フィリピンを訪問した安倍総理が、ドゥテルテ大統領に「ミサイルの提供」を提案し、ドゥテルテ大統領からあっさりとお断りされていた――。
そう報じたのは、フィリピンの現地メディア「フィリピン・スター」紙だ。衝撃的な内容にも関わらず、日本のメディアではほとんど、その後の独自の報道がなされていない。
(前文:城石エマ 翻訳:IWJ翻訳チーム 記事構成:岩上安身)
フィリピンを訪問した安倍総理が、ドゥテルテ大統領に「ミサイルの提供」を提案し、ドゥテルテ大統領からあっさりとお断りされていた――。
そう報じたのは、フィリピンの現地メディア「フィリピン・スター」紙だ。衝撃的な内容にも関わらず、日本のメディアではほとんど、その後の独自の報道がなされていない。
地元紙による報道の翌日、2017年1月16日、菅義偉官房長官はブルームバーグの記者からフィリピン・スターの報道について、「本当に安倍総理からそのような発言はあったのか?」と問われたものの、「承知しておりません」の一言で一蹴した。
その後、同日付の朝日新聞が、フィリピン・スターの報道について「ドゥテルテ氏は、日本からミサイル供与を提案されたなどとは言っておらず、一連の発言が曲解されて報じられたとみられる」などと報道した。
本当に「曲解」の一言で片づけてしまって良いのだろうか? 後述のフィリピン・スター紙の報道をよく読むと、たしかに安倍総理がミサイル提供を提案したことについて、ドゥテルテ大統領の発言としては伝えられておらず、ドゥテルテ大統領が「安倍(総理)には、ミサイルなんか必要ないと言ってやった」と述べたことを伝えているにとどまる。
安倍総理が本当にドゥテルテ大統領にミサイル提供を提案したのかどうかは、当事者以外、現時点では知りようがない。しかし、ドゥテルテ大統領が安倍総理の名前を出しながら「ミサイルは必要ない」と安倍総理に言ったのは、何らかのやりとりがあったからだと考えるのが通常ではないか?*朝日もドゥテルテ氏の発言が公開の場で行われたことを認めている。菅氏も、「承知していない」と述べたが、否定はしていない。
※以下、朝日新聞より引用
報道のもとになったのは、ドゥテルテ氏が同日、ダバオ市商工会議所の総会で行ったスピーチ。英語とタガログ語で、首脳会談をしたばかりの安倍首相の名前を挙げ、「安倍にも言ったんだ、私はミサイルは必要としていないと」と述べた。その後、ロシアのプーチン大統領のハッキング疑惑やトランプ米次期大統領に触れ、「もし第3次世界大戦が始まれば、それはこの世の終わりを意味する」と話した。
しかしドゥテルテ氏は、日本からミサイル供与を提案されたとは言っておらず、一連の発言が曲解されて報じられたとみられる。
一方、その前段でドゥテルテ氏は、「安倍氏には軍事同盟は必要ではないと言った。私は外国の軍人がいない国を目指したい」とも述べた。
菅義偉官房長官は16日の記者会見で、今回の報道について質問され、「承知していない」と述べた。(ハノイ=鈴木暁子)
フィリピンは今、米国と距離を置き、中国に接近する姿勢を見せている。安倍総理はフィリピンを訪問した際、1兆円もの援助を約束したが、フィリピンを日米陣営につなぎとめてミサイルを備えさせる思惑があるのだとしたら、事態は深刻だ。
フィリピン・スター紙の伝えるドゥテルテ大統領の発言からは、フィリピンが改めて米国(及びその従属国である日本)からの自立を目指そうとする姿勢が感じ取れる。ドゥテルテ大統領の対米自立姿勢については、岩上安身が国際情勢解説者の田中宇氏に話を聞いている。ぜひ、こちらもあわせてご視聴いただきたい。
執筆者:クリスティーナ・メンデス
2017年1月15日
フィリピンのドゥテルテ大統領は、「第三次世界大戦なんて見たくない」と述べて、日本がフィリピンにミサイルを提供するという、安倍晋三総理の申し出を辞退した。
金曜日に安倍氏がダバオ市を訪問した後、ダバオ市にあるマルコポーロホテルにおいて、ダバオ市商工会議所の第49回年次委員会の理事および役員の任命式で、ドゥテルテ氏は昨夜の提案を明らかにした。
「第3次世界大戦が始まれば、世界の終りになるだろう」――ドゥテルテ氏は述べた。
米国とロシアの指導者の間でさえ関係改善の兆しが見え始めていることに言及し、「実は、安倍(総理)には、ミサイルなんか必要ないと言ってやったんだ。現時点では、プーチンは懐柔策を取っているし、今度はトランプだ(友好的に振舞おうとしている)」と、ロシアのウラジミール・プーチン大統領とドナルド・トランプ次期大統領の両氏を引き合いに出して述べた。
この日本による申し出は、ロシア側の潜水艦供与を、デルフィン・ロレンザーナ比国防大臣が財政難を理由に断った後にもたらされたものだった。
これを受けて、ドゥテルテ氏はいかなる国との間においても軍事同盟を締結しない意向であることに再び言及し、「我が国には外国軍人のいない国であってほしい。 Ayoko… sibat na kayo(俺は好かん。外国の軍隊は国から出て行ってもらわにゃならん)。我々はもう自分たちでやっていけるんだから」と発言した。
また、これに先立ちドゥテルテ氏は、非合法薬物との戦いにおいて米国が干渉してきたとして憤慨し、米軍は一兵残らず荷物をまとめ、国外へ退去してもらいたい、と発言している。
しかしながら同大統領は、海軍が南シナ海又はその周辺で軍事演習を行わなければ、米国防省が演習を実施することを認めてもいる。
先に、日本の川村泰久外務報道官は、米国・フィリピン間で行われるバリカタン合同軍事演習には日本もぜひ参加したいと述べている
政府関係者が19日明らかにした防衛中古装備をASEANに供与するというニュースが報道されているので、安倍総理がドゥテルテ大統領にミサイル供与を提案したというニュースは大幅に間違っては居ないだろう。政府は自衛隊が持つ中古の防衛装備品について、他国に無償や安価で供与するための関連法案を20日召集の通常国会に提出する方針を固めたそうだ。安倍政権は言ったのはミサイルも供与という意味だと逃げるか、武器全般と含みを持たせて逃げる可能性の方が高いかもしれない。お得意の中国への挑発をして、力強い政権だと印象付け支持率をアップするという作戦としてだ。その支持率とやらもどこまで本当かうかがわしいが。
いずれにしても紛争当事者であるフィリピンのドゥテルテ大統領は、中国を執拗に挑発する安倍政権とは一線を画したいことだけは間違いない。戦場になるのはフィリピンだから当たり前の話だ。麻薬を持ち込む米兵を一掃したいのも間違いないだろう。