放射性廃棄物の規制基準検討の方向性決まる「当面我々が必要なのは安全に管理すること」~2014年度 第34回原子力規制委員会 2014.10.29

記事公開日:2014.10.29取材地: テキスト動画
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 2014年10月29日(水)10時30分から、2014年度第34回原子力規制委員会が開催された。放射性廃棄物の規制基準について、まず”安全に管理すること”を念頭に検討する方向性が決まった。一方で、将来的な最終処分は、充分時間をかけて検討する必要があるという。

■全編動画

  • 日時 2014年10月29日(水) 10:30~
  • 場所 原子力規制庁(東京都港区)

議題 1 再処理施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則の解釈の一部改正について

 米国で発生した外部電源の”一相開放故障”について、発電用原子炉は規則の解釈改正にて対策した。再処理施設にも同様を対策が必要なため、規則の解釈改正を決めた。その意見募集(パブコメ)結果を報告するもの。9月17日の第25回規制委員会で対応策を議論、規則の解釈改訂を行い、9月18日から10月20日にかけて意見募集を行った。

 意見募集で寄せられた意見は0件だった。規則の解釈の変更、用語の訂正など事務方案が示され、委員からは特に意見なく、承認された。

議題 2 「緊急時モニタリングセンター設置要領」に関する報告について

 すでに発表されているEMC(緊急時モニタリングセンター)のあり方の概要を踏まえ、具体的な体制、運用のあり方を明確にするもの。

 中村佳代子委員は、「きちんと活用できるのか、訓練などを通じ、定期的にブラッシュアップ」していくことを指示。現場感、土地感が重要であるため、現場の意見を聞いて見直すよう指示した。

 田中俊一委員長は、避難判断の材料となるモニタリング強化が大事であるとし、普段からプロフェッショナルになっておかなければ対応できないため、訓練で体制、運用に抜かりがないよう心掛けるようにと意見した。

 更田豊志委員は、設置要領を始め、文書、ドキュメントの取り扱いについてコメント。多くの文書の階層構造や連携関係を明確にし、「必要な文書が一発で直ぐに取り出せるような管理方法」を検討するようにと指示した。

議題 3 廃炉等に伴う放射性廃棄物の規制に関する検討について

 廃炉等によって発生する放射性廃棄物について、許認可審査を行う規制基準がまだ整っていない部分がある。そこを検討するための方向性について、委員長指示に基づき事務方が考え方をまとめ、委員会に報告、議論するもの。

 大村哲臣・長官官房審議官が説明。廃炉措置で発生する放射性廃棄物のうち、放射能レベルの比較的低いものは、トレンチ、ピットなどへの埋め立て処分や、クリアランスレベル以下の一般処分の制度が定まっている。しかし、放射能レベルの比較的高いものがまだ定まっていない。これをどうするか、だと説明した。

 田中知委員は、基本的な考え方には賛同したものの、「将来発生する高レベル放射性廃棄物やウラン廃棄物の処分について、当初から考える必要がある」と意見した。さらに、IAEAの制度管理、有用性、実効性を検討し、廃棄物の量や放射性物質としてのみならず、化学的特性も踏まえて検討するよう指示した。

 更田委員は、放射能レベルによる分別だけでなく、現場での解体時の作業の進め易さ、安全性も考えるようにとコメント。「基準の整合性ばかり気にして、基準作りに時間がかかりすぎるのが日本の良くないところ」だと述べ、スケジュール感を持って検討するよう指示した。

 他方、石渡明委員は、地盤が非常に重要になるとコメント。

 田中委員長は、「当面我々が必要なのは安全に管理すること」が第一段階だとし、最終処分は国民の関心も高く、充分に時間をかけて検討する必要があるとコメントした。

議題 4 平成26年度第2四半期の保安検査の実施状況について

 7~9月(2014年度第2四半期)に行った保安検査の結果を報告するもの。発電用原子炉施設として、女川原子力発電所(東北電力)ともんじゅ(JAEA独立行政法人日本原子力研究開発機構)に各一件、合計二件の監視事象があった。さらに、核燃料施設として、JAEA独立行政法人日本原子力研究開発機構に、前回の保安検査での指摘事項を改善していないと指摘したことが報告された。

 もんじゅは、ナトリウム漏洩監視のためのITV(テレビカメラ)の多くを故障のまま放置していたことが挙げられている。監視は巡視が主で、ITVはあくまで補助であるため、原子力規制庁は機能上の影響は少ないという判断しているが、故障のまま放置していたことを問題としている。

 更田委員は、ITVの重要度がどの程度なのか、保安規定からは読み取り難いことから、「事業者と規制当局の間に考え方のギャップがあるようだ」とコメント。もんじゅの保安規定は、原子力安全・保安院という”前の組織””過去の規制当局”が認可したものだとして、「一度認可されたものをどうのこうの言うのは何だが」と言葉を澱ませた。

 石渡明委員は、JAEAで過去3年4ヶ月間に29件の消防通報があったことは「常識では考えられない異常だ」とコメント。更田委員は、火災と不適合管理について、規制庁の指摘をJAEAがどう受け止めているか、調べにいくか、聞きにいくべきだとコメントした。

 議題説明者の一人、石井康彦・管理官は、保安検査やヒアリングの結果を見ると、規制庁の意図がいまだJAEAに充分伝わっていないという認識を示し、保安検査官の現場で行う行為の改善に取り組み、過去の許可の見直し、保安規定の見直しも視野に入れていることをにおわせた。

 更田委員は、「相手が何と考えているのか、事業者と意見交換や議論すべき」と意見。田中委員長も「JAEAはもんじゅだけでなく、組織自体安全に関する考え方に問題がある」とコメントし、経営者がイニシアティブをとって改善していくべきだと述べた。

議題 5 IAEA(国際原子力機関)の INSAG(国際原子力安全諮問グループ)及び ITAG(IAEA 東京電力福島第一原子力発電所事故包括的報告書に関する諮問委員会)の結果概要について

 更田委員がオーストリア・ウィーンで開催されたINSAG会合(10月21日から22日)、ITAG会合(10月23日から24日)に参加した結果を報告した。

 ITAGは東京電力福島第一原発事故の包括的な報告書を作成するもので、当初本年2014年内に報告書をまとめるとしていた。しかし、まだまだ検討が必要という意見があり、年内はさらなる情報収集にあたるという。来年2015年中頃にIAEAにドラフト版を報告し、報告書の完成は来年9月頃のIAEA総会に報告する予定となった。

議題 6 米国地質学会(The Geological Society of America)の 2014 年大会(GSA2014)への参加報告について

 石渡明委員が10月19日から22日にかけて、カナダのバンクーバーで開かれた米国地質学会に出席した結果を報告。今年は1964年アラスカ地震から50年目にあたり、多くの関連セッションがあったこと等を報告した。

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