甲状腺の手術は54人に実施 「甲状腺全摘が5人、片葉切除が49人」 〜第4回 甲状腺検査評価部会 2014.11.11

記事公開日:2014.11.14取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根かんじ)

※11月14日、テキストを追加しました!

 「小児甲状腺がんの悪性ないし悪性疑いの人は104人(手術58人:良性結節1人、乳頭がん55人、低分化がん2人)となり、男女別では男性36人、女性68人であった」──。

 福島第一原発事故を受け、福島県で実施している「県民健康調査」の検討委員会 第4回「甲状腺検査評価部会」が、2014年11月11日、福島市の杉妻会館にて行われ、本格調査の実施状況、甲状腺がん発症率などデータの精確さへの疑問、甲状腺がんによる死亡率の算定方法、被曝の影響や過剰診断の疑いなどについて、活発な議論が繰り広げられた。

 津金昌一郎氏(国立がん研究センターがん予防・検診研究センター長)は、「104人の悪性、もしくは悪性の疑いが見つかったのは、2001年から2010年のがん罹患率(全国推計値)の61倍にあたる」と指摘。18歳以下の甲状腺がん発症には過剰発生が疑われること、また、死亡率は40歳までで1人、と推定した。

 西美和氏(広島赤十字・原爆病院前副院長兼小児科部長)は、「現状のデータ、調査方法では、被曝による発症だけを抽出できない」として、県民健康調査における甲状腺検査の問題点をあげた。また、「部会員に、臨床医が2名しかいない。これで過剰診断・診療を決めるには問題がある」と疑問を呈した。

■全編動画 1/8

■全編動画 2/8 ※途中、見苦しいところがあります。ご了承下さい。

  • 【議事 1】甲状腺検査について 【議事 2】その他

平成23年度から25年度、悪性ないし悪性疑い104人

 冒頭、福島県の事務方から、9月16日から27日に「甲状腺検査」を受診した186名に一次検査結果を発送した中で、173名に誤った検査結果を通知していたことが報告された。「結果発送表」を作成する際、誤ってデータの並べ替えをしたことで、受付番号と検査データが一致しなくなったのが原因で、対象者全員を県立医大関係者が直接訪問し、謝罪文と正しい検査結果を届けるという。

 続いて、配布資料の要旨説明があった。平成23年度から25年度の実施対象市町村での甲状腺の細胞診結果は、対象者数(0~18歳)合計36万7707人、受診者数29万6026人(80.5%、9195人が県外受診)で、A1判定(陰性)15万2389人(51.5%)、A2判定(5.0ミリ以下の結節、20.0ミリ以下ののう胞)14万1063人(47.7%)。二次検査対象者となる、B判定2236人(0.8%)、C判定は1人であった。

 結果確定数は29万5689人で、結節5.1ミリ以上が2218人(0.8%)、5.0ミリ以下が1670人(0.6%)、のう胞は、20. 1ミリ以上が12人、20. 0ミリ以下が14万1387人(47.8%)。悪性ないし悪性疑い104人(手術58人:良性結節1人、乳頭がん55人、低分化がん2人)で、男女別では男性36人、女性68人。会津地方に住む対象者は、中通りや浜通り、避難区域より悪性率が低いことも報告された。

 また、今年から始まった本格検査では、原発事故の次年度に生まれた(平成23年4月2日から平成24年4月1日生まれ)福島県民まで対象を拡大して実施している。一次検査は平成26年4月2日から始まり、25市町村の約22万人を対象として、6月30日現在、2万8775 人(13.5%)が検査を終了。うち6465人に検査結果を発送済みで、A判定が6419人(99.3%)、B判定が46人(0.7%)、C判定は0人であった。

 そして、6月から開始した二次検査は、B判定の46人中22人が受診し、そのうち検査結果が確定した3人がA2範囲内であることが明らかになった。

 質疑応答では、「104人の悪性患者の血液検査などからは、バセドー病、橋本病などもうかがえるので、区別するべき」との意見が出た。また、先行検査と本格検査の差別化についての説明を求められたが、福島医大側は「まだ、実施数が少ないため、今後の課題だ」と答えるに留まった。

104人のうち、すでに58人が外科手術

 次に、「手術の適応症例について」の説明があった。2014年6月30日までの二次検査者1848名から、悪性ないし悪性疑いの104人のうち58人が外科手術を実施しており(3人は他施設で手術。また、1人は良性結節と判明)、福島医大甲状腺内分泌外科で実施した54人について、52人が乳頭がん、2人が低分化がんであったという。術式は甲状腺全摘が5人(9%)、片葉切除が49人(91%)で、できる限り傷跡が小さくなるよう3センチの小切開創にて行い、術後合併症は認めていないとした。

 西美和氏は「遠隔転移2例が見つかったことは、過剰診断と騒がれる中で不幸中の幸いだった。将来、肺結核に誤診される可能性があった」とコメントした。また、福島医大の鈴木眞一教授は「チェルノブイリ原発事故での甲状腺がん発症データと、リンパ節、遠隔転移率は類似する」と話した。

福島の甲状腺検査は人間ドックと同じ?

 次に西氏が、「現時点での福島第一原発事故の甲状腺への影響について」のブリーフィングをした。「小児甲状腺がん発生率は、小児100万人あたり年間1人から2人と言われるが、小児でも発生率に幅があり、10代後半に多い」と述べた。国立がん研究センターがん対策情報センターによる甲状腺がん発生率は、「15歳から19歳では年に100万人あたり6人」で、「20歳から24歳では年に100万人あたり16人」だという。

 西氏は「福島県民健康調査で、何ら異常を訴えない子どもたちから、がんが発見されたことには、スクリーニング効果、検査機器や技術の向上も無視できない。チェルノブイリでの甲状腺がんの潜伏期は平均9.4年。また、5歳以下に多いのだが、福島では0人だ」と述べて、被曝と甲状腺がんの関連性に疑問を呈した。

 さらに、「被曝の影響は否定はしないが、チェルノブイリと比べ、被曝線量がはるかに少ない」という西氏は、4365人に検査が実施されている3県調査(弘前市、甲府市、長崎市)は十分な検査数とはいえず、福島県民への甲状腺検査は人間ドックと同様に「過剰診断」となる、との見解を語った。

 ただし、現状のデータや調査方法では、被曝による発症だけを抽出できない、と西氏は指摘。「甲状腺検査評価部会の部会員に、臨床医が2名だけだ。これで過剰診断・診療を決めるには問題がある」と、福島県民健康調査の甲状腺検査の問題点に言及した。

18歳以下の甲状腺がん発症、過去10年の罹患率の61倍

 津金氏は第2回の部会において、「甲状腺がん診断頻度の評価は不適格」とコメントしている。そのため、国立がん研究センターがん対策情報センターがん統計研究部に試算を依頼したといい、その結果を説明した。

 2001年から2010年のがん罹患率(全国推計値)に基づくと、福島県において18歳までに臨床診断される甲状腺がんは2.1人(男性0.5、女性1.6)。今回、104人の悪性もしくは悪性の疑いが見つかったのは、その61倍にあたり、18歳以下の甲状腺がん発症には、過剰発生が疑われること。また、死亡率は40歳までで1人、と推定した。

 渋谷健司氏(東京大学大学院教授)は、「世界で初めて、無症状の人たちに甲状腺がん検査をした今回の結果を、どうとらえるかが課題だ。甲状腺がんリンパ節転移での死亡率は、過小評価ではないか。過剰診断と過剰診療は、意味が違う」などとコメントした。

過剰診断をめぐり意見が分かれる部会員

 春日文子氏(国立医薬品食品衛生研究所部長)は、疫学的な見地から、岡山大学の津田敏秀教授をこの部会に招くことを福島県に要望していたと言い、「それは、どうなっているのか?」と事務方に尋ねた。津田教授は疫学、環境医学の専門家で、福島での低線量被曝と甲状腺がんの発症に警鐘を鳴らしている。県事務局担当者は「本件は直接聞いていなかった。今後、検討する」と曖昧に返答した。

 再び議論は過剰診断に戻り、西氏は「この場で結論を出すのは性急だ」と主張。渋谷氏は「本調査は、早期発見などで子どもの健康を守ること。もうひとつは、被曝によるリスクの軽減だ。しかし、現状では(過剰診断などによる)不利益の方が多いのではないか。放射線の影響も科学的に検証する必要がある」と述べた。

 また、先行調査と本格調査のシステムデザインの妥当性に議論が及び、約30万人の県民のサンプルデータ数では推定できない、と主張する意見も出た。県事務局担当者は調査の概要について、「チェルノブイリを参考にした。また、低線量被曝による追跡調査を含み、相応なデザインだ」と答えた。

「たくさん検査したから、たくさん見つかった」

 続いて記者会見に移った。朝日新聞記者が「関連学会にも意見を求めるべきではないか、との意見があったが」と尋ねた。それに対して、清水座長は「各学会に働きかけることは必要で、検討中だ」と応じた。

 「リンパ節転移もしているような甲状腺がんが、30代まで自覚症状もなくいられるのか」と、アワープラネットTVの白石草氏が質問すると、「症例がない。現状では答えられない。どうなるかはケースバイケース」との回答があった。

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