「遺伝子組み換えも原発も、人類にとって最大の危機」 〜『いのちの種を抱きしめて』上映会 辻信一氏×岡本よりたか氏 2014.6.6

記事公開日:2014.6.11取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・奥松)

 「グローバル化を進める大企業が一番恐れるのは、僕らが『いち抜けた!』と言うこと。つまり、買わないこと」──。

 2014年6月6日、東京都千代田区の日比谷図書文化館にて、映画『ヴァンダナ・シヴァのいのちの種を抱きしめて』上映会と緊急講演会が開催された。遺伝子組み換えによる種子の独占に警鐘を鳴らす辻信一氏は、「僕らは、本当の豊かさに気づきさえすればいい。大地はすべてを与えてきたし、これからも与えてくれる。本当の豊かさはコンビニや自販機ではない」と語った。

 この映画は、インドの哲学者で環境活動家のヴァンダナ・シヴァ氏が、遺伝子組み換え(GMO)作物の危険を訴え、多国籍バイオ企業による農業支配に抵抗する姿を描いたドキュメンタリーである。上映後は、文化人類学者の辻信一氏と自然栽培農家の岡本よりたか氏が、この映画で描かれた遺伝子組み換え種子を巡る現状や、締結間近とも言われているTPPなどについて語り合った。

■ハイライト

  • 映画上映 「ヴァンダナ・シヴァのいのちの種を抱きしめて」(録画には含まれません)
  • 講演 辻信一氏(文化人類学者、環境運動家、明治学院大学教授)/岡本よりたか氏(自然栽培農家、空水ビオファーム八ヶ岳)

在来種を守るシードバンク

 はじめに岡本氏が、この映画の制作者でもある辻氏に、ヴァンダナ・シヴァ氏の活動を記録しようと思った理由を尋ねた。辻氏は「僕らにとって、あらゆる分野で、彼女の言動はひとつの手本だった。彼女から、アジアの叡智を学ぶことができる」と述べ、このように続けた。

 「ヴァンダナと初めて会った時、『インドに日本の原発を持ってこないで!』と、30分くらい怒られた。日本の政府が海外で何をやっているのか、日本人はもっと批判的であれ、と言われた。確かに僕らは、原発の再稼働に反対するのと同じくらい、今、トルコへの原発輸出に反対しているだろうか」。

 辻氏は、インドのヒマラヤ山麓にある、ヴァンダナ・シヴァ氏の故郷の農場を訪ねた時の様子を振り返った。「都市化、工業化をかろうじて免れた町で、彼女の活動で確実にコミュニティが復活しつつあった。人々は、在来種のシードバンクから種子を借りていき、うまく収穫できたら次の種子を返しにくる。これも運動の成果だ。そして、彼女の学校がある。そこに世界中から人が集まり、環境について学び、世界中に散って、それぞれのところで活動を広げるのだ」。

支え合い、分かち合う農業の仕組み

 岡本氏は「私は、CSA(Community Supported Agriculture)という新しい農業のシステムを目指している。農家が都会の人のために作物を作り、都会の人は農家を支える仕組みで、収穫を家族のように分かち合う。そういうスタイルを作っていかないと、この先の農業は先細りになってしまう」と話した。

 「金銭面で保証があると、生産者は安心して意欲的に作付けができる。たくさん収穫したら、たくさん分ける。こういう仕組みが、皆さんの食を安定させると思う。逆に、グローバリゼーションというのは、生産者と消費者が分断される政策だ」。

 辻氏も同意し、「3.11で、東北の農業は大きな被害を受けた。これまでの農業は、災害の被害を農家が全部引き受けてきた。しかし、『地元学』を提唱している結城登美雄さん(民俗研究家)から、CSAという言葉を聞いた。彼は『田舎と都会が一緒に支え合い、次世代につなげていく。これからの社会のあり方だ』と力説していた。有機栽培や自然農への転換にはリスクがあるが、そのリスクを消費者も一緒に担い、恵みも一緒にいただこうということだ」と説明した。

ひと握りの者が利益を独占する構図

 岡本氏は「この映画を見て、インド綿の95パーセントが遺伝子組み換えになり、種子の価格が80倍に高騰して、27万人の農家が(種子を買えずに離農し)自殺していることに驚いた」と述べた。

 辻氏は「遺伝子組み換えは、原発や地球の気候変動と同じくらい、人類が直面している最大の危機だと思う。特に、原発と遺伝子組み換えの問題は、非常に似ている。この映画で、特にフォーカスしてるのが、『ひと握りの人たちが、種子を独占する』ということ。これは、民主主義の根幹が崩されることを意味する。原発も同じ。3.11から3年あまり経過して、原発産業と民主主義は両立できないことが、わかってきた」と語った。

 「原発や遺伝子組み換えを、選ばされてしまった僕らには、この社会をどんな社会にしたいのかという、その選択肢自体がすでに失われている。その点を、この映画で特に訴えたかった」。

グローバル企業は禁断の果実に手を出した

 さらに、辻氏は「集団的自衛権、秘密保護法。3.11のあと、日本にだけイヤなことが集中する、と感じているかもしれないが、実は、世界中どこでも同じことが起きている。それは、グローバル化だ。僕らは、そこに眼を向けるべきだ」とし、次のように力説した。

 「世界全体を覆い尽くしている、この構造をはっきりと掴むこと。かなり深刻な状況だが、一方で、これをはっきり認識することが希望につながる。世界中にグローバル化を懸念し、戦おうとする人たちがいるということだから」。

 岡本氏が「人間には、グローバリゼーションに抵抗する本能があるのではないか。都会の人間にも、自然農や自然栽培への志向、種子の保存が大切だという意識が高まっている」と言うと、辻氏は、次のように話した。

 「映画の中で、ヴァンダナが『種子の所有権を主張するために編み出したのが、遺伝子組み換えの技術だ』と話している。やっているのは大企業だが、これは商売の世界では禁じ手だ。水や空気、そして、種子。それがないと人間が生きられないものを独占するのは、一番ボロ儲けできるが、やってはいけないこと。今、水は商品として売られているし、水道事業はどんどん民営化されている」。

対抗手段は「買わないこと」

 「種子を独占するために遺伝子を組み換え、栽培所を作り、種子の所有権を主張して、国を相手に訴訟を起こす。まるで、SFみたいな話。そういう時代に、僕らは踏み込んでしまった。おそらく、企業も生き残りに必死なのだ」。そう言うと辻氏は、このように続けた。

 「しかし、彼らが一番恐れることがある。僕らが『いち抜けた!』と言うこと。つまり、買わないこと」。

 「実は、彼らの立っているところは非常に脆い。僕らは、本当の豊かさに気づきさえすればいい。それは、大地。大地はすべてをふんだんに与えてきたし、これからも与えてくれる。本当の豊かさはコンビニや自販機ではない」。

 「僕らが生きているのは、大地のおかげ。大企業やモンサントに支えられているわけじゃない。大地が作り出す、空気、水、種子、植物。そのおかげで生きている。この気づき、転換は、大変かもしれないが、実は単純だと思う」。辻氏の熱弁に、会場から拍手がわき起こった。

 岡本氏は、この映画の冒頭で、ガンジーの「塩の行進」が出てくることが、とても象徴的だと言う。「人が生きるのに欠かせない塩を、イギリスが専売制で独占したことへの抗議行動で、インド独立運動の重要なポイント。その塩が、今、種子になった。われわれの抵抗は、買わないこと。この運動を広げていけばいい。市民が変われば企業が変わる。企業が変われば国が変わり、国が変われば世界が変わる」。【IWJテキストスタッフ・奥松】

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「「遺伝子組み換えも原発も、人類にとって最大の危機」 〜『いのちの種を抱きしめて』上映会 辻信一氏×岡本よりたか氏」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見より) より:

    『ひと握りの人たちが、独占する』 この言葉がグローバル化の本質を表している。

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