8月9日、広島に続き、第二の被爆地となった長崎が、原爆投下から69年の時をむかえた。長崎市平和公園では平和記念式典が開かれ、5000人を越える参列者が訪れた。原爆が投下された11時2分には参列者全員が黙祷を捧げ、平和祈念像下からは、平和を象徴する鳩が放たれた。
(IWJ 原佑介)
特集 戦争の代償と歴史認識
8月9日、広島に続き、第二の被爆地となった長崎が、原爆投下から69年の時をむかえた。長崎市平和公園では平和記念式典が開かれ、5000人を越える参列者が訪れた。原爆が投下された11時2分には参列者全員が黙祷を捧げ、平和祈念像下からは、平和を象徴する鳩が放たれた。
記事目次
■ハイライト
※ 安倍総理大臣のスピーチは10分30秒頃から
「目をつむったら、亡くなった人の顔が見えたなぁなんて思ってね。悲しくなります」――。
戦時中は学徒動員で軍需工場に行っていたという、式に参列した高齢の女性は、IWJの取材に、涙ながらに戦争体験を話した。
「原爆のときは建物の下敷きになって、だいぶ経ってから助けだされたんですけども、コンクリートだったから、火が燃えてこなくて、助かったんですよ。家族も原爆で亡くなりました」
その上で、「戦争だけはつまらんですよ。勝っても負けても、何も得るところがない。マイナスばかり。だから今、ガザとかから子どもや年寄りが怪我して運ばれたりするのを見ると可哀想で。当時を思い出しますよ」と続け、涙を拭いた。
爆心地から目と鼻の先にある現・長崎大学病院で原爆の日をむかえたという被爆者の男性は、「体は全面ガラスでやられ、目も片方取れました」と義眼を見せ、「おふくろも亡くなりました」と振り返る。男性は平和祈念像に手を合わせ、「この60年間無事に平和を守ってきたが、これから先、どうやってこの平和を守っていくか、よく見守ってください、という気持ちでお祈りしました」と胸のうちを明かした。
「昨日のことのように原爆が落ちた日を思い出しました」と語った女性は当時、防空壕に避難していたという。
女性は、「戦争はバカみたい。とんでもない。戦争がないのが一番」と述べ、「結局、戦争があったことないから実感できないから、総理だって実感がないから平気で何でも言えるのかもしれない」と戦争体験者に共感のない安倍総理を批判。続けて、「みんな逃げ惑って、私なんて近くにリュックサックも落ちていたのに、(防空)ずきんだけ持って逃げるくらい慌てたんですから。防空壕に逃げて、みんなに会って手を握ってからやっと安心した」と戦争を振り返った。
式では、田上富久長崎市長が、長崎平和宣言を読み上げた。
田上市長は、「核兵器の非人道性に着目する国々の間で、核兵器禁止条約などの検討に向けた動きが始まっているが、一方で、核兵器保有国とその傘の下にいる国々は、核兵器によって国の安全を守ろうとする考えを依然として手放そうとしない」と核兵器禁止を先送りする動きに懸念を示した。
さらに、「核戦争から未来を守る地域的な方法として、『非核兵器地帯』があり、現在、地球の陸地の半分以上が既に非核兵器地帯に属している」と指摘。日本が属する北東アジア地域を核兵器から守る方法の一つとして、非核三原則の法制化とともに、『北東アジア非核兵器地帯構想』の検討を始めることを、日本政府へ向けて提言した。
また、「今、わが国では、集団的自衛権の議論を機に、『平和国家』としての安全保障のあり方について、さまざまな意見が交わされています」と、広島市長が触れなかった集団的自衛権へも言及。「被爆者たちが自らの体験を語ることで伝え続けてきた、その平和の原点が今、揺らいでいるのではないか、という不安と懸念が生まれています」と指摘するとともに、日本政府へ、「この不安と懸念の声に、真摯に向き合い、耳を傾けること」を強く求めた。
最後に、「東京電力福島第一原子力発電所の事故から、3年がたちました。今も多くの方々が不安な暮らしを強いられています」と原発事故に触れ、一日も早い福島の復興を願うとし、核兵器のない世界の実現のために努力すると宣言した。
城臺美弥子(じょうだい・みやこ)さんは、被爆者代表として「平和への誓い」を読み上げた。そのなかで、「(私は)被爆3世である幼い孫娘を亡くしました。わたしが被爆者でなかったら、こんなことにならなかったのではないかと、悲しみ、苦しみました」 と胸中を明かす。
さらに、安倍総理らが参列する中、「今、進められている集団的自衛権の行使容認は、日本国憲法を踏みにじる暴挙です。日本が戦争できるようになり、武力で守ろうと言うのですか」と厳しく批判した。
さらに、「武器製造、武器輸出は戦争への道です。いったん戦争が始まると、戦争は戦争を呼びます。歴史が証明しているではないですか。日本の未来を担う若者や子どもたちを脅かさないでください。被爆者の苦しみを忘れ、なかったことにしないでください」と訴えた。
式典で事前配布されるパンフレットには、長崎市長の「長崎平和宣言」などとともに、城臺さんの「平和への誓い」の全文も掲載されていたが、「日本国憲法を踏みにじる暴挙です」という文言は原稿には載っておらず、城臺さんによる当日のアドリブだったようだ。
また、城臺さんは原発問題へも言及。「福島には、原発事故の放射能汚染で、いまだ故郷に戻れず、仮設住宅暮らしや、よそへ避難を余儀なくされている方々がおられます。小児甲状腺がんの宣告を受けて、おびえ苦しんでいる親子もいます」と述べ、使用済み核燃料の処分方法も未知数である原発は、早急に廃炉を含め検討すべき課題とし、再稼働へも疑問を呈した。
(…会員ページにつづく)
長崎に妹が居ます。 修道院に居ます。 だから長崎の平和記念式典にはいつも注目しています。
特に、今年は集団的自衛権が閣議決定されて初の集会で強い関心がありました。参加者へのインタビューでは、どなたも戦争はいけない、戦争への道は反対だと言われ、平和への思いを強く示されたことに共感しました。憲法を守り、戦争への道へ進むことは絶対に許してはなりません。
被爆者代表の挨拶にいっそう感動しました。
被爆者代表・城臺美彌子さんの胸を打つお話は1時間1分過ぎ。
51分40秒~長崎市長の長崎平和宣言、続いて1時間~被爆者代表城台さんのスピーチ。心を打つ。
長崎市長と被爆者代表城台さんの言葉に感動しました。
原爆体験者たちの声、「戦争からは何も得られない」