「現行憲法はGHQによる押しつけ」に反証 ~映画『日本の青空』上映会で中里見博・徳島大学准教授が人権条項の「先進性」をアピール 2014.11.22

記事公開日:2014.12.24取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(IWJテキストスタッフ・富田)

※ 12月24日テキスト追加しました!

 「日本はGHQの介入が始まる前に、2種類の憲法草案を自主的に作っていた。ひとつは戦前と変わらない保守的なもの。もうひとつは先進的なもの。GHQは先進的な方を高く評価し、現行憲法の下敷きにした。決して、アメリカに押し付けられたわけではない」──。

 京都96条の会が定期開催する「憲法サロン」の第6回目が、2014年11月22日、京都市上京区の同志社大学烏丸キャンパスで開催された。日本国憲法(現行憲法)の誕生をテーマとした映画『日本の青空』(2007年・大澤豊監督)を上映したのち、徳島大学准教授の中里見博(なかさとみ・ひろし)氏が解説を行った。

 この映画は、敗戦後、GHQの憲法草案制定に大きな影響を与えた「憲法草案要綱」を手がけた「憲法研究会」の中心メンバーだった憲法学者、鈴木安蔵を主人公にしたノンフィクション基調の作品。今の日本で、改憲派が口にする「現行憲法は、GHQから押し付けられたもの」という主張が、一面的に過ぎることを示す内容である。

 上映後に登壇した中里見氏は、改めて「押しつけ憲法説」を否定する議論を展開した。また、この映画は鈴木安蔵の英雄的な部分だけを描いているが、実際の鈴木には「暗い側面」もあったとしながらも、「だからといって、彼の功績が否定されることにはならない」と強調した。

 さらに、この映画からは「男女平等」のメッセージも感じられる、と語る中里見氏。それを象徴するシーンは事実に基づくものなのか、同作品の脚本を書いた池田太郎氏に直接インタビューを行った際のエピソードも披露した。

■ハイライト

2分〜 中里見氏解説/34分〜 質疑応答/39分〜 京都96条の会案内
  • (※映画『日本の青空』上映と上映後の参加者の感想は録画に含まれません)
  • 解説 中里見博(なかさとみ・ひろし)氏(徳島大学総合科学部准教授、憲法・ジェンダー法)
  • 日時 2014年11月22日(土)17:00頃~18:00
  • 場所 同志社大学烏丸キャンパス志高館(京都市上京区)
  • 主催 京都96条の会詳細、PDF)
  • 映画公式ページ 『日本の青空』(2007年、インディーズ)

現行憲法の「先進性」は世界でも一頭地を抜く

 「この映画は、自民党の議員が『改憲』を訴える際に、その理由に挙げる『現行憲法は米国による押しつけだから、日本人の手で、国民の意思が反映された自主憲法の制定が必要』への明快な反論になっている」

 中里見氏は、スピーチの冒頭でこのように指摘。小泉純一郎政権の誕生を機に高まりをみせた自民党の改憲気運は、安倍晋三政権の誕生でピークに達した感があるとし、「そこへの危機感の表れとして、2007年、この映画が公開される運びになったのだと思う」と述べた。

 自民党が改憲にこだわる理由に「現行憲法は時代遅れ」という点もある、と続けた中里見氏は、「自民党は『憲法9条が今の世界情勢に見合わなくなった』と言いたいのだろう」とした上で、2012年の憲法記念日(5月3日)に朝日新聞に載った「日本国憲法 今も最先端」というタイトルの論文を紹介した。

 この論文は、9条の世界情勢への適合度合いを調べるものではないが、米国の法学者が188ヵ国の憲法を「人権条項」の観点から分析した結果、日本の現行憲法には十分な先進性があることが判明した、と強調している。

 中里見氏は、「論文は、各国の憲法で『信教の自由』『報道・表現の自由』『団結権』『教育の権利』など、人権の上位19項目をすべて含んでいるのは、日本の憲法とカナダのそれぐらいしかない、と指摘している」と述べて、こう口調を強めた。「70年前に、こんなにも先進性に富んだ憲法が作られたこと自体が驚異だ」。

「いいとこ取り」のどこが悪い?

 中里見氏は、その理由について、作家の井上ひさし氏による「日本国憲法は世界史からの贈り物であり、しかも最高の傑作だと信じる」という表現を紹介しつつ、「その当時、世界の憲法から『いいとこ取り』をしたからこそ、先進的なものになった面が多分にある」と話した。

 GHQ憲法草案制定会議のメンバーとして、日本国憲法の起草で人権条項作成に関与したベアテ・シロタ・ゴードン氏は、7ヵ国語が操れたため、都内の図書館に出かけて各国の憲法について書かれた資料を借り出したとされている。

 中里見氏は「外国人が関わったからこそ、現行憲法は、あれだけ先進的になったように思える」とも語り、「現行憲法の『いいとこ取り』の部分に対しては、改憲派から『つぎはぎ憲法』『無国籍憲法』といった批判の声が届いているが、私は『世界史からの贈り物』という表現が好きだ」と言い重ねた。

GHQの介入前にあった自発的草案作成の動き

 「現行憲法はGHQによる押しつけ」という反論に対して中里見氏は、「日本はGHQの介入が始まる前の段階で、2種類の憲法草案を自主的に作っており、この点に着目することがまず重要」と訴える。

 その2種類の草案のうち、保守色の強い方が毎日新聞によってスクープされ、それを読んだGHQが、大日本帝国憲法(明治憲法)と変わらない内容に「こんな草案ではダメだ」と憤り、憲法作りに介入することを決めたのだという。

 そして、もうひとつの先進色の強い方が、鈴木安蔵を中心メンバーとする憲法研究会がまとめた「憲法草案要綱」だった。

 中里見氏は、「主権は国民にあることと、『象徴』という言葉は出てこないが、明らかに象徴天皇を表した条文が盛り込まれている。GHQは、象徴天皇のアイデアをここから採ったとする見方が有力だ」と話した。

 GHQはこの草案を高く評価し、現行憲法の草案作りの下敷きにした、と中里見氏。『憲法「押し付け」論の幻』(2006年、小西豊治著・講談社)では、「鈴木が明治自由民権期の私擬憲法(憲法の私案)の研究者だったため、明治の進歩的日本人の思想と、その影響元である西欧革命期の思想が草案に流れ込んでいる」と論じられていることを紹介した。

鈴木安蔵が「無名」である理由とは

(…会員ページにつづく)

アーカイブの全編は、下記会員ページまたは単品購入よりご覧になれます。

一般・サポート 新規会員登録単品購入 330円 (会員以外)

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です