「国家機構の大改革と脱原発で、野党はまとまる」 ~小沢一郎講演会 in 奈良県 2014.3.9

記事公開日:2014.3.9取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 「このまま、衆参ダブル選挙になったら、明らかに野党は全滅だ」──。小沢一郎氏は「政権交代の意味がなかった、という論調は間違っている。1回の失敗くらいで、民主主義を放棄してはいけない。戦前の日本は、政党が信用できないと言って、戦争に突入した。政党不信、民主主義不信になったら、絶対にダメだ」と語った。

 また、中村哲治氏との対談では、「野党をまとめるためには、国民主導の政治を。つまり、官僚政治と一極集中の国家機構の大改革と、脱原発だ」と述べた。

 2014年3月9日、奈良県生駒市のたけまるホールで、「政権交代とは何だったのか」「どうする、これからの日本」をテーマに、小沢一郎議員(生活の党代表)の講演会が行われた。病み上がりだという小沢氏は、声がかすれ気味ながらも、安倍政権の暴走を危惧し、最後まで民主主義の重要性を訴えた。また、中村哲治元議員とのコラボトークでは、消費税、外交、靖国問題などについて、忌憚のない意見を述べた。

■全編動画(15:44~ 2時間41分)

  • 講演 小沢一郎氏(衆議院議員、生活の党代表)「政権交代とは何だったのか」「どうする、これからの日本」
  • コラボトーク 中村哲治氏・小沢一郎氏「本当にコワモテ?小沢代議士の素顔」
  • まとめトーク 中村哲治氏
  • 日時 2014年3月9日(日)16:00~18:30
  • 場所 たけまるホール(奈良県生駒市)
  • 主催 中村てつじと歩む会
  • 告知 小沢一郎 講演会 in 奈良県

1回の失敗くらいで民主主義を放棄するな

 冒頭、生駒市議会議員の有村京子氏から挨拶と来賓紹介があり、小沢一郎氏が登壇した。小沢氏は「病み上がりで声が聞き取りにくく、申し訳ない」と述べた上で、「政権交代はなんだったのか。自公一強他弱になってしまい、あきらめのムードが漂っているが、間違った考え方だ。結論を急ぎすぎている」と話し始めた。

 「戦後、自民党政権が続いてきた。こういう例は、先進国では日本しかない。復興と東西対立の中でやりくりできたのは、高度成長があったから。今、少子高齢化、年金、医療、財政、税金などの問題が表面化してきた。『なんとかしなくてはいけない、政権を変えてみるか』で起こったのが、先の政権交代だ」。

 「今は、その政権交代の批判ばかり。メディアも同調し、マイナス面だけがインプットされているが、政権交代の意味がなかった、という論調は間違っている。意味がなかったと思ったとたんに、民主主義は終わってしまう」と力を込めた。

 さらに、「イギリスでは何百年もかけて、議会制民主主義を作り上げた。日本は1回の失敗くらいで、民主主義を放棄してはいけない。戦前の日本は、政党が信用できないと言って、戦争に突入した。政党不信、民主主義不信になったら、絶対にダメだ」と訴えた。

民主党は、なぜ政権を託されたのか

 小沢氏は「2つ目。民主党は何を訴えて、政権を託されたのか。日本の行政は大きな力を持っている。国民を代表した政治家たちが、その役所を時代の変化に合わせ、変えていく。行政機構の中から、今までと違った原則でやろうという意見は、決して出てこない。だから今、官僚主導の政治では、社会のいろんな矛盾を解決できない」と主張した。

 「だから、国民主導の政治に変えるんだ!」と語気を強めた小沢氏は、「政権交代は官僚機構の強大な権力をそぐことになり、大きな抵抗は予想できたが、地方自治体への権限移譲、年金制度の一元化、最低保障年金、農林漁業や雇用のセーフティネットなど、具体案を数多く提案した」と述べた。

 「しかし、官僚主導から政治主導への根本的な変革は実現できず、自民党政権と同じように、官僚の上に乗っかってしまった。なぜ、そうなってしまったのか。官僚機構を抜本的に変えることは不可能だ、と思っていたのかもしれない。国民主導の政治を、よく理解できずに、政権の座に就いてしまったのかもしれない」。

 「先の東京都知事選で、田母神候補は60万票以上を獲得した。若い人の4分の1が、田母神候補に投票したという。これは、とても危険な兆候だ。欧米でも社会が不安定になると、必ず極端な議論が力を得る。根本的な民主主義そのものを否定することだけは、食い止めなければならない」。小沢氏は、このように反省の弁を交えながらも、議会制民主主義の大切さを説いた。

野党が力を合わせれば、今でも絶対勝てる

 その上で、「3つ目。『一強他弱の中で、どうするのだ。現状では自公与党はとても切り崩せない』という敗北感が、政治家や国民の中に蔓延している。かつて、民自合併して政権が取れるなんて、誰が思っていたか。ところが、力を合わせ、マニフェストを掲げ、国民に訴えた結果、勝利した」と述べて、次のように続けた。

 「なぜなら、先の総選挙、参議院での自民党の得票は増えていない。しかし、2009年の政権交代の時より、棄権が10%も増え、野党の分散化も影響した。小選挙区制では輪をかけて差が拡大する。しかし、小選挙区制だから、政権交代ができた」。

 「自公対野党の首長選挙では、ほとんどのところは勝っている。都知事選でも、細川氏と宇都宮氏が一本化していたら勝っていた。なぜなら、国民は今の政治に対して、大きな不安と不満を持っているからだ」。

 「今でも野党が団結し、候補者を1人に絞り、自公与党に対抗すれば、絶対勝てる。そうすれば、10%の棄権した人たちも戻ってくる。しかし、このまま行けば、野党は全滅、日本の将来はお先真っ暗。本当の国民目線で、間違いのない道へ舵取りをしていくことに、全力を尽くす」と決意を表明し、最後に中村哲治氏への支援も訴えた。

目先の利害を捨てて、国民のために協力を

 中村氏と小沢氏のコラボトークになった。まず、市民から寄せられた質問で始まった。「政治活動で、一番つらかったのはいつですか」。小沢氏は「創政会の設立時、故田中角栄元首相と行き違いがあった時だ」と答えた。

 「民主党が政権を取った時、なぜ、総理大臣にならなかったのか」と問われると、小沢氏は「正直、表舞台に出るのは苦手だ。しかし、民主党代表として、総理大臣になってがんばるつもりだったが、検察の強制捜査があり、事実無根の罪で捜査が続き、代表を辞めざるを得なかった。非常に残念。しかし、今後、その時がきたら、覚悟してやるつもりだ」と続けた。

 中村氏が「先の総選挙で民主党を離党したが、また、民主党と組み、野党再編を目指すか」と訊くと、「民主党は、消費税をやらない約束で票をもらった。それを反故にすることは筋が合わないので、離党した。しかし、いまだに、政権交代を果たした小沢と民主党、というイメージが強く残っていると感じる。現在も、野党では第一党だ。個人的な恨みもない」と答えた。

 「しかし、民主党は(小沢氏を)裏切り者と言って、受け入れないのではないか」という中村氏の懸念に対して、小沢氏は「このまま、衆参ダブル選挙になったら、明らかに野党は全滅だ。オリーブの木(複数の政党が連携する構想)で十分、戦えると信じている。民主主義の根幹は選挙。国民の主権を行使できるのは、選挙しかない。目先の利害を捨てて、恨みも憎しみも捨てて、国民のために協力しあうべきだ」と熱く語った。

国家機構の大改革と脱原発でまとまる!

 支援者から「野党をまとめる対抗軸は」と問われると、小沢氏は「国民主導の政治。つまり、官僚政治と一極集中の国家機構の大改革と、脱原発だ」と述べ、ドイツの脱原発の状況を説明した上で、「この2本柱でまとまる」と明言した。

 中村氏が「小沢さんは、かつて原発推進でしたよね」と訊くと、「あの時はそうだったが、小泉氏より先に、脱原発だ」と応じて、会場の笑いを誘った。

 話題を消費税に移し、中村氏は「アメリカに消費税はない。小売り売上税だ。自由貿易に関する協定で、アメリカへの輸出に補助金が出なくなった代わりが、輸出還付金。小売り売上税は、仕入れに税金はかからない。消費税は、増税分が若い人の負担に回る」と危惧した。また、消費税を上げるために「日本がギリシャになる」と脅した財務省の嘘を糾弾した。

 さらに中村氏は、「日本の個人消費は、GDPの6割を占めている。その上、給料が増えず、増税で負担が増える。政府はまったく逆の政策、アベコベミクスをやっている。ところで、小沢さんは細川政権の時、消費増税派だったのでは」と尋ねた。

 小沢氏は「財政当局とメディアが、しきりに『破産する』と言い立てる。しかし、破綻するような状況ではまったくない。消費税をやる時は、社会保障費を含めた直接税の軽減をし、無駄使いを洗い出す。ただ、消費税に、まったく反対している立場ではない」と答えた。

靖国神社の宮司はA級戦犯合祀に反対した

 そして、テーマは外交問題になった。小沢氏は「非常に危ない状況。安倍首相にビジョンや国家観がしっかりとあるなら、自分は賛成はしないが、それはそれでいい。しかし、安倍首相は、心情、懐古的な感情で動いている。そのような情緒的な政治のやり方は、必ず、道を誤ると確信している。そこを糾すのは、国民しかいない」と述べた。

 中村氏が「情緒的とは?」と尋ねると、小沢氏は「靖国神社は、戦争で亡くなった人を奉る神社。A級戦犯は、戦争で死んだのではない。だが、安倍首相は『戦勝国のアメリカの手で殺されたことに違いはない』と言いたいようだ。(今回の首相の靖国参拝は)日中韓以上に、日米に深い亀裂が走ったと思う」と答えた。

 「小沢さんが首相だったら、どうするのか」と重ねて訊かれると、「合祀を止め、みんなでお参りできる靖国神社にするべきだ。そもそも、靖国神社への戦犯の合祀は、厚生省から言われてやったこと。その時の宮司は反対した」と話した。

 小沢氏が退席し、中村氏が最後にスピーチをした。「まず、国家機構の大改革だ。民主党の失敗は、財務省に立ち向かえなかったこと。政治は今、国民の生活が第一という、原点に戻らなければならない」。

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「「国家機構の大改革と脱原発で、野党はまとまる」 ~小沢一郎講演会 in 奈良県」への2件のフィードバック

  1. hotaka43 より:

     小沢さんなど保守リベラルな方々、もう少し左を見てくれませんか。共産党、社会党さんなど革新的考えの人々も、もう少し右に首を向けてみてくれませんか。だって原発動かして、利権と核兵器持てるようにして置きたい奴らは、極右皆で一致協力して驀進中ですよ。止めたい人達だって、協力しなきゃ止まりませんよ。
     更に総理大臣とは国家の代表として、国民の安全安心と財産の保全をする事は自明の理です。だとしたら自衛隊員も日本国民ですから、彼らの安全を守るのが第一義の主目的でなければいけない筈です。安倍首相はその為に集団的自衛権行使などという、危険を伴う事案を彼らに押し付けてはいけないのだと思います。
     日本を守る為に日夜活躍している彼らの生命を守らなくて、何が首相なんだ!?安倍首相始め自衛権行使に賛成の政治家、官僚は自衛隊を守る為に、止める方向に舵を切り直せって、小沢さん言って下さいよ。
     まぁ、この話は小沢氏もPKOなど国連指導のもと戦争にも行けるようにしたい派だから無理ですかね??

  2. 三人の一致結束は? より:

    民主党政権のはじまりは、小沢さんと菅さん、鳩山さんの「トロイカ」が結束し後進を率いていたらと記憶しています。今後野党再建の際ご一考ください。

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