福島第一原発事故直後から現在に至るまで、避難を続ける住民からのこうした声は後を絶たない。
7月31日、放射線量値が高いために避難をしている住民らは、避難を今後も続けるための政府による支援と、除染の延長を求め、NPO法人FoE Japanと福島老朽原発を考える会主催のもと、緊急報告会と政府交渉を行った。報告会では、原発事故後、自宅が避難対象区域に指定された人々が参加し、現状を報告。FoE Japanの理事で主催者の一人である満田夏花氏は、「避難対象区域に対する政府の賠償の打ち切りは、実質的に、避難を続けたいという住民の意思を無視する」ものであるとして、避難を継続するための政府支援を訴えた。
<第一部> 緊急報告会(14:00~16:00)
- 避難解除をめぐる情勢 満田夏花氏(FoE Japan)
- 南相馬の状況 大山弘一氏(南相馬市議会議員)、吉田邦博氏(安心安全プロジェクト)
- 伊達市小国地区の状況-測定結果より 青木一政氏(フクロウの会)
- 田村市都路地区からの避難者として 浅田正文氏、浅田眞理子氏
- 飯舘村の状況 菅野哲氏(飯舘村民)
- 避難解除と賠償問題 福田健治氏(弁護士)
<第二部> 政府交渉(16:00~18:00)
- 交渉相手先 : 原子力災害対策本部 生活支援チーム、復興庁、文部科学省
※政府に事前に提出している質問書はこちら(PDF)から
- 避難解除の基準/住民との協議/グローバー勧告への対応
- 避難者への賠償の打ち切り/帰還の際の新規賠償について
- 個人線量計の配布について
また、政府交渉では、再除染を行わずに「新型の線量計を配布するので自己管理を」と説明する政府に対し、対象区域の住民で報告会に参加した一人の男性は、「小さい子どもに『おじちゃんこれ見て』と言われ、その子の握っているものを見たらダンゴ虫。そのダンゴ虫の線量を測ったら5万ベクレルだった」と声を震わせながら報告。現在でも、状況によっては高い放射線量値が記録されていることを訴え、地域の再除染を求めた。
政府は原発事故後、避難対象区域の除染を行ったが、国が除染を行うにあたり目標にした、空気中の放射線量毎時0.23マイクロシーベルト(年1ミリシーベルト)を下回らなかった。これに対し、政府は2013年6月23日、説明会を開き、新型の線量計を配布すると説明し、住民からの再除染の要望には応じない姿勢をみせた。
さらに、政府は当初、警戒区域や計画的避難区域の外に存在する、放射線量の高い地点(ホットスポット)の住民対して、避難支援を行っていた。しかし、現在では避難者の早期帰還を促すような政策を採っている。その対象区域に指定されていた福島県の伊達市と川内村の計129世帯を、昨年12月、政府は対象区域から解除し、3ヶ月後には賠償も打ち切った。
ところが、今年の6月時点でも、伊達市の住民の約6割は避難を続けており、対象区域の住民からは、現時点での帰宅には懸念があるため、避難を続けたい住民が多いというのが現状だ。住民からは、避難を続けることについて、政府の支援を求める声が上がっている。
また、政府は避難支援の一つである賠償金の支払いにあたって、払う対象の基準として、地域で区切るのではなく、政府が選んだ世帯ごとに賠償金を支払った。今回参加した男性の一人は、「この対応は、当時、対象地区在住の住民からは『地域のコミュニティーが壊れる』と懸念される声も多く、世帯ごとではなく、地域で区切る支払いをするよう政府に求めたが、政府は要望に応じなかった」と述べ、ここでも避難者である住民の声を聞くよう求めた。