「汚染されていない地域の食材を食べること。100ベクレル以下は安全、は嘘」 〜川根眞也氏講演会 2014.6.1

記事公開日:2014.6.1取材地: テキスト動画
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(文 IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 「80ベクレル/キログラム以下の米は、出荷されている。今、農家と水産業の家の子どもたちの健康被害を危惧している」──。

 2014年6月1日、福島県喜多方市で、低線量汚染地域を考える会による、川根眞也氏講演会「知っておきたい現状と対策」が行われた。東京電力福島第一原発事故の直後から放射性物質の測定を続けてきた、埼玉県の中学校理科教諭の川根眞也氏が、ベラルーシの例も交えながら、放射能汚染の現状を解説した。また、会津地方の汚染の状況について、会津放射能情報センターの片岡輝美氏が報告を行った。

 川根氏は「3.11以降、多くの人が線量計を持つようになったが、線量の上下に気をとられている。原発事故の発災前、福島駅前は毎時0.036マイクロシーベルトだったことを忘れている」と話し、放射能汚染の実情と、健康被害を避けるためのさまざまな方法を提示した。

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  • 講演 川根眞也氏(中学校理科教諭、放射能を考える会、内部被ばくを考える市民研究会)
  • 報告 片岡輝美氏(会津放射能情報センター代表)

事故前の福島は、毎時0.036マイクロシーベルト

 はじめに主催者が、「ここ会津地方は、放射線量が低いから大丈夫だと言われているが、本当なのか。復興と叫び、目先の利益ばかりを追っているが、本当の復興を担うのは子どもたちだ」と述べて、講演に移った。

 川根眞也氏が登壇し、ガイガーカウンターを掲げて見せると、「生徒たちに、放射能は怖くないと刷り込むために、文部科学省は学習指導要領を変えた。そのため、埼玉県教育委員会は、教科書、線量計、ウラン残土を含めた放射能鉱物5点セットを配った」と話した。

 「私は、2011年3月14日から空間線量を計測し始めた。この会場は、毎時0.18マイクロシーベルト、郡山市駅前は、毎時0.34マイクロシーベルトで、同地のモニタリングポストは毎時0.184マイクロシーベルトだった」と数値を述べると、次のように続けた。

 「今、多くの人が線量計を持つようになったが、線量の上下に気をとられている。原発事故の発災前、福島駅前は毎時0.036マイクロシーベルトだったことを忘れている」。

 続けて、東京世田谷で見つけた奇形のバラや、校庭にあった奇形ネコジャラシのスライドを見せ、「自校の校庭の土壌はセシウム134と137の合計で114ベクレル/キログラム、側溝汚泥は461ベクレル/キログラム。安全基準の目安は30ベクレル/キログラム以下だ」と述べた。

 「政府が公表する除染対象しきい値は、毎時0.22~0.27マイクロシーベルトだが、ベラルーシのリパ村は毎時0.23マイクロシーベルトで廃村になっている。自分の自宅付近の線量は、毎時0.048~0.069マイクロシーベルト。発災前、埼玉県の自然放射線は毎時0.034マイクロシーベルトだった」。

福島第一原発は「東京第一原発」だ

 テーマは、福島第一原発の現状に移った。川根氏は、関東一帯を汚染した東電の福島第一原発を「東京第一原発」と呼んで、「原子炉内の核燃料548本は、すべて溶けているはずだ。1号機の使用済核燃料292本のうち70本と、2号機の3本、3号機の4本、4号機の3本は破損している。4号機燃料プールの燃料棒は、5月26日時点で924本が移転済みだ」と話した。

 川根氏は「問題なのは壊れてしまった燃料棒を取り出す技術がないこと」と言い、2013年11月16日付の河北新報の記事を見せて、1号機の破損した使用済燃料棒が70本あると、今になって公表した東電の隠蔽体質を批判した。

 その上で、「福島第一原発からは、いまだに毎時1000万ベクレルが大気中に放出されている。一番いいのは、チェルノブイリと同じように石棺にすることだ。しかし、東電は、福島第一を原発存続のための実験場にしたいのではないか」と語った。

双葉町の避難住民1200人中167人が死亡

 「『ビッグコミックスピリッツ』5月19日号掲載の『美味しんぼ』特集記事では、安斎育郎氏、野口邦和氏が『1シーベルト被曝しないと鼻血は出ない』と言っている。しかし、岡山大学の津田敏秀教授が、双葉町と宮城県丸森町、滋賀県木之本町で疫学調査をやっていて、双葉町では確実に鼻血の報告が多いという」。

 こう語る川根氏は、「1年10ヵ月で、双葉町の避難住民1200人中167人(14%)が死亡した」とも言い、「2011年3月12日15時、福島第一原発から5.6キロ離れた上羽鳥のモニタリングポストで、毎時1590マイクロシーベルトを記録していた。福島県はこれを、2012年9月21日に発表したが、この頃、除染計画の目処が立ったからではないか。さらに、NHKは2011年3月12日14時40分40秒に、毎時4613.2マイクロシーベルトあったことを、2014年3月11日に発表した」と述べて、後出しの発表を批判した。

 そして、「もう一度、原発事故があった場合は、まず屋内退避を。外気を隔絶し、ヨウ素は水溶性なので水分のあるもので目貼りをする。それから、安定ヨウ素剤を服用すること」と聴衆に注意喚起をした。

原発に近づけば近づくほど、関連死は増える

 川根氏は「政府は、昨年10月にまとまっていた避難指示区域の線量調査報告書を、半年経った今年の4月18日に発表した。4月1日の田村市都路地区の避難解除の前には、公表したくなかったからではないか」と指摘。「避難解除地域は、解除1年後からは線量調査をしない。90万円の補助金も出して、田村市では78人が戻った。来年は、楢葉町と飯舘村を避難解除にしようとしている」と話した。

 続けて、「福島県の震災関連死は1000人を超えている。宮城県石巻市は、直接死3269人、関連死249人。南相馬市は直接死525人、関連死447人。双葉町は避難者数7019人で、直接死17人、関連死99人。原発に近づけば近づくほど、関連死が増えている」とデータを示した。

放射能のデータ隠しをする政府と自治体

 川根氏は降雨時の注意として、「不要な外出は避ける。頭髪、皮膚を濡らさない。濡れた場合は流水で洗うこと」と述べ、さいたま市の放射能測定データを取り上げ、「さいたま市には、放射能測定データは3月18日からしかない。(関東一帯に高濃度の放射性プルームが流れてきた)3月15日のデータは、どこの自治体も発表しない」と指摘。その理由を、「文科省通達では『それまで月ごとの測定だったのが、3月17日から毎日の計測へ変更になったため』というが、責任逃れの策略ではないか」と疑問を呈した。

 さいたま市に降った放射能汚染データは、3月21日9時、ヨウ素131が 7200ベクレル/平方メートル、セシウム137が790ベクレル/平方メートル。3月22日は、22000ベクレル/平方メートルと1600ベクレル/平方メートル。23日は、16000ベクレル/平方メートルと180ベクレル/平方メートル。川根氏は「これらの日の雨は、浴びてはいけなかった」と話す。また、福島市に降下した放射性物質の測定データは、すべて「震災対応により計測不能」の表記だという。

 また、3月20日15時から21日7時にかけて、古川、森合、南町の大気中で10~50ベクレル/立方メートルのセシウム137を計測していたといい、「10時間で100ベクレルくらい吸ってしまう」と述べた。

 さらに、「3月15日、つくば市ではヨウ素131が32ベクレル/立方メートル、テルル132が23ベクレル/立方メートル。テルル132は、半減期3.2日、ベータ崩壊してヨウ素になる」と続け、東京世田谷の都立産業技術センターでの計測を「ヨウ素131が240ベクレル/立方メートル。セシウム137が60ベクレル/立方メートル。会津若松は、2.22ベクレル/立方メートル」と示した。

九州が汚染されたら食べるものがなくなる

 川根氏は、キノコがなぜ高濃度に汚染されるかの理由を説明し、「除染はできない。ゼネコンに除染費用が支払われるなら、それを避難費用に回すべき」と訴えて、米軍および米国エネルギー省の、3月20日の土壌汚染値を示した。セシウム134は25974ベクレル/キログラム、半減期13日のセシウム136が4377ベクレル/キログラム、セシウム137は26133ベクレル/キログラムだ。

 続いて、小若順一氏(食品と暮らしの安全基金代表)らのウクライナ調査報告や、数々の疾病を持っていたが、保養して健康になったウクライナの女性(27歳)のことなどを話した。

 チェルノブイリ原発事故の影響について、川根氏は「現在、ベラルーシでは10人に1人しか子どもが産めない状態だ。法律で、妊婦にはエコー検査が義務づけられ、奇形がわかると堕胎させられるという。隠れて出産する女性もいるが、障害のある子どもが捨てられてしまったり、母親が若死にしたりで、孤児も多い」と語った。

 川根氏は、自分自身と、埼玉県の運動部に所属する高校生の尿検査結果や、千葉県柏市などで増加がみられる異型リンパ球や白血球数減少のことなどを話し、「汚染されていない地域の食材を食べること。保養は予防。100ベクレル以下の食品は安全だ、というのは嘘。そして、九州の原発の再稼働を止めること。なぜなら、(原発事故が起きて)九州が汚染されたら、食べ物がなくなるからだ」と訴えた。

「命こそ、宝です」

 次に、会津放射能情報センター代表の片岡輝美氏が報告に立った。「安全かどうかは、行政に決めてもらうのではなく、自ら決める」と言い、同センターの活動内容を、次のように述べた。

 「食べ物の放射能測定。空間線量測定。土壌測定。学習会と情報交換会の開催。山崎知行医師による子ども健康相談会。小林恒司氏(心療内科)による心の相談会。全国から食材支援。保養プログラムの実施。権利を回復するための『けんぽう学習会』。毎週金曜日に行う『沈黙のアピール』。緊急時のためにヨウ素剤の常備など」。

 最後に、片岡氏は「私たちは、真実を知りたいために活動している。命こそ、宝です」と訴えた。

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「「汚染されていない地域の食材を食べること。100ベクレル以下は安全、は嘘」 〜川根眞也氏講演会」への1件のフィードバック

  1. @EnRegaliaさん(ツイッターのご意見より) より:

    放射線測定における正しい認識の為に必見!2014/06/01 川根眞也氏「放射能、低線量下における知っておきたい現状と対策」 http://urx.nu/8Po4 ( #脱原発 #脱被曝 キャス http://moi.st/43ae633 )

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