「安全については第一義的には企業が責任を持たないといけない」~原子力規制委員会 田中俊一委員長 定例会見 2014.2.26

記事公開日:2014.2.26取材地: テキスト動画
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 2014年2月26日(水)15時30分より、東京・六本木の原子力規制庁で田中俊一・原子力規制委員会委員長による定例会見が行われた。東電が汚染水の漏洩などを繰り返すことについて、田中委員長は、「安全については第一義的には企業が責任を持たないといけない」と苦言を呈し、場合によっては「トップとの会合があるかもしれない」とほのめかした。

■全編動画

  • 日時 2014年2月26日(水)15:30~
  • 場所 原子力規制庁(東京都港区)

東電福島第一H6タンク汚染水あふれはINES評価レベルを付けない

 田中委員長は、今日の午前の委員会でも議題に上がった、「東京電力福島第一原発H6タンクエリアからのRO濃縮水の漏洩」について、INESの事象評価尺度に基づいたランク付けをしない考えを示した。

 その理由について、田中委員長は、IAEAに相談した際、「東電福島第一の場合、汚染水の漏洩などは次々と起こるので、敷地外の環境へ影響がある場合や、国際的にそれを周知しなければならないという場合を除き、逐一報告する必要はない」との旨のアドバイスを受けたためだと説明した。

安全については第一義的に企業~東電の企業体質に苦言

 田中委員長は、今回の溢水漏洩事故などの原因は、東電の「企業体質」にあるとの考えを示し、「安全については第一義的には企業が責任を持たないといけない」との見解を提示。「企業体質や安全文化は外から言って変わるものではないが、次々(事故が)起こるので、厳しく改善を求めていく」とした。

政府のエネルギー基本計画について

 新しいエネルギー基本計画の政府案が昨日まとまった。原発の再稼働に関して、「規制基準への適合が認められる場合は、その判断を尊重して再稼働を勧める」という表現になっていることについて、田中委員長は、「基準の適合性までは判断するが、稼働は立地地域、事業者、政府などの関係で決まるもの」という考えを述べた。

柏崎・刈羽の審査は粛々と行う

 現在、東京電力柏崎・刈羽の6,7号機は適合性審査が行われている。「審査は粛々と淡々と行うところもある」と述べた。

 しかし、福島第一の事故対応のまずさやウォーターロッドの曲がりなどの問題を起こしていることから、原子力発電所を動かすには「それに見合った力量と心構え、安全文化を持っていただかないと困る」と再び苦言を呈し、場合によってはトップとの会合が必要かもしれない、とほのめかした。

地域防災計画・避難計画へのかかわり

 原子力防災について、各自治体が、地域防災計画の中の「避難計画」の作成に苦労している。原子力規制委員会としては、今後、指針を作る所に留まるのか、あるいは関係省庁と連携を強化していくのか。

 田中委員長は「先ほど国会で同じ様な質問に答えてきた」と場を和ませながらも、「最終的に地域の住民が安心だと思えるような防災避難計画を作ることが最終目標だ」と述べ、「避難計画を作るプロセスの中で指針を出したが、それをどのように咀嚼して地域に合った防災避難計画にするか苦慮されているのはよく分かる」と地域の現状を気遣う発言もみられた。

 その上で、事故時にどのような状況が起こるのかという基礎データを規制庁から提供し、それに基づいて各地域がそれぞれ合理的な地域防災計画を作ってほしい、と考えを述べた。

JNES統合について

 2014年3月1日付けで、JNES(独立行政法人原子力安全基盤機構)が解散し、規制庁に統合される。これについて田中委員長は、「JNESが統合されることで、急激には変わらないが体制の強化や審査効率が良くなるなど期待している」と所感を述べ、JNES福井事務所が廃止されることで安全性に問題がないのか、という記者の質問に対しては、「規制庁の福井事務所があるので、そこで対応する」と回答した。

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「「安全については第一義的には企業が責任を持たないといけない」~原子力規制委員会 田中俊一委員長 定例会見」への1件のフィードバック

  1. kurahon より:

    田中委員長の個人的見解と前置きした上で「防災避難計画作成の前提としての放射線放出量の最大想定値は、規制基準が求めている許容最大値(目標値)であるセシウム137が100テラベクレル×1回/100万年×1基が現実的である。」との見解を示し、自治体にはその他の情報も提供して行きたいとの発言があった。福島事故のような大量の放出は想定すると却って避難に混乱をもたらし、多数の原発事故関連使者(凡そ1000人?)を出したことからもよくないとの判断である。
    単一事象単一故障のような比較的単純化した事故シーケンスの設定でのPSAは審査の中で試算されているが、事故の予期せぬ進展や同時多発事象による複数故障の同時発生等現実を考えると真に事故想定が甘いと言わざるを得ない。現行の不十分なPSAは無価値とは言えないが発生確率を信用してよいレベルには達していないと考える。結論として言いたいことは実際にあった福島事故レベル(放射能放出量や事故進展実態把握の欠如)を少なくとも想定し、それに対して実効性ある防災避難計画が必要である。住民が少なくとも安心できる計画であるための必要条件である。地震津波防災計画は最悪条件を重ねて被害を想定し防災対策を検討する状況にあるなかで、日本壊滅に到る恐れのある原発事故に対して、規制委員会の100万年に一回のセシウム137の100テラベクレル以下は余りに過少想定であると言わざるを得ない。

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