再稼働が迫る川内原発の使用前検査「トラブルもあるだろうから」「動かしながら慎重に」進める考え/桜島・阿蘇山の噴火活動に規制委・田中委員長「火山モニタ検討会を緊急に開く必要があるとは思っていない」 2015.1.14

記事公開日:2015.1.14取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

 2015年1月14日(水)14時30分より、東京・六本木の原子力規制庁で田中俊一・原子力規制委員会委員長による定例会見が行われた。再稼働が近づく川内原発は、まだ工事変更認可の審査、使用前検査が残っている。数年に渡り停止していたプラントを動かすため、使用前検査は「動かしながら相当慎重に」検査を行い、「トラブルもあるだろうから、一つ一つ潰しながら」検査を進めるとの考えを示した。

 IWJは、桜島、阿蘇山の噴火活動が激しくなっていることについて質問。田中委員長は、「火山予知連絡会ではないので、我々は、火山モニタ検討会を緊急に開く必要があるとは今は思ってません」と回答した。

■全編動画

  • 日時 2015年1月14日(水) 14:30~
  • 場所 原子力規制委員会(東京都港区)

オープンに情報発信することが安全レベル向上につながる

 1月13日、規制委員会は関西電力の八木誠社長と、安全文化向上を目指した事業者トップとの意見交換を行った。この意見交換会は、トップがどういう意識をもっているか、国民に向けてきちんと自らの言葉で発信し、覚悟を語ることも大事だという田中委員長の要望により、おおむね月に一回、一つの事業者トップと行い、順に1年をかけて全事業者と意見交換する予定だ。

 今回の意見交換会で委員長は、事業者の取組みや姿勢が十分に国民に見えていないという趣旨を指摘。事業者側がプレゼンテーションを行ったが、その内容が国民に十分見えていないのではないかという考えを示した。

 理由としては、情報の発信力が不足していることを挙げ、現在、審査会合などを全て公開で行っているが、それ以外にも、事業者自らの分かり易いいろいろな情報発信が必要だという。しかし、具体的に何をしたらいいかは、規制委員会が指示することではないと主張。

 委員長は、「きちっと発信する工夫をやるべき」と考えており、「国民にオープンにするということは、自分達自身も安全に対する取組み姿勢を、相当正していかないといけないということに繋がっていく」。それが、結果的には安全のレベルを上げることになると、期待を込めた。

審査体制強化のため、定員増加

 1月14日午前の閣議で、2015年度の政府予算案が決まった。規制庁は原発の運転期間延長の審査体制構築として、4人の増員を盛り込んでいる。審査体制を強化する考えだが、今後どのような体制にするのかと記者が質問した。

 現在審査途中のプラントは多くあり、今後も新しい審査申請が出てくる可能性もある。今後どういう体制にしていくか、「相当私自身も悩んでいます」と委員長は答えた。単に人数だけ増やすのではなく、審査できるレベルの人を揃える必要がある、そう簡単にできるものではないが、今後体制も含めて検討していく考えだという。

 今後、審査申請のプラントが増え、人手が足りなくなるかどうかはわからないが、申請はきちんと審査していくことになると答えた。

緊急時は5年待たずにキャスク移送せざるを得ないと考えている

 燃料の取扱いについて田中委員長は、原子炉を停止し、炉心燃料を取り出した後、通常は燃料プールで5年程度冷却してからキャスクに入れ、移送していると、これまでの会見で説明している。では、急な火山噴火など緊急事態が起き、5年も待てない時はどうするのか、IWJが質問した。

 「いざという場合には、それなりの工夫をしてやらざるを得なくなると思います」と委員長。工夫とは、できるだけ予測を行い、かなり前倒しで原子炉を止め、冷却時間をかせぐ、「そういう対応はとりたい」という。

 具体的にどうするのか、ということについては、「ご質問も仮定みたいな話ですから、今こうしますということは言えません」と回答を避けた。

 近年の桜島、阿蘇山の噴火活動が激しくなっていることに対しては、「火山予知連絡会ではないので、我々は、火山モニタ検討会を緊急に開く必要があるとは今は思ってません」と回答。

 通常のマグマ噴火や水蒸気爆発の噴火で、姶良カルデラの噴火のような予兆とは見ていないという。もし予兆であれば、緊急に会合も開かないといけないとが、今はそういうことではないと委員長は考えている。

島根原発視察の目的は現地規制事務所の訪問、意見交換

 1月15日から16日にかけて、田中委員長は中部電力島根原子力発電所3号機を視察する。この時期に同原発を視察するねらいは何か。

 これについて委員長は、各地方事務所の率直な意見を聞きたいと答えた。国会の会期中は地方視察が難しい。そこで今の時期に多くの場所を視察しようとしているという。

 島根3号機はまだ燃料を装荷していないABWRであり、内部が汚染されておらず詳細に見ることができる。そういったことから、「私はまだABWRを見たことがないので、勉強のためにも見せていただきたい」と答えた。これまでのBWRと異なる改良点を重点的に視察したいという考えを示した。

川内原発の使用前検査は「相当慎重に」行う必要がある

 再稼働が目前に迫っている川内原発だが、まだ工事認可変更申請の審査が残っている。事業者である九州電力は、当初昨年2014年中に提出すると言っていたが、随分遅れており未だ出ていない。その後には使用前検査がある。これは機器を稼働させる前に行う検査。しかし、数年に渡り止めていた設備なので、そう簡単にはいかない。

 委員長は、「動かしながら、相当慎重に」検査を行う必要があり、さらに「トラブルもあるだろうから、一つ一つ潰しながら」検査を進めることになるだろうとの考えを示している。

IWJの取材活動は、皆さまのご支援により直接支えられています。ぜひ会員にご登録ください。

新規会員登録 カンパでご支援

関連記事

「再稼働が迫る川内原発の使用前検査「トラブルもあるだろうから」「動かしながら慎重に」進める考え/桜島・阿蘇山の噴火活動に規制委・田中委員長「火山モニタ検討会を緊急に開く必要があるとは思っていない」」への1件のフィードバック

  1. 再稼動と臨界 より:

    「動かしながら慎重に」とはいいますが、川内原発はどのような慎重さで臨界状態にもっていくのが安全なのでしょうか。リスクをトラブルと言い換えるのもごまかしです。できないことはできないと、はっきり言うのが研究者ですが田中委員長はそうではないようです。

再稼動と臨界 にコメントする コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です