「ヘイトスピーチに歯止めを」二次被害を覚悟で提訴に踏み切った差別被害当事者とカウンター市民の訴え 2014.9.5

記事公開日:2014.9.7取材地: テキスト動画
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(IWJ・ぎぎまき)

 「次は自分が闘う番だ」――。

 街頭で行なわれているヘイトデモやネット上でのヘイトスピーチを拡散、扇動してきたとして、在特会の桜井誠会長やまとめサイト「保守速報」に対し、損害賠償を求める裁判を起こした李信恵(リ・シネ)氏が、代理人の上瀧浩子弁護士とともに9月5日、外国特派員協会で記者会見を開いた。

 李氏はこれまで、デモの参加者に「殺せ、殺せ、李信恵」と名指しされ、ネット上でも同様、「在日朝鮮人ゆえに日本から排除しよう」などと、直接的に攻撃の対象となってきた。ヘイトデモの現場では警察に抗議し、twitter社には100回以上通報するも、まともに取り合ってはもらえなかったという。ヘイトスピーチを規制する法律がない日本において、差別の標的になった場合、自分を守る術がないのが現状だ。

 ライターである李氏はこれまで、被差別当事者としてヘイトデモなどを取材し、人種差別に対抗する記事を書いてきた。しかし、「ペンを持たない人はどうするのか」。李氏は、声も上げられず黙るしかない自分以外のマイノリティを守るためにも、法廷に立つことを決意したと話す。会場には、李氏と同じく、個人的な脅迫を受け、提訴に踏み切ったカウンター市民の伊藤大介氏も駆けつけ、外国人記者団に差別の現状を訴えた。

■ハイライト

  • 会見者 李信恵(り・しね)氏(フリーライター)/上瀧浩子(こうたき・ひろこ)氏(弁護士)

二次被害を覚悟で

 「まとめサイトの管理人の多くが匿名で、自分自身は安全な場所にいて差別を煽り、それを商売にする。そのことも許せないと思っていた。調査すれば特定できる、差別や誹謗中傷は訴えられるということが分かれば、再発防止につながるのではないかと考えた」

 李氏は、差別発言を選択、抽出し、誹謗中傷だけで仕上げた記事をまとめた「保守速報」について、「ネット上に渦巻く個人の差別感情を後押しし、扇動するものでしかない」とし、2200万円の損害賠償を請求。在特会の桜井誠会長については、「自らは安全な場所にいて若者らの憎悪をあおり、将来を曇らせた。京都朝鮮第一初級学校を襲撃し、多くの保護者や子ども、教員の心を傷つけたが、代表者個人としては、何の責任も問われていない」として、在特会と桜井会長に対し550万円の賠償を求めている。

 しかし、訴訟には二次被害が伴うと李氏は訴える。自分を晒すことで、新たに差別の対象となる可能性があるからだ。事実、提訴後から新たな被害は増えているという。

 「大分県の高校教諭がFacebookで実名で『極左の信恵と極右の桜井は無人島かどこかで殺し合え。日本からゴミがなくなったら美しくなる』というような発言を掲載していた」

 その他、福岡市議会の議員も李氏の裁判について、ブログで誹謗中傷を繰り広げていたといい、twitterでは、誹謗中傷が吹き荒れた。しかし、それでも李氏は、「同様な思いを、もうほかの誰にもさせたくない。今回の訴訟を契機に、ネット上や路上でのヘイトスピーチに歯止めがかかれば、また議論が深まればと願っている」と、会見の最後に訴えた。

子供まで脅迫の対象に

 差別や暴力の扇動にカウンターとして抗議してきた伊藤大介氏は、現在、2件の民事訴訟で裁判中だ。会見終了後、会場にいた伊藤氏に話を聞いた。

▲ぎぎまき記者の質問に答える伊藤大介氏

 「今、2件の民事訴訟をやっている。差別排外デモで抗議している私を見て、抗議を止めさせようと、匿名で私の会社に脅迫的なFAXを送ってきた人物がいる。家族を脅迫するのが一番効果的だろうと、妻や子供を含めた内容の脅迫文が、2013年の5月から2~3ヶ月にわたって送られてきた」

 犯人は個人が特定されないよう、コンビニからFAXを送信してきたといい、「コンビニから送れば捕まらないんだろうと思っていたのだろうが、いくら匿名でもダメなことをすれば裁かれるんだということを、世の中に広くしらしめる必要性があるだろうと思った」と、提訴に踏み切った理由を説明。現在、この件については被害届が受理され、伊藤氏を脅迫した犯人は有罪になっている。

 もう一件は、ネット上で差別排外主義を扇動してきた瀬戸弘幸氏に対する訴訟だ。瀬戸氏のブログは、ライブドアの政治カテゴリーでは常に上位にランク付けされ、多くの閲覧者を持つ人気ブログの一つだ。伊藤氏は、個人的な誹謗中傷を受けたとし、名誉毀損で瀬戸氏を訴えたが、そこにはもっと大きな目的がある。

 「(カウンターに)関わっている人は、大なり小なり、何かしらの被害を受けながら差別に反対している。私個人のことであれば、面倒くさい訴訟なんてやらないが、匿名で差別を繰り返し、差別を扇動している人物を何とかしたいというのが目的。私個人に対しての事柄で訴えるしか術がない」

「どっちもどっち」論

 ヘイトデモに対抗するカウンター市民らの多くは、デモ参加者に対し、罵詈雑言を浴びせることはこれまでも指摘されてきた。「どっちもどっちではないのか」という意見も多く見受けられる現状についても、伊藤氏の見解を聞いた。

 「差別排外主義者たちが何をしてきたか、ということを飛ばして、現場の映像や状況をぱっとみたら、デモをしている側と抗議している側が騒いでいるとしか捉えられないと思う。しかし、やっぱりそこから一歩踏み込んで欲しい。

 何故、抗議しているのか、抗議されている側は何をしてきて、何をしようとしているのか。そこまで掘り下げれば、『どっちもどっち』というのはあり得ないと思っている。まず、その辺を、現場で見たり、調べてみて欲しい。騒いだり面白がっていることは、一切ない。こんなことをしなくていい世の中になればいいと、日々、疲弊しながらやっている」

政府のいう「現行法」とは何か

(…会員ページにつづく)

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「「ヘイトスピーチに歯止めを」二次被害を覚悟で提訴に踏み切った差別被害当事者とカウンター市民の訴え」への1件のフィードバック

  1. あのねあのね より:

     映像は、脅迫罪と侮辱罪で逮捕できる刑法犯です。これを警察が許していると言うのは国際社会からは政府の方針だと理解されているでしょう。例えば、これを暴力団やヤクザがやったら即逮捕です。暴力団以上のことをやっているのにデモの許可を警察が与える理由は何でしょう。政府、特に安倍内閣の方針だと国際社会からは理解されるでしょう。
     こういう前近代的な社会に対する外国からの投資も移民労働者も期待できませんね。

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