「今、子どもたちを守れないのなら、私は私自身を許せない」 ~第3回 さようなら原発1000人集会(伊丹市)小出裕章氏講演 2013.10.6

記事公開日:2013.10.6取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・阿部玲/奥松)

 「ゆくゆくは地球全部が汚れてしまう。それが、原発事故というもの」──。

 2013年10月6日、兵庫県伊丹市のいたみホールで、「福島事故は終わっていない 原発はもう動かすな! 第3回さようなら原発1000人集会」が開かれ、京大原子炉実験所の小出裕章氏が講演した。福島県いわき市出身の講談師、神田香織氏や、全国を街宣キャラバン中の山本太郎参議院議員もゲストとして参加した。

■ハイライト

  • 講師 小出裕章氏(京都大学原子炉実験所)
  • ゲスト 山本太郎参議院議員、神田香織氏(講談師)
  • 主催 第3回さようなら原発1000人集会実行委員会

『コントロールしている』は大嘘

 冒頭で小出氏は、安倍首相のオリンピック招致プレゼンでの発言を引き合いに出し、「福島第一原発を完全にコントロールしている、などと言うのは大嘘」と切り捨てた。「次から次へと事故が起き、たくさんの放射能が漏れている。さらにたくさんの被曝をしなければ、収束できない。現在も、何十万人という人が故郷を追われ、流浪化している」と現実を語った。

 そして、「溶けた炉心がどこにあるか、わからない。火力発電所と違い、現場に行って確かめることすらできない。2年半、ただただ、ひたすら水を入れて原子炉を冷やしただけ。汚染水があふれていくのは当たり前。下請けの労働者は10次にも及び、条件も劣悪だ。被曝限度を超えたら作業ができないため、労働者が自ら『被曝していない』と偽ることも出てくる。これからも100年、200年、事故は収束しないだろう」と厳しい見通しを示した。

差し迫った危機

 当面の危機について、小出氏は「4号機の使用済み燃料プールには、広島原爆の1万4000発分の放射性物質が、かろうじて眠っている。東京電力は、これを少しでも危険のない所へ移そうとしている。そのために天井を撤去、むき出しにし、クレーン作業のための建屋を新たに建設している。具体的には、水中でキャスクと呼ばれる鋼鉄製の入れ物に、約20体の使用済み燃料棒を入れ(重さ100トン)、それをクレーンで運んでいく作業だ。11月の中頃にはスタートするというが、全部で1331体の燃料棒を一度の失敗もなく格納しなくてはいけない。失敗すれば、また放射能が飛び出してくる」と、薄氷を踏むような作業であることを伝えた。

 そして、原子炉の構造を「圧力容器の材質は瀬戸物。台所のガスコンロの上では溶けないが、2800度を超えると溶けてしまう」など、写真や図を用いてわかりやすく解説。さらに、爆発によって放射性物質がどのように拡散したかを説明した。「大気中だけで、広島原爆168発分。セシウム137の汚染は国内だけでなく世界へ広がった。偏西風に乗って太平洋を横断し、米国の西海岸にも到達した。北海道や西日本の人が『海外に逃げよう』と言う話をよく聞くが、ゆくゆくは地球全部が汚れてしまう。それが、原発事故というもの」と、事態の深刻さを語った。

最大の犯罪者は誰か

 では、政府の対応はどうか。小出氏は「事故前は『年間の被曝量は1ミリシーベルト以下にする』『4万ベクレル/平方メートル以上のものを、放射性管理区域以外に持ち出してはいけない』などの法律があったのに、今は広範囲にわたって放射性管理区域を超える汚染がある。にもかかわらず、『20ミリシーベルトまではよい』などと勝手に法律を破っている」と、法治国家であるはずの日本に疑問を呈し、「福島原発事故の、最大の犯罪者は政府」と断じた。

 さらに、「2005年のBEIR-Ⅶには『被曝のリスクは低線量にいたるまで直線的に存在し続け、しきい値はない』と書いてあり、これが学問の到達点である。原発推進派と言われるICRP-2007勧告でさえ、『約100ミリシーベルト以下の線量においては不確実性が伴うものの、がんの場合、疫学研究および実験的研究が放射線リスクの証拠を提供している。関係する臓器および組織の被曝量に比例して増加すると仮定するのが、科学的に妥当である』と書いてあるのに、日本政府は『低い被曝であれば安全』と流布している。『100ミリシーベルト以下は安全』などという学者は、刑務所にいれるべき」と厳しく批判した。

 次に、アメリカの研究者ゴフマンの資料をもとに、年齢別の被曝の影響について解説した。「放射線がん死の年齢依存性を、1万人・シーベルト(1シーベルトの被曝をした人を1万人集めた場合の総量。1ミリシーベルトの被曝をした人を1000万人集めたのと同義)という値を用いてグラフ化すると、全年齢の平均では3731人が死者数となる。これは30代の平均とほぼ一緒で、年齢が高くなると右肩下がりになり、50歳以上ではほとんど影響がなくなる。逆に0歳の子供たちは、平均的な危険度の4倍、5倍という数字になる」。

大人は誰ひとり、無罪ではない

 「原発をここまで増やしてしまったことに対して、日本人は誰ひとり、無罪ではない。しかし、原子力を選んだ責任のない子どもたちが、もっとも被曝に敏感なのだ」と述べ、子どもたちを被害から守らなければいけない、と強調。そして、「今、政府がやっていることは、原発の再稼働、海外輸出。戦争のとき、大多数の日本人は戦争に協力し、反対できなかった。今は、その時の状況と似ている。原発について、多くの日本人は『だまされていた』と思うかもしれない。しかし、だまされたと言って無罪になれば、再びだまされる。だまされたことを、深刻に受け止めなければならない」と、大人の責任を問うた。

 最後に、小出氏は「こんなこと(原発)を許してきたのに、今、子どもたちを守れないのなら、私は私自身を許せない」と締めくくり、会場からは大きな拍手がわき起こった。

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