森友学園問題で財務省近畿財務局の元職員・赤木俊夫さんが、決裁文書改竄を苦に自殺した事件で、赤木さんの妻・雅子さんが、改竄を指示した当時の財務省理財局長・佐川宣寿氏に損害賠償を求めた訴訟の口頭弁論が、2022年2月9日、大阪地裁で開かれ、弁論後に雅子さん側弁護士による記者会見が、大阪市内で行われた。
雅子さんは国に約1億円、佐川氏に550万円の賠償を求めて提訴していたが、2021年12月、国が賠償責任を認め約1億円の請求を受け入れる「認諾」の手続きを取って訴訟を終結させたため、佐川氏との訴訟のみが続いている。
佐川氏側は「公務員は個人の責任を負わない」との最高裁判例にもとづいた主張で、訴訟終結を求めている。
これに対して、会見で生越照幸弁護士は、「こちらとしては佐川さんに対する、公務員が個人責任を負うということに関する鑑定意見書の提出を、5月18日に予定していて、とある大学の教授に執筆を依頼している状態だ」と述べた。
また、松丸正弁護士は、「これからの焦点は、佐川個人の責任が生ずるのかどうか、それに尽きてくる」と述べ、「個人責任があるかどうかは、本来は、公務員として萎縮するような違法行為があったかどうかという比較考慮で判断するべきだ。それに対する何の反論も主張もないまま(訴訟が)進むのはおかしい」と批判した。
生越弁護士によると、当事者である佐川氏、雅子さん以外にも証人尋問の申請をする予定とのこと。証人について生越弁護士は、「佐川さんの指示がどうやって俊夫さんのところまで行ったのかという、その経路を立証するための必要な証人、そういうことかと思います」と語った。
さらに生越弁護士は、佐川氏への請求額を550万円から1650万円に請求拡張したことも明らかにした。
その理由につて生越弁護士は、「500万円程度であれば認諾されてしまうんじゃないかということと、国が佐川氏に対して求償をしないとこういうことを表明されたので、そういう事情を踏まえて」と語った。
2022年1月25日の衆議院予算委員会で、鈴木俊一財務大臣は、立憲民主党の階猛議員の質問に答え、国が赤木雅子さん側に支払う賠償金について、「国が個々の職員に対して求償権を有するものとは考えていない」と、佐川氏へ負担を求めない考えを示した。
- 予算委員会(衆議院インターネット審議中継、2022年1月25日)