「『アジア、太平洋、あるいはそれを超える地域での”seamless”な協力』――。それは、どこかと言うと、結局『中東』です」
安倍首相の訴える「自衛隊とアメリカの”seamlessな協力”」のめざすものは、アメリカが中東で行う「テロとの戦い」に、日本も自ら巻き込まれようとする危険なものだ。
元日本中東学会会長、現千葉大学教授の栗田禎子氏が、2015年9月8日、東京大学の本郷キャンパスで開かれた、「安保法案 東京大学人 緊急シンポジウム」に登壇し、中東研究者としての知見によって、安倍首相の進める集団的自衛権が、いかに欺瞞に満ちていて、かつ歴史的・国際的な文脈を踏まえていないものであるか、警鐘を鳴らした。
「憲法を守れ」という主張に対し、「平和ボケだ」という批判がなされることがあるが、実際、「平和憲法」は、戦後70年間の日本の平和を守ってきた。それは、中東で戦争を繰り返すアメリカの暴力を見てきた人たちが、ひしひしと感じてきたことだ。栗田氏は、憲法が日本の平和を守っている事実を忘れている安保推進派こそ、「平和ボケだ」と笑ってみせた。
栗田氏はスピーチの中で、3つの論点をあげ法案を批判した。中でも注目すべきは、「アメリカ主導の集団的戦争に取り込まれるのを止めようとする動きは、実は世界的な動きでもあり、日本はまさにその先頭を行っている」という指摘だ。
「私たちの、安保法案反対の戦いは、けっして孤独なものではなく、世界からも共感を得ている」として、「だからこそ、これからもこの運動に誇りを持って、進めていこう」と声を高める栗田氏の言葉は、安保法案の強行採決が色濃くなる中でも、気落ちすることなく声をあげ続ける多くの人たちを、さらに勇気づけるものだった。
9月12日(土)には、岩上安身が栗田教授にインタビューを行う。中継配信は、同日14:30よりCh.1で。http://iwj.co.jp/channels/main/channel.php?CN=1 ご注目いただきたい。
以下、シンポジウムでの栗田氏のスピーチ全文を掲載する。