「自衛隊を活かす:21世紀の憲法と防衛を考える会」主催のシンポジウム「自衛隊は尖閣を守れるか」が、2016年12月24日、東京都千代田区の日比谷コンベンションホールで行われた。
(取材・文 青木浩文)
「自衛隊を活かす:21世紀の憲法と防衛を考える会」主催のシンポジウム「自衛隊は尖閣を守れるか」が、2016年12月24日、東京都千代田区の日比谷コンベンションホールで行われた。
記事目次
■ハイライト
午前の部では、自衛隊初の特殊部隊・特別警備隊の元先任小隊長で、元二等海佐だった伊藤祐靖(すけやす)氏、元空将である織田(おりた)邦男氏、元陸将である渡邊隆氏、そして元内閣官房副長官補である柳澤協二氏が「自衛隊は尖閣を守れるか」をテーマに報告を行なった。
午後の部では、東京外国語大学教授の伊勢崎賢治氏、そして桜美林大学教授で会・呼びかけ人である加藤朗氏を加え討論が行われた。
柳澤氏は同会の締めで日米同盟について触れ、「軍事的な情報、手段もたくさん持って、戦争するかしないかを決めるだけの政治的パワーも持っている国と組んだときに、その中でどこまで自分(日本)の国益を主張できるのかということは、これはもう本気で、政治がぼろぼろになって対応しなければいけないテーマ」と指摘した。その上で「簡単に日米一体化すれば、日本が平和になるというような単純なシナリオではない」と強調した。
その背景について、柳澤氏は「『イコールパートナー』という言葉が言われるが、そこはイコール(対等)であるわけではない」と言明し、「客観的には日本はますますアメリカに従属を深めていように見えなくもない。しかしその中で自主的であることはどういうことなのかということを、単に『イコール』であるとか、『レシプローカル(相互互換)』であるとかいう言葉に留めるのではなく、また自己目的にもならずに、もういっぺん考えて見る必要がある」と主張した。
具体的には、アメリカと日本はそれぞれ、どういう国益を持って、どのようなコストを払って、どういう脅威に対抗しようとしているのかという「バランスシート」を正確に組んで見る必要があると柳澤氏は訴え、「私はアメリカの方がかなり儲かっているのでは」との見方を示した。
その上で柳澤氏は、「アメリカが提供する『日本防衛』というサービスは多分変わらない。けれども、一方で日本はもっと大きなコストを払おうとしている。実は、それは『日本防衛』のためではなくて、『アメリカが提供する世界秩序が非常に危ういから、そこでもっと日本がコストを払わなければいけない』、という文脈で、恐らくバランスシートが見合ってくるのだろう」との見識を示し、しっかりと分析的に考えていく必要性を力説した。
また、柳澤氏は「尖閣だけに限って言えば、もちろん中国の方針というものはあるのかもしれないが、今日のこの事態というものは、政治の失敗が招いた対立関係。ここをなんとか政治の責任で解決する以外ない。戦争をすることによってバラ色の未来が出てくるような性質の問題ではない」と訴えた。
IWJは、「自衛隊を活かす:21世紀の憲法と防衛を考える会」主催のシンポジウムを継続して取材している。こちらもぜひ併せてご覧いただきたい。
また、この日登壇した織田邦男氏は、今年6月28日にインターネットサイト「JBPRESS」で「東シナ海上空で中国空軍の戦闘機が航空自衛隊のスクランブル機に対し、極めて危険な挑発行動を取るようになった」と明かした。
(…会員ページにつづく)
尖閣だけの損得勘定ではなく、長期的で全体的な全てを計算し尽くして、外交と防衛を考えなければならない。中国は欧米近代概念では計れない複雑な民族と歴史の国だ。