2016年の東京五輪招致を進めていた当時の担当課長である鈴木知幸氏を講師に迎え、2015年7月6日(月)、東京都渋谷区の建築家会館で、神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会主催「まだまだ終わらない公開勉強会3 新国立競技場は、ほんとうに使えるものになるのか?」が開催された。
ノンフィクション作家で神宮外苑と国立競技を未来へ手わたす会の共同代表でもある森まゆみ氏は、現行案に対して、第三者機関による検討の必要性を訴えた。6月20日の岩上安身によるインタビューにおいても、森氏は「新国立競技場の建設は、誰も幸福にならない公共事業の見本」だとして、あらゆる問題を指摘。新国立競技場ではなく、既存のスタジアムを改修するなど、代替案を提示している。
- 「新国立競技場の建設は、誰も幸福にならない公共事業の見本」 ~森まゆみ氏ら有識者が現行案に対して緊急提言「第三者機関による検討を」 2015.6.16
- 計画見直しで揺れる新国立競技場建設問題、「ザハ案はあきらめ、既存のスタジアムを改修して活用を」~街をウォッチするプロ、作家の森まゆみ氏が岩上安身のインタビューで提言~岩上安身によるインタビュー 第552回 ゲスト 森まゆみ氏 2015.6.20
5月18日、下村博文文部科学大臣と舛添要一都知事の対談で、建設コストの負担をめぐり国が東京都へ500億円の負担を要請したことについて、舛添知事は憲法違反だと反論している。
地方財政法の第2条には、「国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を行ってはならない」と定められている。
そして、憲法第95条では「一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない」と規定されていることから、新国立競技場建設において憲法論議が浮上した。
しかし、下村大臣が「日本スポーツ振興センター法の規定で東京都に負担を求めることは可能」と、2013年5月に改正された日本スポーツ振興センター法(附則)を引き合いに出し、牽制が続いていた。
これについて鈴木知幸氏は、「今回のひとつの問題は、スポーツ議員連盟です。非常に都合のいいようにJSCあるいは自分たちの方向性に持っていきたいための議案提出の主体になった」と鋭く指摘する。
加えて、問題視されているキールアーチや開閉式の屋根、可動席など豪華で莫大な建設コストが算出された新国立競技場だが、選手が競技に臨む前、ウォーミングアップをするために必要なサブトラックは常設されず、仮設で建設されるという問題も明らかになっている。
会場には、バルセロナ五輪で銀メダル、アトランタ五輪で銅メダルを獲得したマラソンメダリスト有森裕子氏の姿があった。有森氏は、「オリンピックが、みなさんの負の要素のきっかけに思われるようなことは、全アスリートの代表ではありませんが、みなさんに全力で応援していただいた経験を持つ一人のアスリートとして、本望ではありません」と涙ながらに訴え、静まり返った会場から拍手が沸いた。