2014年10月1日14時30分より、東京・六本木の原子力規制庁で田中俊一・原子力規制委員会委員長による定例会見が行われた。川内原発の火山噴火対策について、田中委員長は「今回の御嶽山とは全く違う話だ」「一緒に議論することのほうが非科学的」などと述べたが、今後、さらに研究や検討を重ねていく必要があるとの考えを示した。
2014年10月1日14時30分より、東京・六本木の原子力規制庁で田中俊一・原子力規制委員会委員長による定例会見が行われた。川内原発の火山噴火対策について、田中委員長は「今回の御嶽山とは全く違う話だ」「一緒に議論することのほうが非科学的」などと述べたが、今後、さらに研究や検討を重ねていく必要があるとの考えを示した。
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九州電力川内原発の巨大火山噴火対策について、田中俊一委員長は「今回の御嶽山とは全く違う話だ」と発言。
川内原発における巨大噴火による火砕流対策などついては、片山啓・規制庁審議官が規制庁の考えを次のように説明した。
非常に大きな巨大噴火は、これまでの活動履歴の間隔や、地球物理学的な探査の結果を踏まえた上で「川内原発の許容期間中に起きる可能性は十分に低いまず判断した」という。つまり、川内原発の運転期間となりうる今後30から40年の間に「噴火するような状況とは判断していないのがその前提」だという説明だ。
この前提に対して、「多くの火山学者から、数ヶ月後に超巨大噴火が起きるかも知れない、といった指摘があるわけではない」と断った上で、念のために状態が変わらないかを継続監視する考え方だという。
火山モニタリングとしては、地殻変動、地震を観測する。なぜなら、「俗に言うカルデラ噴火が起こるときには、マグマの蓄積量が長期に渡って相当大量に溜まってくる。富士山が一つなくなるぐらいの量。そうなれば地盤変動や地震が、相当早い事前に兆候が出てくる」と規制庁が考えているからだ。
これに関し、「多くの火山学者が前兆を確実に捉えるのは数ヶ月前が限度とか、数年間に捉える確実な予測は不可能だと指摘しているが」とのIWJの質問に対して、田中委員長は、「その議論は活火山や普通の火山であり、いわゆる、超巨大噴火について、そこまで広げて言っているとは理解していない」と反論。
「御嶽山の水蒸気爆発噴火と、超巨大噴火とは起こる現象が全然違う。そのことを一緒に議論することのほうが非科学的だ」とも述べた。
記者の質問を突っぱねていた田中委員長だが、火山噴火のリスクについてはこうも述べている。「川内原発の審査を行うまでは、カルデラ噴火のことなどたぶん誰も考えてなかった。その可能性が我が国にもあるんだということで、大変な日本国土の上に我々は生活してることを考えたら、もっと火山研究というのに力を入れてもらうのは大事」だと言うのだ。
しかし、「川内原発にまで影響が及ぶようなカルデラ噴火の場合には、そもそも南九州半分が全滅するような噴火であり、それが起こることについては一原発の問題ではない、国全体でとらえていく必要がある」との発言もあり、暗に規制委の範疇を超えるという意見を表明して、問題の論点をすり替えるような姿勢がうかがわれた。
燃料を炉心から抜いて運び出すには、通常は5年程度冷却してから輸送している。これについて田中委員長は、「必ず5年冷やさないと絶対ダメというわけでもなく、検討しないとわからないが、いざという場合は、別の可能性もあるかも知れない」と述べた。
いずれにせよ巨大噴火に対しては、「年オーダー前の予兆を早めにとらえる必要」があり、田中俊一委員長は、「それが可能かどうかも含めて今後研究し、火山モニタリングもそれだけでいいかも含めて今後検討を重ねていく必要がある」との認識を示した。
「巨大噴火は当面起こらないだろう」、「起こる数年前には予兆が分かるだろう」という安易な推測が重なった審査結果であることが、改めて浮かびあがった。
今回の御嶽山の噴火は、水蒸気噴火で予兆を捉えるのが難しく、政府も川内原発と「直接関係ない」との見解を示している。
しかし、今後水蒸気噴火のままで終わるか、マグマ噴火に至るのか、誰にも分からない。今回の噴火を規制委・規制庁として、新たな知見や教訓として整理する必要があるのではと記者が質問。委員長は、「私は専門家ではないので一概に言えない」が、「火山検討会でじっくり議論してもらう必要があるとは思う」と答えた。
今後、廃止措置に入る原発が増え、廃棄物が増えることが予測される。しかし、廃棄物の処理方法に関する規則が未整備のため、委員会として早急に整理する必要があると問題提起された。
田中委員長は、「規制委が決めないから処理できないという事態に陥らないようにしなければならない。そのために、廃棄物を処分できるかどうかは別として、少なくとも安全に管理するという段階までの基準は整備しておく必要がある」との考えを示した。
事務局に整理・検討するよう指示したところで、具体的にいつごろまでに検討するか等のスケジュールは決まっていないという。
川内原発の審査の進展について、田中委員長は「予想以上にやはり長引いているなという印象はもっています」とコメント。
3月に優先審査することが決まってから半年が経過しているが、「事業者も一生懸命やっていると思う」「大変だというのは想像できる」と事業者を擁護した。「新規制基準に基づいた最初の審査なので時間がかかっているが、今後は円滑に審査が進むことを期待する」との考えを示した。
午前の委員会の議題1で取り上げられた原子力防災体制の充実・強化のため組織変更を行うことについて、田中委員長は「組織が突然できたことで、こういう形で当面はしょうがないが、整理する方向で努力をしていただければ」と発言した。
この組織変更の主旨を記者が質問すると、「内閣府が防災について責任を持つことが明確になり、大変良いことだが、きちんと機能するために規制委員会が専門性も含めたサポートが必要だと考えている」として、「今は十分とは言えないと思うが、みんなで努力してサポートしていきたい」との考えを示した。