「これは改正ではなく大改悪だ」
「6・23盗聴法院内学習会」が2015年6月23日(火)、参議院議員会館で開かれた。講師として招かれた山下幸夫弁護士は、現在国会で審議をされている刑事訴訟法改正案の中の通信傍受法(いわゆる盗聴法)について、こう苦言を呈した。
日本共産党の清水ただし議員は、「違法な取調べが行われ、任意でない自白が取られるという危険をなくし、冤罪を生まないことが、今回の法改正の本来の目的だった。しかし、実態は警察の権力を拡大するものになっている」と訴えた。
「大改悪」と言われる理由のひとつは、対象犯罪の大幅な拡大にある。
現在の通信傍受法は、「盗聴以外の方法では、犯人を特定し、又は犯行の状況若しくは内容を明らかにすることが著しく困難であるとする判断基準(補充性の要件)」によって、対象犯罪が4類型(薬物関連犯罪、集団密航、銃器関連犯罪、組織的犯罪)に限定されている。
しかし、改正案では「盗聴が捜査に必要か、もしくは有用か」との判断で選定され、対象犯罪が大幅に拡大(※)される。
(※)改正案で追加されている対象犯罪:爆発物使用罪、児童ポルノ関連犯罪、殺人・傷害、逮捕監禁、略取誘拐、窃盗・強盗、詐欺・恐喝
改正案で懸念されるのはこれだけではない。現行法では、盗聴する際に通信業者の等の立会を要求していた。立会人は、盗聴が警察に乱用されることを防ぐ歯止めになっているという。しかし、改正案では立会人は不要とされ、その代わり傍受記録を暗号化して警察に電送するという。
この立会人の廃止について、山下氏はこう警鐘を鳴らす。
「暗号化というのは第三者が聞けないようにするだけであって、暗号化するから立会人がいなくてよいという論理的な関係はない。警察はかつて緒方宅盗聴事件(※)を起こし、その事実を認めていない。何も反省していない。そういう組織が自分達で勝手に盗聴をやるということ。何をするかわからない」
(※)緒方宅盗聴事件(日本共産党幹部宅盗聴事件):1985年から1986年にかけて、当時日本共産党国際部長であった緒方靖夫宅の電話が警察官によって盗聴された事件。警察庁警備局を中心とした組織的犯行が強く疑われた。国会で参考人質問が行なわれ、補聴器メーカーの技師が「依頼を受けて盗聴器の試作品製作に携わった」と証言した。また、検察も組織的犯行と断定している。しかし、警察は現在まで組織的な関与を強く否定している。緒方氏が共産党の国際部長だったため、盗聴による情報収集が目的だったと見られている。
「通信傍受法の大改悪」を弁護士らが批判――盗聴が捜査機関に乱用され「自白を迫る手段」として使われる可能性も http://iwj.co.jp/wj/open/archives/250297 … @iwakamiyasumi
冤罪を生まないことが、今回の法改正の本来の目的だった。しかし、実態は警察の権力を拡大するものに。
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