琉球新報報道部長が明かす「守られた沖縄の尊厳」――沖縄県知事選の舞台裏と衆院選での安倍政権の目論見 2014.11.29

記事公開日:2014.12.4取材地: テキスト動画
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(IWJ・細井正治)

 歴史的な「保革共闘」が実現し、辺野古新基地建設にはっきりと「NO」の意思を突きつけた、沖縄県知事選。なぜ、このような結果が生まれたのか。11月29日(土) 14時から、法政大学で「第一回『沖縄の地鳴りを聞く』――県知事選で何が起きたか?」が開かれ、琉球新報の編集局次長兼報道部長の松元剛氏が、今回の県知事選をジャーナリストの立場から分析した。

■ハイライト

  • 宮本憲一氏(普天間・辺野古問題を考える会代表、大阪市大・滋賀大学名誉教授)
  • 講演 松元剛氏(琉球新報)
  • 日時 2014年11月29日(土)14:00~
  • 場所 法政大学市ヶ谷キャンパス(東京都千代田区)
  • 主催 普天間・辺野古問題を考える会

「守られた沖縄の尊厳―沖縄県知事選、翁長氏圧勝の深層」

松元剛氏(以下、松元・敬称略)「琉球新報に入社して、26年になります。その間、計9年ほど基地問題を担当してきました。本日、『守られた沖縄の尊厳―沖縄県知事選、翁長氏圧勝の深層』と題し、少しさかのぼって話していきたいと思います。

 民主党に政権交代し、『米軍基地の国外、県外移転』を掲げた民主党の鳩山さんが首相になったが、それを果たせずに引責辞任に追い込まれたことは誰もがご存知でしょう。しかし、翌11年の『5点セット』も重要です。

 (1)鳩山首相引責辞任から8ヶ月の2011年2月、共同通信と沖縄タイムス、琉球新報の3社記者が各5回で追った特集の初弾インタビューで鳩山氏が『抑止力は方便』と発言。あくまで米軍基地の県外国外をめざしていたが、官僚、政権内にも支える者なく期限が切れ、『抑止力』は後付けの理由だったと懺悔した。

 (2)翌月3月、米国のケビン・メア氏が『沖縄はごまかしとゆすりの名人』『基地に反対する素振りをしてカネをむしり取っていく、ゴーヤーも作れない、一番の産地なのに宮崎に負けている』などと、まったく事実と違う暴言で、沖縄の全議会が抗議。しかし直後、東日本大震災でうやむやになってしまった。

 (3)5月、朝日新聞がウィキリークス経由の公電を暴露し、国外移設をめざす民主党政権の発足直後から、官僚らが裏で妨害していたことが明らかになった。

 (4)11月28日、田中聡沖縄防衛局長が、報道陣との非公式懇談会で『(女性を)犯す前に(犯すと)言うか』と発言。辺野古の環境影響評価(アセスメント)について、日米外交のトップ間では合意していたが、実務を担う防衛省が県への年内提出を明言しない理由を問われての回答だった。

 あくまでオフレコ懇談だったが、社内一温厚な記者が『これを伝えなくていいのか』と訴え出たので報道本部長らに報告、翌日の朝刊ですっぱ抜いた。一応、田中氏側のコメントをとらせたが『発言の有無は否定せざるを得ない』とトボケ通した。

 もしすっぱ抜くなら『出入禁止にするかもしれませんよ』などと脅され、『孤立無援の独り旅』も覚悟。しかし、他社も次々とホームページなどにアップし始め、午前中には更迭必至の情勢に。当時は『県外移設』派だった仲井真知事も含め、沖縄中が抗議した。

 沖縄が自ら声を上げたら、日本の総理以下を辞任に追い込めた。その裏で妨害していた日米高官たちが暴かれた。その上で、(5)環境アセス評価書が、12月28日の未明に県庁守衛室へ搬入強行された。これらの事件への憤りが、今年の県知事選の結果につながった。

 翌2012年は、オスプレイが強行配備されました。県知事以下、間接民主制で選ばれた県民の代表がすべて反対し、直接民意表明である集会にも9.6万人が参加した。それでも日米政府は無視しました。それで『沖縄のことは沖縄で決めねば』と、保守派までが『差別』『独立』を口にし始めました。

 翌2013年、安倍政権はサンフランシスコ条約などの発効61周年である4月28日を『主権回復の日』として盛大に祝い、大集会を開催しました。しかし、沖縄にとっては『切り捨てられた』『屈辱の日』であり、抗議の県民大会も開催されました。

 12月25日、仲井真知事が首相官邸を訪問し、2021年度まで毎年3000億円の沖縄振興を約束され、『有史以来の予算だ。(実際には、反対していた太田県政時代4600億円だったが)私は安倍政権の応援団だ。よい正月を迎えられる』といって『転んだ』。

 そして2014年、辺野古工事をついに8月、強行しました。直後の県民世論は『安倍政権支持19%不支持81%』。ほぼ一年、ずっと7割は辺野古反対で、仲井真知事は2月頃から引退、副知事らへの禅譲もチラつかせていましたが、後継者を絞らず、三選に意欲を見せました。

 仲井真県政は経済財政面で、観光産業、失業率も改善しました。自由度の高い『一括交付金』を獲得するなど実績をあげており、翁長氏も経済政策は同様だし、それならば好調の『流れを変えるな』の声も強かったんです。

 しかし、です。仲井真選挙本部は那覇市に置かれ、何度も勝ち続けた大きな事務所ですが、開いても人が集まらない、街宣車5、6台あっても運転手がいない。地元、翁長氏と自民党を除名された支持市議13名が運動中枢、実務を担ってきていたが、ゴッソリ抜け、移ったためです」

安倍政権は衆院選で沖縄での敗北をリセットしたい

松元「そこで、ネットウヨク系、在特会系の人々が入り込み、那覇市役所や琉球新報、沖縄タイムスの前で『中国に沖縄を売り渡す●●』などとヘイトスピーチを繰り返しました。しかし、仲井真氏の学友支援者が『仲井真の差し金と思われ票が減る』と心配するほどひどかった。

 仲井真氏が社長だった沖縄電力をはじめ、支援してきた経済界は有力6社でも集票が最大で6000という『金秀』、『かりゆし』3000の両グループが、翁長氏擁立の旗振り役となったために割れてしまい、締め付けがきかないまま、最終的には他も勝ち馬に乗り、雪崩を打ったんです。

 仲井真側は終盤『普天間飛行場の危険除去やります』と本人の声でのオートコールを入れたり、格闘技団体の大会や、若者たちが踊るクラブで22時、23時に挨拶に回ったりするなど、死に物狂いで打てる手は全て尽くした選挙でした。が、世論調査は前段から翁長過半数のまま。

 そして、結果、他の3候補の票が束になっても敵わない大差がつきました。『新基地建設』の単一イシューでの反対とともに、琉球政府68年の『主席公選』に匹敵する『沖縄のことは沖縄が決める』という意志が明確に示され、その意味でも安倍首相は第二の敗者となりました。

 安倍政権は『消費税増税先送り解散、アベノミクス総選挙』というが、実際は沖縄県知事選などでの惨敗ダメージを覆い隠し、リセットする狙いがあります。

 基地は危険で嫌だが、『なければ沖縄経済がもたない』という依存神話は、沖縄では完全に崩壊しました。逆に、発展を阻害している実績も多い。また、『オスプレイは尖閣防衛に役立つ』という嘘も通用しません。図体が大きく、護衛ヘリが必要となるし、岩礁の尖閣には着陸できません」

本土の力も大きかった沖縄県知事選

※質疑応答

会場から質問「数字ではもっと大差でもよかったのに、いまだに仲井真票の方が上回っている地区も結構ある。どういう人たちなのか?」

松元「特に島嶼部など、本土返還前から革新と対立してきた保守の岩盤で、逆にいうと仲井真さんはそれ以外とれなかったということです。

 終盤の死に物狂いさで、もっと詰めていたかと予想していましたが、翁長さんはこれ以上ない勝ち方をしたと思います。各社世論調査でも過半が基地問題こそ最大の争点。最大の中間・無党派をどうとっていくかが、今後の首長選挙でも重要になってくると思います」

会場から質問「今回、自民党から共産党まで保革右左が結集した件について教えてください」

松元「那覇市議でも、『翁長市長を知事に』という機運はあり、共産党の代々木本部も独自候補を立てず『辺野古移設反対の一点共闘』の動きが3月頃からありました。翁長氏は腹8分どころか、6分で自己主張は抑え、最初は不協和音もあったようです。

 しかし、各党のそれぞれのノウハウがうまく共鳴し合ったんだろうと思います。原発と同様、譲れない地域共通の課題があるときは結束できるんです。

 日本本土でも、大半は沖縄に基地集中のおかしさは知っている、しかし痛みを自分たちの問題としてとらえられず、動こうとはしない。少しでも周囲を巻き込んで、内閣支持率や議席を減らすとかしかないのかな、と思います」

会場から質問「嬉しくて、沖縄の人に電話したら『ありがとう。今回は本土の人たちの力も大きかったよ』と言われました」

松元氏「全国から辺野古を見に来る若者が増えています。また翁長氏へのカンパも本土から相当あったそうです。

 あと、沖縄が従来足りなかったネットですが、菅原文太さんの『仲井真さん、弾はまだ一発残っとるがよ』もYouTubeにあげられ、本土の人が多数みてくれていた。そういう意味で、これまであまり手を付けてこなかったネット宣伝とかで沖縄の空気が共有されてきているのだと思います」

沖縄紙「『県民をマインドコントロールしている』などと思い上がっていたなら潰れている」

(…会員ページにつづく)

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