「名護市民の心は、金で買えない」 ~Xバンド問題抱える京都府民に、稲嶺氏「大勝利」報告 2014.2.28

記事公開日:2014.2.28取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田・奥松)

 2014年2月28日、キャンパスプラザ京都で開かれた「沖縄にも京都にも 世界のどこにも基地はいらない 名護市長選勝利 2.28京都報告集会」で、名護市議会議員の仲村善幸氏が登壇。辺野古への米軍基地移設に反対する稲嶺進市長の再選となった、1月の名護市長選挙についてスピーチした。

 講演の場となった京都もまた、「米軍基地問題」を抱えている。早ければこの4月に、京丹後市に米軍Xバンドレーダー(高性能レーダー)基地建設が始まる。この集会で問題提起を行った大湾宗則氏は、「Xバンド基地建設がきっかけとなり、京都に米軍の一大軍事要塞が作られる可能性がある」との見方を示している。

 会場には、Xバンド基地建設に反対す京都府民の姿があり、彼らは、「反基地活動」では先輩格に当たる仲村氏の話に現状打開のヒントを求めようとした。

■全編動画

  • 基調提起 大湾宗則氏(京都沖縄県人会)
  • 報告 仲村善幸氏(名護市議会議員、ヘリ基地反対協事務局長)「名護市民はいかに闘ったか…辺野古の海を守るため、手をつなぎましょう…」

 仲村氏の講演に先立ち、大湾宗則氏(京都沖縄県人会)が演壇に立った。「名護市長選の投票日は1月19日で、稲嶺さんが勝利した。ずばり、敵は日米両政府と仲井眞沖縄県知事、さらには沖縄の自民党だった。その背後には、辺野古に米軍の新基地を作りたい財界の存在があった」。

 大湾氏は、今回の稲嶺氏の当選は、これら敵の圧力を名護市民が必死に跳ね除けた結果だ、と胸を張りつつも、「しかし、これで諦めるような『敵』ではない」とも語り、表情を引き締めた。

 反基地を掲げる稲嶺氏が当選したとはいえ、当選から2日後には、辺野古の埋め立て工事開始に向けて、事業会社選定の入札公告が行われているとのこと。大湾氏は、「9月には、名護の市議会選挙が行われる。稲嶺さんを支持する議員の数が減れば、議会の勢力が逆転する。そうなれば、稲嶺さんの提案はすべて否決され、市政は停滞する。その責任は市長が取らねばならない」と説明し、さらにまた、たとえ、その9月の市議選を上手く乗り切ったとしても、11月には沖縄県知事選が控えている、とも言及。

 「仲井眞さんは、もう出馬しないと思う。しかし、『代わり』は間違いなく出てくる。今度は金に糸目をつけずに、もの凄い攻め方をしてくると思う。それにも、勝たねばならない」。

 大湾氏は、名護市民の民意がいくら強くても、人口では約6万人に過ぎず、日本政府などの巨大な敵を相手にした「反基地」の市民運動を、彼らだけで維持していくのには限界がある、と訴えた。「われわれ京都の市民グループは、積極的に名護市民の反基地運動を支援していこうではないか。一方では、地元京都へのXバンドレーダー基地建設を許さないという、そういう戦い方をしよう」。

自ら墓穴を掘った自民党・石破氏

 大湾氏からの紹介を受けてマイクを握った仲村氏は、開口一番、「名護市長選での稲嶺さんの当選は、ある意味で歴的快挙だった。名護市民の頑張りに加え、(昨年末に、仲井眞沖縄県知事が辺野古の埋め立て承認を発表したことを受けて)全国規模で支援の声が上がったことがプラス材料だった」と振り返り、稲嶺氏と基地賛成派の末松文信候補との約4000票の差は、「近年まれに見る大差だった」と強調した。

 「稲嶺氏の勝因は、政府による圧力を、名護市民が跳ね除けたこと」と力を込めた仲村氏は、1月12日の、自民党の石破茂幹事長の発言を紹介した。「彼は『名護市長選は、名護市と沖縄北部の発展を考える選挙であり、基地の場所は政府が決める』と言っている。これに沖縄県民は大反発した。また、政府からは『たとえ仲井眞さんが知事を辞職しても、辺野古埋め立て承認の事実は覆らない』という声も上がった」。

 あざとかったのは、投票日の3日前に、基地建設推進を掲げる末松候補の応援で名護市入りした石破幹事長の動きだった、と仲村氏。市民らの前で、石破幹事長は「500億円の名護振興基金構想」をぶち上げたのである。

 「あれは、明らかに買収行為。それだけ負けたくない選挙だったのだろうが、『名護の市民は、札束で叩けば従う』とでも思ったところに、彼の甘さがあった。石破さんはあれで、自ら墓穴を掘ることになった」と力説した。

稲嶺政権スタートで市民の体質が変わった

 仲村氏は、名護市長選での稲嶺氏には、まったくぶれがなかったと話す。「稲嶺さんは『海にも陸にも、新たな基地を作ることを許さない』という4年前に示した公約を実践してきた人だ。今回の選挙戦でも『新しい基地はいらない』と訴え続けた」。

 仲村氏は、稲嶺氏の市長1期目では、沖縄県議会と41の市町村議会で「県内移設反対」の決議がなされる「オール沖縄」体制が作られ、2013年に、県内41市町村長らが、普天間基地の県内移設断念を求める「建白書」を政府に提出したことなどを強調。昨年8月、米映画監督のオリバー・ストーン氏が沖縄を訪れた折に稲嶺氏を応援したことも、今回の稲嶺氏再選のプラス材料になったと述べた。

 そして、1997年12月に米軍新基地建設の是非を問う「名護市民投票」が開始されて以来、名護市民の間に顕著だった、自分の考えをマスコミに語らない傾向が、稲嶺氏が市長になってから改善されたことに触れた。

 「基地建設に賛成する市民も、反対する市民も、(面が割れて)攻撃されることを恐れていたのだ。だが、稲嶺市政がスタートしてからは、自分の考えをきちんと表明する機運が市内に高まった」。今回の市長選では、これまで自民党以外の政党に投票した経験がない女性有権者に、末松氏が支持をお願いしたところ、その女性は「今回は考えさせてほしい」と返した事例があった、と報告した。

「オール沖縄」を再構築する

 名護市の現時点の状況については、「政府自民党は、名護市民や沖縄県民の気持ちなど無視するかのように、辺野古埋め立て工事のための事業者を募る入札公告を、1月に行っている。一方では、基地建設への妨害行為を防ぐために、米軍施設・区域への侵入を禁じる刑事特別法を適用する方針も固めた」などとした。

 その上で、仲村氏は「名護市長懇話会」に言及。これは、2月25日に発足したもので、稲嶺市長の反基地政策を支えていくことが狙いで、弁護士や学者らから成る。「現時点では詳細は明かせないが、基地建設を、名護市の権限でどこまで阻止できるのかなどについて、勉強する会だ」。

 一方では「オール沖縄」の再構築も行われるとのことで、仲村氏は「現在、20余りの市町村が、辺野古への移設に反対を表明している。明後日、再構築のための準備会を開く」とした。

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