスラム国」の要求は、身代金が2億ドル(約235億円)に跳ね上がっており、72時間のタイムリミットも設定されていた。しかし安倍首相は、その後、イスラエルの国旗の前で、「テロに屈しない」との声明を出す。

 西谷氏は、「貴重な72時間だったにもかかわらず、その間、日本政府は『イスラム国』にとってナンバー2の敵であるイギリスと、2プラス2(外務大臣・防衛大臣協議)を開催していた。そして、残念ながら湯川さんは殺された」と続けた。

 また、日本政府は「イスラム国」の敵国ヨルダンに対策本部を設けた。これに対し西谷氏らは、「イスラム国」との間で人質解放の経験もあるトルコに対策本部を設置するようにと、外務省に何度も訴えたという。

 「安倍首相とトルコのエルドアン大統領は、原発輸出などを通じてとても仲が良い。ひと言頼めば、協力してくれたはずだ」

後藤さんは救えたのに、救わなかったのではないか?

 2015年1月28日、「イスラム国」の要求は「29日までに、サジダ・リシャウィ死刑囚(2005年アンマン自爆テロの実行犯。当時ヨルダンで収監されるも2月4日に死刑執行)をトルコの国境まで連れて来い」というメッセージに変わった。

 西谷氏は、「その場所はトルコ・アクチャカレで、後藤さんは、近くのシリア・テルアビヤドにいた」と語り、このように続けた。

 「1月29日、ヨルダン政府は、後藤氏とリシャウィ死刑囚との交換を決断。すると、ヨルダン国内で、「イスラム国」に拘束されているヨルダン人パイロットも併せて釈放しろ、という大規模なデモが起こり、ヨルダン国王が自分の身の安全を恐れて、パイロット釈放も条件に加えてしまった。1月29日の日没で交渉が決裂し、2日後、後藤氏も残念ながら殺害されてしまった」

 後藤氏を救う機会があったのに、救わなかった日本政府の対応は、絶対に検証しなければいけない、と強く訴える西谷氏は、次のように5つの疑問点を列挙した。

 「1点目は、『イスラム国』からの身代金要求に、なぜ、政府は水面下で交渉しなかったのか。2点目は、邦人2人の拘束を知っていながら、なぜ、安倍首相は中東で『イスラム国』を挑発する演説を何度もしたのか。3点目、イスラエル訪問中に人質事件について声明を出した時、なぜ、背後にイスラエル国旗を掲げていたのか。4点目は、交渉期限まで72時間という切迫した中で、なぜ、イギリスとの2プラス2協議を行なったのか。5点目は、なぜ、対策本部をトルコではなくヨルダンに置いたのか」

 その上で西谷氏は、アメリカや安倍政権の中に、「身代金を払うな」と言った者がいるのではないか、との疑問を示し、「その結果、こんな恐ろしい『イスラム国』は空爆しても当然で、そのためには今の憲法9条は生ぬるい、という方向に、国民感情を仕向ける世論操作がある」と警告した。

シリア内戦は武器消費のための代理戦争

 シリア内戦について、西谷氏は、「アサド大統領のシリア政府軍には、ロシア、中国、イランが支援を行い、アメリカ、イギリス、フランス、サウジアラビア、カタールが反アサド側をバックアップする。そして、サウジとカタールが武器をアメリカから購入、(反アサドの)シリア自由軍に供給している。両軍とも、武器がどんどん入ってくるので、内戦が終わらない。国際社会がそれを止めようとはしないのは、武器が売れるからだ」と批判した。

 さらに、もうひとつ、戦争が終わらない理由として、西谷氏は、「ロシアは天然ガスをヨーロッパに輸出している。カタールとサウジも、天然ガスをヨーロッパに売りたい。しかし、シリアにパイプラインが通っていないのがネックだ。天然ガス価格の暴落を恐れるロシアは、(シリアで混乱が続く方が好都合なので)反政府勢力がアサドに抵抗するように仕向けているのではないか」という見方を示した。

 西谷氏は、日本もイラクも、アメリカに敗戦した国だが、その後の扱いがまったく違うとし、次のように述べた。

 「連合国側は、第二次大戦後、中国を筆頭に共産主義が台頭したことを危ぶみ、日本には天皇制を残して、安倍首相の祖父の岸信介など、大勢のA級戦犯を釈放し、戦前からの官僚たちがそのまま残った。そのあげく、日本の戦争責任もはっきりさせないまま、現在に至る。その体質は、福島原発事故での政府の対応を見ても明白だ」

地獄から逃げ延びるために、住民がすがった「イスラム国」

 しかし、イラクはその逆だと、西谷氏は言う。

(…会員ページにつづく)

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「「儲かるから、テロとの闘いを続けたい人たちがいる」ジャーナリスト西谷文和氏が講演 ~「戦争のリアル、安倍政権の虚構」」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    ジャーナリスト西谷文和氏講演会 ~戦争のリアル、安倍政権の虚構~(動画) http://iwj.co.jp/wj/open/archives/237561 … @iwakamiyasumi
    昔も今も、戦争は年寄りが命令して、若者が死ぬ。儲かるのは、銃やロケット弾を作るメーカーだけ。騙されて、ムードに流されてはいけない。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/577234324065374208

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