川内原発をめぐる住民説明会について規制委・田中委員長、複雑な原子炉のシステムを理解するのは難しいとの主旨から「質問というより主張になってくる」と発言 2014.10.22

記事公開日:2014.10.22取材地: テキスト動画
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 2014年10月22日14時30分より、東京・六本木の原子力規制庁で田中俊一・原子力規制委員会委員長による定例会見が行われた。九州電力川内原発の審査書に関する住民説明会について、「複雑な原子炉のことを一回聞いて理解するのは難しく、どうしても違った質問というよりは、主張になってくる」と所見を述べた。ただし、今後も要請があれば開催したい考えだという。

■全編動画

  • 日時 2014年10月22日(水) 14:30〜
  • 場所 原子力規制庁(東京都港区)

事業者経営トップとの意見交換「責任者の意識を大きく持ってもらいたい」

 原子力発電施設を持っている事業者の経営トップと、安全文化の醸成に関する意見交換を行うことについて、田中委員長は「安全文化の向上や醸成にトップマネジメントは大事だ。事業者によっていろいろな言いたいこともあるだろうが、これから詰めていきたい」との考えを述べた。ただし、規制の改正につなげていくような考えはないという。

 事業者トップに何を言いたいのかという記者の質問に田中委員長は、「原子力発電所を持っていることのリスクは大きい。そういう意識を持って(原発を)使う責任者という自覚を持ってもらいたい」という。「きちんとした意識を大きくしてもらいたいが、具体的にどういう意見交換か、もう少し考えたい」と答えた。

 「安全文化の向上に向けて、リスクの大きな原子力発電所を持っている事業者だという意識も持つよう、大きく変わることを期待する」と期待感を述べながらも、「(各社)一回では終わらないだろう」と不安感もにじませた。

緊急時の事業差と規制当局とのホットライン

 緊急時に各電力会社のトップと規制当局との間をつなぐホットラインはあるのかと記者が質問。田中委員長は、「基本的に形としてはできるようになっている」とし、事故時、本社に審議官がトップとして出かけて状況をつかみ、田中委員長自身は官邸へ行くと述べ、「ラインは整備しつつある」と回答した。どこまで機能するかは、「これから訓練を重ね完全にするところはしていきたい」と述べた。

 「電力会社のトップの携帯に直接電話する関係作りを」と記者がコメントすると、田中委員長は「ご指摘のことは良くわかります」と答え、詰めているところだが、「改めて確認したい」と答えた。

川内原発審査書の地元説明会「どうしても質問でなく主張になってくる」

 九州電力川内原子力発電所の審査書に関する地元説明会では、説明する規制当局側と説明を受ける住民との意見の隔たりが大きいものだったということに対して、田中委員長は、複雑な原子炉のシステムを理解するのは難しいとして、「どうしても質問でなく主張になってくる」との感想を述べた。

 今回の説明会は、規制委員会の委員自身は説明会には出席していない。説明は規制庁職員が行った。規制委としては、「事務方できちんと説明してもらった」、「これからもいろんな場所でやっていくことになる」という考え。今後、自治体などから説明会の開催要請があれば、断ることはないと、どんどん開催することを明言している。

 さらに、記者から(火山噴火対策などの)基準やルールを作るときに、住民が参加できなかったから説明会で意見がかみ合っていないとの指摘があがった。「オーフス条約の住民参加の仕組みを取り入れるという提言をするつもりはないか」との質問に対し、田中委員長は、「そういう考えはないし、きちんと情報公開し、パブコメなど意見をきちんと聞いている」と回答した。

日本ではカルデラ噴火は今後100年間に1%の確率という論文があるが・・・

 神戸大学の教授が、今後100年間に、日本でカルデラ噴火が起こる確率は1%だという論文を書いたことについて、意見を求められた田中委員長は、「その論文をよく読んでいないので、答えるのは適切ではない」と答えた。

9月の組織改編後の規制庁の防災体制は?

 9月の組織改編、人事異動により、防災関係部署が内閣府へ異動した。緊急時の防災体制がどう変わり、「現状はどうなっているのか」と記者が質問。田中委員長は、「内閣府原子力防災と密接に連絡を取りながら体制を整える」との方針を示し、防災訓練を行いながら、「今まで以上にきちっとできるように、良い方向に持っていきたい」と抱負を述べた。

 防災訓練については、先日のERCセンターの訓練が報道公開されなかった。福島第一原発事故の教訓の一つとして、「ERCがきちんと機能するようにするべきではないか」と記者が質問した。

 広報担当官は、「内閣府とも調整しながら、どう報道対応するか検討する」と答えた。田中委員長は、ERCで集めたプラント情報を国民に広報する際、「垂れ流しではなく正しい情報を伝えることが大事」で、「マスコミの協力も必要だと思っている」と述べ、協力を求める考えを示した。

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