福島第一原発の中期的リスク低減目標マップ案を提示 ~2014年度 第47回原子力規制委員会 2014.12.24

記事公開日:2014.12.25取材地: テキスト動画
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 2014年12月24日(水)10時30分から、2014年度第47回原子力規制委員会が開催された。東京電力福島第一原子力発電所の廃止措置の進展について、中期的リスク低減目標マップが示され、時間軸、優先度を考慮した課題と、進捗をわかり易く示していく方針が決定した。

■全編動画

  • 日時 2014年12月24日(水) 10:30~
  • 場所 原子力規制庁(東京都港区)

議題 1 廃炉等に伴う放射性廃棄物の規制に関する検討の進め方について

 12月17日の第46回原子力規制委員会で一度議題に挙がったが、その時の説明で、検討会と規制委員会の役割分担が不明確で、規制庁の担当者があいまいであることなど、更田豊志委員から「保安院の意見聴取会と同じだ」と拒否され、出直しで議題に挙げられたもの。

 「廃炉等に伴う」放射性廃棄物に限定し、新設する検討チームは骨子をまとめること、規則を制定するのは委員会だということなどが明記された。

議題 2 平成 26 年度原子力総合防災訓練の実施結果について

 11月2日、3日に行われた、原子力総合防災訓練の実施結果について、内閣府原子力防災担当から概要報告を受けるもの。反省点として、TV会議回線の不具合が発生したこと、悪天候により退避手段を変更したこと、医療機関等の夜間対応体制の系統が必要といったことが挙げられた。TV会議回線の不具合は、安倍首相が緊急事態宣言を行うときに、マイクのスイッチが入っておらず、遠隔地には映像のみが伝送されたという。それ以外の不具合はなかった。

 更田豊志委員は、避難にどれぐらいの時間がかかったかという「時間に関する情報」が重要だとコメント。中村佳代子委員は、「訓練ではうまくできなかったところを次に活かすのが大事だ」とコメント。

 石渡明委員は、複数の退避手段を用意するのは良いが、今回、冬の能登半島ということから、海が荒れて船が出せなくなるのは想定できるため、退避手段の設定など、現実的な計画である必要性に言及。

 田中俊一委員長は、「時間のファクターが重要」「住民が求めている情報は何か」を考えてほしいとコメント。また、感想として、発電所の中、サイト内作業員の緊急時被曝線量は規制委で議論しているとする一方、サイト外、バス運転手など避難支援者の緊急時被曝線量については、内閣府防災担当と協力して進めたいと述べた。

議題 3 東京電力福島第一原子力発電所における多核種除去設備処理水の移送配管からの漏えいについて

 12月17日に東京電力福島第一原子力発電所で発生した、ALPS(多核種除去設備)処理水の漏洩事故について、東京電力から報告を受け、委員会に報告するもの。

 原因は、東京電力が作業手順書を作成するときに、図面を読み間違えて誤った手順書を作成してしまったこと。さらに、作業前に現場確認を行っていなかった。漏洩した処理水、汚染された土壌は回収済みだと報告を受けている。

 ALPS処理水および、今回漏洩した箇所の核種分析結果もデータとして報告されている。

 更田豊志委員は核種分析結果を見て、ALPS処理水より漏洩水のほうが濃度が高い。明らかに漏洩した水が流れ込んだトレンチのほうが汚れているとコメントした。

 また、前に東京電力が示していたALPS処理水のセシウム137濃度はND(0.28Bq/L以下)なのに、今回いざ漏れてみたら0.45Ba/Lと少し高くなっていると指摘。「NDでもある範囲をもっていることを示すものだ」として、「(データが)やや不誠実」、「情報の示し方で東京電力を指導してほしい」と不快感を表した。

 石渡明委員は、漏洩箇所の配管は新設なのかと疑問点を示し、手順書が間違っていたから弁を開けたのであれば、これまでにも弁を開けて漏洩していたのではないかと疑念を投げかけた。

 田中俊一委員長は、「今回の漏洩は非常に教訓的だ」とコメント。ALPS処理水は排出するのが原則だが、トリチウムについては取り除けない。しかし、どうにかしなければ廃止措置が進まないことから、もう一度しっかり議論したいとコメントした。

議題 4 東京電力福島第一原子力発電所の中期的リスク低減目標マップ(仮称)について

 東京電力福島第一原子力発電所の廃止措置が進められているが、目の前の対策に追われ、何が本当に優先することなのかが分かりにくくなっていることから、整理したいという委員会の指摘を受け、課題を整理したもの。

 まだたたき台であり、特定原子力施設監視・評価検討会などをはじめ、事業者・関係者とも議論してまとめていきたいと金城慎司・事故対策室長は説明した。

 更田委員は、福島第一原発は状況が刻々と変化しているので、定量的な評価は無謀、一方で優先順位を工学的に判断しなければならないとし、時間軸だけでなく、優先度や実現性の難易度も粗々に示す必要があるとコメント。「人と環境を守る」の”人”と”環境”を守ることが一致しないものもあるため、今後も検討会などで議論を続けていくと話した。

 中村委員は、ここで示されたイメージをどういう形でビジュアライズしてわかりやすい形で示せるかが重要だと述べ、汚染水問題については、タンクの数など見えるように等とコメントした。誰にとってもわかり易く、見やすく、不安を解消できるか、といった工夫が必要だと述べた。

 また、田中知委員、中村委員は、目標マップの項目の”リスク重み付け”をどのように載せるかについてコメントした。

 石渡委員は、時間軸を載せて欲しいということと、2011年津波の記載は前倒ししてほしいと意見。

 田中委員長は、4号機使用済燃料取り出しが終わり、2号機トレンチの高濃度汚染水という大きなリスクは見通しが立ってきたとする一方、3号燃料取り出しなど、いろいろな所で整合性をもって進まないといけないとコメント。高線量箇所の除染と作業被曝の関係などを考慮するよう意見した。

 更田委員は、監視評価検討会で重視してきたことをして「2号機、3号機海側配管トレンチ」「RO濃縮水のタンク滞留量削減」「4号機、3号機SFP燃料取り出し」「地震津波対策」「伐採木の焼却・減容」といった5点を挙げた。

 田中知委員は、タンクの増加は大きなリスクで、「トリチウムを含んだ水をどうするか、真剣に考えていかないといけない」と言い、「海洋希釈も一つの方法」とコメント。タンクすなわち汚染水の増加防止と同時に削減も考えていかなければならないと述べた。

 さらに、冷却ラインを少なくすることも重要で、炉内調査では、どこの濃度が下がらないか、どこに高濃度があるのかを探ることが必要だとコメントした。

 田中委員長は、事故から4年近く経つが、まだ大小のリスクがあることを、働く方や住民の方に理解していただくことが大事であるとし、理解なければすぐに行き詰ってしまうことから、廃止措置にはそういう方々の理解が必要だと述べた。また、全体像をできるだけ丁寧に説明できる形を作っていくことが、より安全を確保することに大事だと述べ、監視評価検討会でも十分に議論してほしいとし、第一義的に廃止措置を進めるのは事業者だが、規制委も深く関与して進めるつもりだとまとめた。加えて、今後も一年に一回程度は進展を報告してほしいと述べた。

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