高浜原発の審査書案「承認」、安全性について「○か×かという言い方はしません」 ~原子力規制委員会 田中俊一委員長 定例会見 2014.12.17

記事公開日:2014.12.18取材地: テキスト動画
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 2014年12月17日(水)14時30分より、東京・六本木の原子力規制庁で田中俊一・原子力規制委員会委員長による定例会見が行われた。川内原発に続いて第二番目となる高浜原発の審査が終了し、審査書案が了承された。田中委員長は、「一つの節目だと思っている」と所感を述べた。

■全編動画

  • 日時 2014年12月17日(水) 14:30~
  • 場所 原子力規制委員会(東京都港区)

高浜原発審査書案を了承、「一つの節目」

 関西電力・高浜原子力発電所3、4号炉の審査書案が、12月17日午前に開催された定例の規制委員会でまとまり、了承された。田中俊一委員長は「兎にも角にもこうやって、初期の段階だけど審査が済んだ、(川内に続いて)第二番目として済んだということは、一つの節目だと思っている」と所感を述べた。

 同原子力発電所は2013年(平成25年)7月8日に、設置変更許可申請を受理、1年5カ月をかけて審査を終えた。かなり長期に時間がかかった理由について、委員長は、従来の安全対策で十分だという意識から抜けきれないところがあり、新しい規制基準に合わせることが必要だという理解、それへの具体的な対応で相当時間を費やしたと語った。

 加えて、関西電力は高浜原子力発電所だけではなく、近隣にある大飯原子力発電所も審査申請を出しており、その絡みがあったため時間がかかったんだろうと言う。大飯原子力発電所3、4号炉はまだ審査途中だ。

「安全なのか、安全でないのか」

 高浜原発3、4号炉の審査書案で、田中委員長が「新しい規制基準に適合しているということを認めた」と記者からの質問に答えたことに対し、さらに「それは安全なのか、安全でないのか」と記者がさらに質問。委員長は「そういう表現の仕方は私は基本的にとらないと言ってます」「安全でないとも言ってません。安全だとも言ってません」「○か×かという言い方はしません」などと答えた。

 安倍首相が会見で「規制委が再稼働に求められる安全性を確認した原発については再稼働を進める」と表現したことについても、政治家だから分かり易くという意味での表現だろうと言う。

 あくまで規制委員会は、稼働に際して必要な条件を満たしているかどうかについて審査をしたということ。そのことイコール事故ゼロではない。どんな科学技術でもそういう側面はあると説明。「少し曖昧かもしれないが、そこが非常に大事な考え方だ」との見解を示した。

1F、2F視察結果、新基準の正しさを再確信

 田中委員長は12月11日(木)から12日(金)にかけて、東京電力の福島第一原子力発電所と第二原子力発電所を視察した。3.11事故により福島第一原子力発電所が破局的な状態に陥ったのに対し、第二原子力発電所はかろうじて破局的な状態に至らなかったとして、「どこが違うのか、決定的にどういう所が違ったのかということ」を確認したいとこれまでの会見でも発言していた。

 今回の視察で、原因は単なるSBO(全電源喪失状態)だけの問題ではないとし、メタクラを含めて配線も、ヒートシンクの問題もあり、技術者の判断力や、さまざまな事由があったとして、「やはり今の我々が求めている規制基準というのが、決して誤っていないということを再確認した」と委員長はコメント。同時に事業者には、福島第一、第二原子力発電所の本当を学んでいただきたいと述べた。

 また、プラントの状況も少しづつ着実に進んでいると感想を述べ、労働環境の改善も進んではきているが、まだまだ課題が多く残っており、いくつか指摘をしてきたと報告した。

 その上で、汚染水タンクがすでに1000基以上設置されており、なおも増設し続けていることが今後の大きな課題だという懸念を示した。

審査書案公聴会

 規制委員会、規制庁は、審査書案に対する科学的・技術的意見募集を行うと同時に、公聴会は、立地自治体から要望があれば開催する考えだ。高浜原発の立地は福井県だが、京都府、滋賀県も立地ではないが非常に近いところにある。京都府、滋賀県で公聴会をしてほしいという意見が出てきても、立地自治体である福井県がうかがいをたててまとめることを規制庁は求めている。

 立地市町村は、直接自分達の生活に関係するという特別な観点もあることから、要求があれば公聴会を開くという。しかし、広くできるだけ多くの科学的・技術的意見を聞くという意味では、パブコメが一番適当だろうと委員長は判断している。

 規制庁の佐藤暁課長は、公聴会は意見募集を行っている期間に開催するという時間的な制約等もあり、事務局で多くの要望に個々に対応していくのには限度があるという。立地自治体が中心に自治体の要望のとりまとめを協力してほしいと考えており、立地自治体と周辺自治体が互いに調整して、まとめることを期待していると説明した。

集中立地問題

 高浜原発の3、4号炉について審査書案が承認されたが、1、2号炉は燃料を入れない前提になっている。もし1、2号炉にも燃料を入れて使用するのであれば、4つの原子炉が集中して稼働することになる。さらに近隣30kmに大飯原発、50kmに美浜原発などの発電所があり、このような集中立地の問題について記者が質問した。

 規制庁の山形浩史・重大事故対策調整官は、事故が起こった時の対応は、号機ごとに対応を完結させることができるかどうかで審査していると説明。各発電所の各号機ごとに、事故対処する専属チームと機材をそろえ、同時に事故が発生しても対応できるように、個々に審査でみていくというのだ。

 高浜原発の審査と大飯原発の審査は別々で、それぞれが単独で事故時に対処できるのであれば、同時に発災しても対処できるという考えだ。

 さらに、高浜原発は周囲が急峻な山に囲まれており、原発につながる道が県道1本しかない。土砂崩れなどで道が塞がれてしまうという問題もある。審査では、そういったことも含めて審査しているという。必要な器材も人的な確保も全て含めて、要求の中に入っているという。

 加えて、使用済燃料プールの余裕が少なくなってきており、燃料の運び出し先をどう確保するかも問題になる。規制庁の市村知也・安全規制管理官は、今回の審査では、使用済燃料の管理や重大事故を含め、使用済燃料プールにもそういう問題が起こらないか、起こった場合にしっかり対策をうてるかという点を確認しているという。運び出すにしても「場所の確保、事業者として自分で手当てして(原子炉を)運転していただくことだ」との考えを示した。

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