2023年4月30日、午後1時30分より、東京都練馬区の武蔵大学にて、「市民とともに歩み自立したNHK会長を求める会」の主催により、「『市民とともに歩み自立したNHK会長を求める会』記録集 出版記念シンポジウム『公共放送NHKはどうあるべきか』」が開催された。
- 『公共放送NHKはどうあるべきか~前川喜平さんを会長に』(三一書房、5月刊行予定)
シンポジウムは、会の活動報告、講演、シンポジウム「公共放送NHKはどうあるべきか」の3部構成で行われ、講演の部では、元文部科学事務次官の前川喜平氏と、ノンフィクション作家の森功氏が登壇した。
前川氏は、2023年3月2日に立憲民主党の小西洋之参議院議員が公開した、安倍晋三政権下での放送法をめぐる一連の文書について、「今回の総務省文書から見えてくるもの」というテーマで講演を行ない、以下のように語った。
「元NHK会長『勝手』候補の前川でございます。(笑)
総務省の文書について、これは小西洋之さんという方が、参議院の予算委員会でオープンにされたわけですね。小西さんはもともと総務省、旧郵政の官僚だった方ですから、その小西さんの、おそらく、元後輩か元同僚にあたるような方々が、何とか、このおかしな放送行政の歪みを世の中に伝えて、国会でも追及してほしいと、そういう思いで文書を託したんだろうと思うんですね。
これは、私は、もう6年前になりますけども、加計学園問題と同じことが起きたわけです。加計学園問題というのは、安倍さんが、勝手に、自分のオトモダチのために、本来作れない獣医学部をつくらせてやるという『無理強い』を文部科学省にさせたという話で、文部科学省の中にも『これはおかしい』というのは、私だけではなくて、そういう職員はたくさんいたんです。
というよりも、これがおかしいと思わない人間はいなかったんです。ですから、どこから文書が漏れてもおかしくない状態だったわけです。おそらく、あの時は、私が想像するに、3人か4人の文部科学省の職員が、加計学園問題の文書をリークしましたね。
今回は、おそらくどなたかおひとりだろうと思いますけれども、非常にまとまった文書を、総務省から小西さんに手渡したと。
私は、こういう行為は民主主義社会では正当な行為だと思います。これを政府側の人たちは『守秘義務違反』だというようなことで、『こういう職員は国家公務員法に照らして、懲戒処分にすべきだ』と、こんなことを言う人が必ず出てきますけれども、そんなことはない。民主主義のために奉仕しているわけですから。
これはむしろ、『行政の透明性』、『政治の透明性』を高めるという行為であって、こういう行為を決して処罰すべきではないと思います。
この手の文書というのは、日々、各省庁で毎日毎日作られています。(中略)
これはなぜやっているかというと、何を言われたかを決して忘れないように記録する。そして、それを組織内で共有して、それを踏まえて次の対処を考えていく。こういうことが必要になるからであって、そこに書いてあることは、できる限り、正確に書くということが大事であってですね、できる限り正確な情報を共有するために文書をつくっているわけですから、そこに捏造があるわけがないわけですね」
前川氏によると、前川氏自身が官僚として働いていた当時は、まだ『官僚主導』であり、官僚の方で大事なことは決めて、それを大臣に伝えれば、大概の場合、それで終わりだった。しかし、『政治主導』となり、その裏返しとして、政治家の発言を逐一記録するということが広がっていったとのことである。
前川氏は、さらに次のように続けた。
「総務省文書の問題というのは、ちゃんと追及しなきゃいけない。この総務省文書の問題点は何かといえば、これは明らかに政治が放送の自由に介入しようとしたということ。(中略)
放送法というのは、『放送の自由』を守るための法律なのに、政府側・政権側の人たちは、『放送を取り締まる』ための法律だと、こういうふうに考える人たちがどんどん増えてきている。決して、『放送を取り締まる』ための法律ではない。(中略)
小西氏が、ちょっと『サル』って言っただけでですね、サルの思いのほうにばかり報道がいくというのは、どう考えてもおかしいわけであって、やはり、彼が追及した総務省文書の持っている問題というのを、ちゃんと追及しなきゃいけない」
- 立民 小西議員「憲法審査会 毎週開催はサルがやることで蛮族」(NHK、2023年3月29日)
森功氏の講演、そしてパネルディスカッションなどシンポジウムの詳細については、ぜひ全編動画をご視聴いただきたい。