香港中心部の占拠から学ぶこと――「暴力がリアルに見える」香港、「透明な暴力」にさらされる日本 2014.10.28

記事公開日:2014.10.28取材地: テキスト動画
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(IWJ・藤澤要)

 「香港の学生運動をめぐるコミュニケーションについて」と題した緊急研究会が2014年10月28日(火)13時、大阪府箕面市の大阪大学箕面キャンパスで開かれた。スピーカーは、大阪大学准教授の深尾葉子、香港出身で日本の大学で学ぶ伯川星矢氏、フリー・ジャーナリストの刈部謙一、東京大学教授の安冨歩氏。

 香港生まれで母が日本人、父が香港人の伯川氏は、18年間香港で暮らした後、高校3年から日本に滞在し、現在は大学3年生。「いま、この中で、新しい空気が入ってこようとしている。僕にとっては、一生に一度、遭うかどうかの機会」。伯川氏は、今回の香港での出来事に対する思いをこう表現した。

 研究会は、YouTubeに掲載された映像や、17日から20日まで香港で取材を続けた刈部氏による撮影の写真を交えて進行。香港の事情に通じる、伯川氏、深尾氏、苅部氏による詳細な解説があった。

 安冨氏は、「天安門事件以来の重要な出来事だと思います」とコメント。日本社会は「透明な暴力」に支配されているとする安冨氏。一方、香港では「暴力がリアルに見える」。

 安冨氏は、「だから人びとはリアルに(暴力に)対抗できる」と話し、「あそこで起きているのは、実は、私たちが日々受けていることと全く同じ」と論じる。

■ハイライト

  • 登壇 安冨歩氏(東京大学教授)、深尾葉子氏(大阪大学准教授)、刈部謙一氏(フリージャーナリスト)、伯川星矢氏(香港で生まれ育った獨協大学の学生)
  • 日時 2014年10月28日(火) 13:00~
  • 場所 大阪大学 箕面キャンパス(大阪府箕面市)

「なぜ、枠組みを他者から与えられなくてはならないのか」

 深尾氏は香港について、経済的自由が与えられるが、政治的決定権がないという「枠組み」が今日まで押しつけられてきたと指摘。「枠組みがすべて他者に決められる。かつてはロンドンで、今は北京で」と、英国から中国への返還があっても、その「枠組み」は温存されてきたと話した。

 「香港の人にとってみれば、誰か分からない遠くの人がやってきて、自分たちの上に立つ」。「枠組み」の中におさまれば、それなりの自由を享受することができる。しかし、「自分たちを枠組みそのものを、作っていきたい、作り変えていきたい」と意志する人びとがあらわれ始めた。

 「なぜ、枠組みを他者から与えられなくてはならないのか、という問いなのではないか」。深尾氏は、占拠活動の動因をこのようにみる。

「解放区」での出来事

 「この空間は、ぼくら学生運動の経験者としては非常に懐かしい」。10月17日から香港に入り、20日まで取材を続けていたフリー・ジャーナリストの苅部謙一氏は、取材で撮影した写真を紹介しながら話す。

 バリケードの内側では何が起きていたのか。苅部氏は、その空間を「解放区」と呼ぶ。参加者それぞれがデザインした張り紙やチラシがいたる所に貼られる。道路には、メッセージ性の強いオブジェが並ぶ。

 数多く設置されたテントでは、テーマパークのように様々な活動が行われた。「民主講場」では、入れ替わり立ち替わり、人びとが自分の考えを発言する。誰が始めたのか、「自修室区」と呼ばれる場所が設けられ、中学生とおぼしき参加者が勉強に励む姿もあった。「留言板」では参加者どうしのメッセージがやりとりされる。

 「漫画、イラスト、自分がふだん慣れ親しんでいるもので、自分たちのメッセージを出そう」。それぞれが自分のやりたいことをやっている一方、そこにはある種の秩序が、たしかに、あったという。

商売がたちゆかなくなる:住民との軋轢

 中国建国記念日を前に、大陸からの観光客が多く訪れることが見込まれていた香港。旺角(モンコック)のある飲食店では、食材を大量に仕入れて客を待っていたが、占拠のニュースが広がるとともに、予約客のキャンセルが相次ぐ。海老などの生きた食材も使わないまま、死なせてしまう。高い家賃が重くのしかかる。従業員にも暇を出したという。

 カメラを前にした取材に対しては、学生にも同情する面があるが、自分たちの生活も大事だと淡々と語っていた店主。しかし、占拠の場では豹変する。親を養う必要があるのに、それがままならない、と大声でまくしたてる。取材に訪れていた外国メディアにも英語で訴える。訴えようとして言葉に詰まる場面も。

 深尾氏は「お母さんを養うというのは、中国人にとって決定的な大義名分ですね」と解説。店主はビジネスマンでもあり、自分の事業への打撃を何よりも懸念しているが、それは一切表に出さないようにしていると分析した。

 伯川氏によれば、香港の大学生およそ1万人の学費の半分には、税金が使われているという。つまり、大学生の学生生活は、納税者が負担しているという側面がある。「その納税者の仕事を邪魔している」と考える香港住民もいるということだ。

「透明な暴力」にさらされる日本社会

 「この20年くらいの中国の発展と呼ばれるものの中で、香港がもっとも抑圧を受けていた」。安冨氏は語る。経済、政治制度、教育など中国で最も先進的であった一方、中国内では「何の権力も与えられていない植民地みたいなものとして位置づけられていた」。

 一方、日本はどうか。「日本社会では、微分された暴力が背骨になっているので、それが存在していることも感じられないし、自分自身が取り込まれているので、反抗することもできなくなっている」。

(…会員ページにつづく)

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「香港中心部の占拠から学ぶこと――「暴力がリアルに見える」香港、「透明な暴力」にさらされる日本」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    香港中心部の占拠から学ぶこと――「暴力がリアルに見える」香港、「透明な暴力」にさらされる日本 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/193274 … @iwakamiyasumi
    真綿でじわじわと首を絞められているのだが、気付く人が少ないのは、日本の方が巧妙で悪質なのだろう。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/527795946302619648

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