新年までカウントダウンに入った12月29日の夜、東京渋谷区・宮下公園で寝泊まりしていた野宿者が渋谷区の役所、警察署などによって強制的に排除された。突如として居場所を追われた野宿者らは、支援者らとともに行き場所を求め、深夜の渋谷を徘徊した。
(IWJ・原佑介)
新年までカウントダウンに入った12月29日の夜、東京渋谷区・宮下公園で寝泊まりしていた野宿者が渋谷区の役所、警察署などによって強制的に排除された。突如として居場所を追われた野宿者らは、支援者らとともに行き場所を求め、深夜の渋谷を徘徊した。
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宮下公園に渋谷区が警告にきたのは20時30分のことだ。渋谷区役所の土木清掃部の黒柳氏らは、野宿者と支援者ら約30名に対して、22時30分までの移動と、設置された白い大きなビニールテントの撤去などを命令した。これに応じない場合、都市公園法の6条に則って、強制排除を行う旨を警告した。都市公園法6条 「都市公園に公園施設以外の工作物その他の物件又は施設を設けて都市公園を占用しようとするときは、公園管理者の許可を受けなければならない」――許可の規定はあるが、退去の規定はない。
野宿者サイドと渋谷区の交渉は決裂した。渋谷区は一度、公園外へ撤退。野宿側らは「ここを出たら行くところがないんだ」「渋谷区民をナメるな!」などと、大きな声を上げて抗議し続けた。区役所とともに出動した約40~50名の警察は大きく移動せず、野宿者を取り囲んだまま時間は刻一刻と過ぎた。
「渋谷区越年越冬委員会(越冬実)」の男性に話をうかがった。「昨日からここで闘争している。昨日テントを設営して、警察とにらみ合いをした。野宿者は、普段は渋谷地下109などで生活しているホームレスの方々」と状況を説明。「渋谷だけでなく、いろんなところで、同じ問題が起こっている。オリンピック整備に向けて、行政は野宿者を排除したがっている」と語った。
テントの中には気分の優れない野宿者もいたという。中には前日の28日に、体調不良で意識を失い、転倒。頭蓋骨が折れたという。区役所には門前払いされ、病院には治療を受けてすぐ退院させられた。
22時20分、渋谷区役所は再びテント前に現れ、退去命令の最終警告を行い、「テントで休んでいる人に病院は用意する」と主張した。野宿者側は「何に基づく命令だ」「(建築物の)除却命令なのか」「命令の内容がわからない」などと矢継ぎ早に質問。渋谷区側はこれにいっさい答えず、強制排除が行われた。
テント内で休んでいた4、5名の野宿者と、10名ほどの支援者を除き、宮下公園にいた市民らは、警察官らによって強制排除され、公園外に追い出された。公園内に残った15名ほどの野宿者らも、「このままでは暴力的に強制排除されてしまう」とし、23時半過ぎには自主的に退去を決定。0時にはわずかばかりの毛布などの所持品を持ち、公園を後にした。
黒柳氏いわく、宮下公園は1月3日まで、一般通行人含めて完全閉鎖にするという。公園内の残った荷物は、翌30日の10時に渡すとした。
行き場を失った野宿者らは、近くの広場に簡易テントを張り、その日の夜を過ごした。警告から退去期限まで、わずか2時間。そのような短時間では退去などできない。深夜で電車もない。ましてや、「帰れ」と言われても帰る場所などない。