経済的利益優先の名のもとに、原発産業が推進されてきた鹿児島県薩摩川内市。地場産業や観光業が育たず、自前の町おこしという発想が生まれない地域に、原発再稼働の足音が響く。
川内市議会と市長による、再稼働同意が表明された日から一夜明けた10月29日(水)、北薩ブロック平和センターにて、川内原発建設反対連絡協議会会長・鳥原良子氏へのインタビューを行った。
教員時代から食品添加物や遺伝子組み換え技術など、生命に関わる食品問題に取り組んできたという鳥原氏は、現在、薩摩川内市民として、息の長い反原発運動の中心にいる。
火山リスク、避難問題など、主要な論点が議論され尽くさないままに再稼働の現実的な道がひらかれつつある状況を前に、これまでの活動を振り返りつつ、薩摩川内市議会、市長の再稼働同意の問題点について聞いた。
▲鳥原良子さん
- 日時 2014年10月29日(水)
- 場所 北薩ブロック平和センター(鹿児島県薩摩川内市)
原発依存の薩摩川内市と、そこに落ちる九州電力の影
――薩摩川内市は、原発産業によって財政再建団体の状態から経済的に復興してきた、という背景がありますが、他の産業やこれまで市が進めてきた施策について、どのようなものがあるのでしょうか
鳥原良子氏(以下、鳥原・敬称略)「『姶良市が太陽であれば、川内市は月』という人がいます。姶良は空港に近く、原発なしでも鹿児島市民のベッドタウンになり、栄えています。一方で、川内市は『原発』の暗いイメージがついてしまい、観光客を呼びこむ施策がありません。
川内市はこれまで、原発頼みの政策を掲げてきました。他市であれば、物産館など、地場の農業、産業を再興するための取り組みをしていますが、一方、川内市は自分たちの力で町おこしをしようとしていません。
川内駅は九州電力による寄付があり、立派になりましたが、構内の『きやんせふるさと館』には、地元の菓子屋ではなく、他の地域の店が入ってしまいました。
町が発展する条件は3つあると言われています。第一に若者、第二に馬鹿者、第三によそ者。こうした人々が連携しなければ町は変わりません。川内市は行政にカネがなくなると、九電に無心する、という体質ができてしまっています」
国を「信じたい」。再稼働同意会見での市長の淡い「希望」
――昨日(10月28日)の記者会見の席で、岩切秀雄川内市長が『再生可能エネルギーを推進してきた』と言っていました。具体的にどのような政策をしてきたのでしょうか
鳥原「太陽光、風力などの発電は、自主的に民間企業がやっているだけです。住宅用を除いて、市が助成金を出しているわけではありません。ゼロエネルギー・ハウスについても言っていましたが、土地ぬきで5000万円という高価なもの。市民が導入するでしょうか。
火力発電のガス・コンバインド・サイクルにすれば60パーセントも熱効率がよいと言われています。ジャーナリストで反原発活動家でもある広瀬隆さんもお薦めしています」
――川内市長は、原発の安全性については国が保証し、たとえ重大事故が起こっても責任をとる、ということを『信じている』と言いましたが、それは彼の本音なのでしょうか。彼もまた、川内市民の一人には違いないと思うのですが
鳥原「『信じている』というよりは『信じたい』という希望なのではないでしょうか。いずれは廃炉にしなければならない、ということは分かりきっています。廃炉の準備をした方が安全な生活を保証できるというのに。
原子力規制委員会は、保安院から名前が変わっただけ。規制委でなく、推進委です。『議論が尽くされたか』と聞かれれば、『尽くされていない』と答えます」
事故から学べない政府の無策、薩摩川内市の受難
鳥原「国のやり方を見てください。福島への帰還を求めています。年間20ミリシーベルト以下なら帰っていいと言っていますが、これは、国際放射線防護委員会(ICRP)勧告での基準値、年間1ミリシーベルトの20倍です。
チェルノブイリやスリーマイルの事故後は、技術者を育てる学校ができました。事故に学ぶ、ということはそういうことではないでしょうか。
ここ鹿児島県では、脱原発の県議候補が当選するのは並大抵ではありません。脱原発を掲げる遠嶋春日児議員の当選は、前回の選挙が3・11直後の時期(2011年4月)だった、ということも一つの勝因となっているのではないでしょうか。
(川内市には)出る杭は打たれるという雰囲気があります。また、若者が少ない、ということは浮動票が少ない、ということでもあります。つまり、社会的事象が起きても選挙の結果が変わりにくい、ということです」
川内原発建設反対連絡協議会は、川内原発第一、第二号機を建設する当時から活動してきました。私を応援してくれる人は私によく言います。『隠れ脱原発の人はたくさんいる』と」
あなたは何を考えているのでしょうか?
新聞記事を読みました。
いかに、あなたたちのような愚蒙な方々が日本の現状を直視していないか痛感し、とても驚いています。
新聞記事にはこのようなことが記されていました。
「原発ゼロでも電力不足は全くなかった。電力会社の単なる脅しだったことがはっきりした」
本当に面白い意見が聞けて視野が広がりました。
原発が止まって以来各電力会社は国民の負担が少なくなるように尽力し、
その結果今の電力がギリギリ足りている状態を維持できています。
それなのに、電力会社の努力を無視し「原発がなくても電力は足りている」と言う人がいるとは思ってもみませんでした。
確かに、「電力は足りている」かもしれません。
しかし、今は老朽化が進んだLNG火力発電所をも動員し電気を生み出しているのです。
この状況がこのまま続けば、原発でなくても事故が起こるでしょう。
電力会社の脅しではないということに気づいていただける事を信じています。
日本は原発を使いたくて使っている訳ではない。原発にも核廃棄物等多くのデメリットがある。
しかし、今の日本はエネルギー事情はそんな贅沢を言っている場合じゃないのです。