2013年7月1日(月)11時より、東京都港区のANAインターコンチネンタルホテルで「山田正彦 元農水大臣・参議院選挙出馬表明および苫米地英人『反TPP本』出版発表会見」が行われた。山田正彦氏はTPPについて、カトラー米国通商代表部代表補が「聖域はありえない」と発言したことを明かし、「今回のTPP交渉会合では、遺伝子組換え食品の表示、原産地表示の禁止が決められ、次回はインターネットの報道規制を話し合う。参院選では、まったくTPPが争点になっていない。この実態を全国民に知ってもらいたい」と、出馬の決意を述べた。
最初に、山田正彦氏が「今、国民の間では『TPPは農業と経済の問題で、輸出も増え、雇用も増え、安いものが入ってきて生活が楽になる』と信じられている。アメリカのクリントン前大統領は、NAFTA(北米自由貿易協定。1992年締結)を結ぶ時、同じように話して、アメリカ国民の6割が賛成した。しかし、今、78%のアメリカ国民がTPPに反対している。なぜなら、NAFTAを経験し、農産物では800万トンのトウモロコシが遺伝子組換え作物に変わり、500万人の雇用が失われ、給料もどんどん下がり、4万2000の工場が海外に流出、25%の工業が空洞化してしまったからだ」と話した。
山田氏は「食の安全、医療制度など、いろいろな制度がアメリカ式に変わる。日本が、アメリカの属州になるに等しい。日本の将来、子どもたちの未来を思って、命を落としてでも、TPP参加を、交渉そのものを阻止する。今回、みどりの風から出馬し、全国を回ってTPPの問題を訴えていきたい」と力を込めた。
次に、著書『TPPが民主主義を破壊する!』(サイゾー刊)が発売される苫米地英人氏が、「今日は出版発表というより、山田候補の応援の意味で同席した」と述べ、独自に入手したTPPの原文資料を掲げて見せた。「ここには、TPP条約の20項目の原型条項が書かれている。これは一字一句変えてはならないものだ。そのあとに数項目が、参加各国によって付け加えられた。TPPでは、限られた交渉官と選ばれた民間人だけが密室で協議し、その内容には4年間の守秘義務が生じる。この条文は、その4年間がすでに経過したもので、ある国の担当官が公表した」。
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「驚くことに、これは国会議員でも、4年間は内容を知ることができない。あくまでも、選ばれた交渉官と民間人に限られる。たとえば、11章に、ガバメント・プロケアメント(公共事業政府到達)『建設事業、またはその他のすべての政府事業』とある。つまり、政府の事業すべてが自由化の対象になり、かつ、それらすべての公共入札をインターネットでできるようにしなければならない。そのためには、日本の国内法を、TPPのために改正する必要がある。そして、これは交渉ではなく、Agreement、条約、合意なのである」。
苫米地氏は「オリンピック競技の柔道やスキージャンプなどで、オリンピック委員同士が、密室で勝手にルールを変更し、競技に適用する構造に似ている。同じように、TPPは国の政治に適用する。それも、他国の民間人によって、自国の法律が決められてしまうのだ。たとえば、アメリカでは、遺伝子組換え食品を守るためのモンサント法が成立した。すると、日本では遺伝子組換え食品の表示はできなくなる」と語った。
それを受けて山田氏が「前回、第17回ペルー交渉会合の際、食品表示について話し合われた。アメリカが『遺伝子組換え表示、原産地表示をしてはならない』と提案、一部の国は反対しているが、アメリカは押し切るだろう。すでに韓国では、米韓FTAで遺伝子組換え食品の表示はできなくなっている」と説明し、「地産地消の日本の学校給食も、将来、非関税障壁だとして、ISD条項で訴えられるだろう。食料自給率が減り、食の安全もなくなる。将来、米国産か、中国産か、国内産かわからない食品を、子どもたちに食べさせなくてはならなくなる」と危惧した。
苫米地氏は「TPPは、わが国の、乗っ取りに等しい。この20の条文は綿密に計算されていて、発効当初の4カ国のために作ったとは思えない。将来的に、日本を引き込むことを前提にしたのではないか。それほど、うまくできている」と条文の印象を語った。その上で、「アメリカ議会では143名の国会議員が、TPP反対の署名をしている」と述べた。
山田氏も「アメリカの自動車業界はTPPに反対しているし、アメリカ国内でもうまく進んでいない。USTR(米国通商代表部)のカトラー代表補は、米国議会を90日で納得させるのは難しいとしており、日本の交渉参加は、8月下旬までずれ込むだろう、と言われている。日本で報道されている内容と、実情は異なる」と続けた。
苫米地氏は「今の参院選で、TPPのことはまったく問われていない。しかし、日本の高齢者が持っている1500兆円の個人資産が狙われ、国民皆保険制度などが崩壊する」と警鐘を鳴らし、山田氏は「アメリカでは、タミフル1本、6万2000円だ。金持ちでないと、医療も介護も受けられなくなる」と話した。
さらに、山田氏は「次のTPP交渉会合で話し合うのは、インターネットの報道規制だ。自由に情報を拡散できなくなる」とし、「マスコミは、TPPをよく理解して、その危険性をもっと広めてほしい」と訴えた。
質疑応答で、IWJ佐々木記者が「安倍総理は、TPPについて『議論は十分尽くした。公開説明会も行なわない』と言う。報道量も減っており、世論はあきらめの空気に満ちている。TPPから下りることはできるのか。できるなら、どのようなタイミングで可能なのか」と質問した。
苫米地氏は「そもそも、議論などしていない。議論というのは、国民に内容を明かした上で、国会議員が国会で討論することだ。何もしていないのに『議論は終わった。これで決まった』というのは非常にずるいやり方で、国民への裏切りである」と断じた。
その上で、「TPPを参院選の争点にすること。そして、国会で議論した結果がノーとなれば、堂々と下りればいい。また、アメリカでも日本でも、大多数の国民がTPPで不利益を被ることを知って、ノーと声を上げれば、やめるしかないだろう。そのためにも、ディスカッションが重要だ」と答えた。
最後に山田氏が「パブリックシチズン国際貿易監視部門のローリー・ワラック氏とジェーン・ケルシー氏は、『アメリカは10月に署名させるというが、少なくとも、あと2〜3年かかるだろう』と言った。ニュージーランドでは、TPPに反対する国民が65%に達した。TPPとの闘いはこれからだ」と述べた。
そして、「カトラー米国通商代表補は『聖域はありえない』と言明した。韓国も来年からコメの関税が撤廃される。食料自給ができない国は、国ではない。食料自給は防衛力と同じ。私は、TPPの真実を訴えて、選挙選を戦う」と静かに決意を語った。
今日の苫米地博士は控え目。世界は世銀の思いのままぁ~。苫米地ワールドへようこそ。「サイゾー」のオーナー、リベートの達人、俗称とんでも学者の博識を堪能してください。