2024年4月24日午後12時30分より、東京都千代田区の衆議院第2議員会館にて、井戸川裁判(福島被ばく訴訟)を支える会の主催により、第28回口頭弁論後の報告集会が開催され、原告の井戸川克隆氏(前双葉町長)が登壇した。
支える会共同代表の木村結氏は、「井戸川さんの訴訟の他にも、原発の被害者訴訟は30件近くある」と述べた。
その上で木村氏は、それらの訴訟の中で、原告の意見陳述に対する、東電側の代理人弁護士の心無い発言について、以下のように明らかにした。
「自分が、3.11の前はどういう暮らしをしていて、その3.11で自分の暮らしがどうなったかという話をすると、東電の代理人は、その人達に対して、『そんなにお金が欲しいのか?』とか『あなたは今まで、いくらいくらもらいましたよね?』と、もう十数年経っている積算の金額を言って、『まだそれでも、お金が欲しいのですか?』とかですね。
それから、『あなたは離婚したって言うけれども、事故の前から、その要因はあなたの家族にあったんじゃないですか?』とか。
子供が、移転した学校で、すごいいじめに遭ったという話を、実際にその子が原告に立って、意見陳述をしている時に、終わってから、『そのいじめの原因は、いじめる人だけじゃないですよね?』と、『いじめられる側にも原因はありますよね?』みたいなことを言ったり。
本当に、原告として、東電や国を相手取って立ち上がった人達に対して、ものすごく、これでもかという仕打ちをする。
もう本当に、許されないようなことをしているんですね。
法廷の中のことというのは、ほとんど外では語られませんので、もし皆さん、他の裁判を傍聴された時に、そういう言動があったら、ぜひですね、どこのどの代理人が、どういうことを言ったのか、ちょっとメモをして、私に送っていただきたいんです。
というのは、私は、30数年、東京電力を相手に、東京電力の株主総会で、脱原発のための提案をずっとしているんですね。
今回、6月26日に株主総会が開かれますけれども、その時にも、今度は、東電が言っている『コンプライアンス』、『皆さんに寄り添う』とか、『正しく清く』みたいな、東電が皆さんと約束する話の中にまったく含まれないような、ひどい言動を、東電の代理人がしているっていうのをですね、やっぱり、『東京電力として許してはいけない』という提案を、するつもりなんです。
そのネタを集めていますので、ぜひぜひ、言っていただきたいんですね。
今日の井戸川さんの様子を見ていても、自分が双葉町の町長だった時に、東電がどういう説明をしたか、どういう約束をしたか、そこに常に立ち戻って、その約束を果たしてもらうという。
それから、3.11の事故の時に、どういうふうに動いたかという、そこが、やはり井戸川さんの原点になっていると思うんです。
やはり、原点と原則を、私達は忘れずに、あの東電や国がなし崩しに、今、いろいろなことをしていますけれども、そこをやはり、なし崩しにすることを許さずに、常に原点に立ち戻って原則を貫くという、そういうことが大事かなというふうに思います」。
会場では、井戸川氏自らが作成した準備書面の要旨が、資料として配布された。
▲原告第34準備書面の要旨(PDF)
▲原告第35準備書面の要旨(PDF)
▲原告第36準備書面その1要旨(PDF)
井戸川氏は、この準備書面にもとづき、東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故が、いかにして起きたのか、また、東電が怠った事故防止のための努力、事故前の約束と事故後の約束違反、そして、避難解除された現場の惨状、除染のでたらめさなどについて、説明を行った。
また、井戸川氏は、東京電力のウソや詐欺的な行為を、「違背」「悪業」と指弾した。
東京電力が「止める」「冷やす」「閉じ込める」の公約を守らなかったことは、「違背」であり、そして、これらの公約の監視人であるはずの政府、経済産業省の怠惰と無責任が、原発事故を引き起こした。
このことの国民に対する責任は、民間企業である東京電力よりも、規制義務のある経済産業省の方が何倍も重く、単なる不作為とか職責放棄ということでは終わらないものであり、司法罰にもとづいて裁かれなければならない。
また、「悪業」について、井戸川氏は次のように語った。
「憲法第18条に、『何人もいかなる奴隷的拘束を受けない。又は、犯罪による処罰の場合を除いて、その意に反する苦役に服させられない』と定められている。
被告等の優越的地位を悪用し、東日本大震災に伴う原発事故発生以来の悪業は、被害者排除で、加害者らが、加害者らの都合と権益保全のための理由を優先させ、原告ら被害者の口を封じていることは、原発事故の責任を意図的に隠している。
被告等の、原発事故後の被災者への対応は、『当て逃げ状態』にして、原告に自助を迫っている。(中略)
国は、何かあると『自助』とか言う。その次に『共助』、『公助』と、順番をつけていますけど、これは、国民が騙されているんですよ。
国民の口から言う(べき)ことは、『公助』だと。『公助が一番先に来い』と。『そして、共助が来て、自助が最後だ』と。こういうふうに、皆さん、認識し直してくださいね。
国が『自助、共助、公助』だからって、それにあわせて、みんなも『自助、共助、公助』だなんて言っちゃダメですよ。これは騙しですから。
能登半島で一番先に駆けつけたのは、誰ですか? 国民でしょう。国民のボランティアをよしとしているわけですよ、国は。霞が関は。
彼ら(ボランティア)に汗を流させて、ケガをさせたり、弁当から何から、全部負担させて、汗を流させて、それで、頃合いを見て、どうのこうのって言ってる。
逆でしょう?『公助』ですよ。
今回、能登半島で一番みじめだったのは、『公助』されない、されていない住民達だったでしょう? ズタズタにされておきながら、そこに置き続けられたわけですよ。で、自分の責任の中で生き続けなければならない環境に追い込まれていたわけですよ。
『自助』というのが先に来るから、こうなっちゃったんですね」。
次回、第29回の口頭弁論は、7月17日(水)、10時30分より、東京地方裁判所103号法廷にて行われる予定である。
報告集会の詳細については、全編動画を御覧いただきたい。