「追い込まれても、生きられる道があるような社会を」 ~反貧困フェスタ2013 in えひめ ~いま、隠されている貧困をほじくりだそう~ 2013.8.10

記事公開日:2013.8.10取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富山/奥松)

 2013年8月10日(土)13時より、愛媛県松山市の愛媛大学・城北キャンパスにおいて「反貧困フェスタ2013 in えひめ ~いま、隠されている貧困をほじくりだそう~」が行われた。

 2008年から始まった、貧困問題を考えるイベント「反貧困フェスタ」は、豊かに見える現代社会で可視化されない貧困があることを訴え、今、何が起こっているのか考えようと呼びかけている。この日の座談会では、「社会の課題と私たち自身の課題」をテーマに、湯浅誠氏や香山リカ氏らが話し合った。

■全編動画

  • 開会挨拶 宇都宮健児氏(反貧困ネットワーク代表、元日弁連会長、弁護士)
  • 座談会「社会の課題と私たち自身の課題」
    湯浅誠氏(反貧困ネットワーク事務局長)/香山リカ氏(精神科医)/中下大樹氏(真宗大谷派僧侶)/清水康之氏(自殺対策支援センター・ライフリンク代表)
  • 15時からの分科会は中継には含まれません。

ますます拡大する貧困。過去最悪の貧困率を示す統計

 はじめに、開会の挨拶を述べた反貧困ネットワーク代表で元日弁連会長の宇都宮健児氏は、貧困率が過去最悪の16パーセントになったことを統計データを示しながら説明した。また、生活保護受給者に対するバッシング、生活保護引き下げの方針を打ち出す安倍政権を問題視し、生活保護の改悪によって、社会保障全体が改悪されてしまう可能性を危惧した。宇都宮氏は「こういった状況に対して、私たちが黙ったままでよいのだろうか。一人ひとりが繋がって、前を向いて動けば、この社会は良い方向へ変えられると信じている」と話した。

年間3万人にのぼる自殺者。自殺対策の取り組み

 続く座談会は、「社会の課題と私たち自身の課題」をテーマに進行した。反貧困ネットワーク事務局長の湯浅誠氏は、長期的な課題として、公民館のように、さまざまな立場の人が集まって話し合うことができる、合意形成の場が減少傾向にあることを危惧した。「民主主義の活性化のためには、人の意見を聞くことが必要。意見を言うのは簡単だが、人の意見を聞くのは難しい。大前提として、人と話すためには時間と空間が必要であり、いろいろな人が集まって、いかに合意を形成していくか、という土壌作りが課題としてある」。

 自殺対策支援センター・ライフリンク代表の清水康之氏は、2001年に親を自殺でなくした子どもたちのドキュメンタリーを作ったことをきっかけにNHKを辞職。自殺問題や、生きることへの支援に取り組むため、ライフリンクを立ち上げた経緯を語った。清水氏は「生きることを望みながら、亡くなっていった人たちを、社会は見捨ててきた。そういう人たちを『弱かった、逃げた』などと切り捨てる社会に、自分は生きていたくない。追い込まれる人が減るように、また、追い込まれても生きられる道があるような社会を考えたい」と述べた。真宗大谷派僧侶の中下大樹氏は、自殺者や孤立死の問題、自身の路上支援活動について語った。

社会の課題、私たちの課題を解決するために必要なこと

 座談会の中では、20代の自殺者が増加していることについて話が及び、その原因のひとつとして、雇用状況の厳しさが挙げられた。清水氏は「以前は、昨日より今日の方が前に進んでいる感覚が持てたが、現在は、社会にしがみついてるだけでは、生きていけない時代だ。社会の中で幸福感が得られない状況がある」と指摘した。

 精神科医の香山リカ氏は、心の病気の背景には、社会の変化が関係している点を指摘し、「現政権の成長戦略を見ても、貧困対策など、巨大な利益を生む要素がないものは、切り捨てられてきた。貧困対策、自殺対策が急務の問題であり、必要だということを、どう訴えかけていくかを考えなくてはいけない」と話した。

 湯浅氏は、問題を伝えるための媒体の重要性を説き、「言葉の伝え方、具体的な数字を、関心のない人にどれだけ伝えられるか。そこが鍵である」とした。清水氏は「政府の政策には、合理的ではない根性論が含まれている。問題解決の原動力になるのは、貧困の実態解明にある」とした。

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