2013年6月9日(日)13時から、長野県松本市の松本文化会館で小出裕章氏講演会「原発事故後の日本を生きる ~未来を担う子どもたちのために今できること」が行われた。
小出裕章氏は、事故後の福島の状況や、原発とそれを推進してきた社会の問題点を解説し、「未来の子どもたちを守るために考え、行動する責任が,これまで原発を容認してきたわれわれにはある」とした。
(IWJテキストスタッフ・富山/奥松)
2013年6月9日(日)13時から、長野県松本市の松本文化会館で小出裕章氏講演会「原発事故後の日本を生きる ~未来を担う子どもたちのために今できること」が行われた。
小出裕章氏は、事故後の福島の状況や、原発とそれを推進してきた社会の問題点を解説し、「未来の子どもたちを守るために考え、行動する責任が,これまで原発を容認してきたわれわれにはある」とした。
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はじめに小出氏は、国内の原発が都市部で建設できない理由を、ウランを燃料とする点と、発電によって核分裂生成物が生まれ、放射性物質が発生することにある、とした。また、福島第一原発の発災当時、一切の電源を失うブラックアウト現象に見舞われ、それによって、溶けた炉心がどこにあるのかもわからないまま、原子炉を冷やすしかない状況が、今なお続いていることを説明した。
続けて、福島の原発事故によって、1、2、3号機から大気中にばら撒かれたセシウム137は、広島原発168発分に及ぶことを説明し、「この数字は、原発安全神話をばら撒くことに加担していた、政府の発表である。本当は、この数字の2~3倍はあるだろう」と指摘した。また、事故後の放射能汚染が、風に乗ってどのように流れたのかを図説し、東北、関東が放射線管理区域に指定しなければいけないほど、汚染されている現状を説明した。その上で、日本が法治国家であるかどうかに疑問を呈する小出氏は「被曝に関する法律はたくさんあるが、年間被曝限度である1ミリシーベルトも、放射線管理区域の規定も、国はすべて無視している。国は、自ら定めた法律を反故にし、人々を見捨てている」と語った。
次に、被曝リスクは、低線量に至るまで閾(しきい)値はないと明言する米国の科学アカデミーの報告を紹介した。土地を失い、被曝を強いられ、避難によって生活を崩壊させられた被災者に対して、「100mSvまで安全」と主張する国の姿勢を問題視し、「こんな悲惨な状況を、どうやって金銭勘定できるのだろうか。せめて、金勘定できるものは賠償させないといけない。それにもかかわらず、国民の税金で、国は東電を支えている。日本自体が倒産しても賄いきれない状況が起きている」と憤った。また、0歳児は大人に比べて4~5倍も被曝に敏感である点を解説し、「子どもたちに責任はないが、原子力の推進を許してきた、われわれ大人たちには責任がある。子どもたちを守るために、さまざまな方策を講じていかなければいけない」と述べた。
後半には、日本が世界一の地震大国であるにもかかわらず、58基もの原子力発電所が立地している問題、それを過疎地に押し付けている構造を解説し、「人間が防ごうとしても、到底防ぐことができないものが地震である。また、機械は人間が操作するものであり、事故から無縁な機械はない。そして、核分裂生成物を無力化する方法はない。原発が安全だとは、到底言うことはできない」と断じた。
そして、原発がなくても電力供給に支障がない根拠を示し、「かつての大本営発表のように、国家は原子力を推進し、社会もグルになって、それに加担してきた。贅沢な暮らしに私は反対だが、贅沢な暮らしを維持したままでも廃絶できる原発と、どのように向き合っていくのか。どうすることが、私たちの幸せにつながるのか。ゆっくり考えていくことが、私たちの責任である」と述べた。