「冤罪を生む可能性が極めて高い」――「司法取引」「盗聴法」で捜査権限拡大、「取調べの可視化」は一部に限定される「刑事訴訟法改正案」に国会議員らが警鐘 2015.5.14

記事公開日:2015.5.19取材地: テキスト動画
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(IWJ・青木浩文)

特集 共謀罪|特集 秘密保護法

※5月19日テキストを追加しました!

 「盗聴法・刑事訴訟法等改正を考える」と題した超党派国会議員と市民の勉強会の第2回目が2015年5月14日、参議院議員会館で行われた。「刑事訴訟法改正案」は今国会に提出され、すでに衆議院で審議に入っている。

 厚労省元局長村木厚子氏の無罪事件(※)がきっかけとなり、「取調べと操作の可視化・透明化」を行い、冤罪を生み出してきた密室での糺問的な取調べに依存した捜査・公判のあり方を抜本的に改革することが新しい時代の刑事司法の課題とされていた。

 ところが、現在提出されている改正案は、このような改革を実現する方向にはない。そればかりか、取調べの可視化は一部に限られた上に、通信傍受の拡大や司法取引の導入が追加されるなど、捜査権限を大幅に拡大する内容になっている。

(※)厚労省元局長村木厚子氏の無罪事件(障害者郵便制度悪用事件)
 障害者団体向けの郵便割引制度を悪用し、企業広告が格安で大量発送された事件。大阪地検特捜部は2009年、自称障害者団体に偽の証明書を発行したとして厚労省の村木厚子元局長らを虚偽有印公文書作成・同行使容疑で逮捕・起訴した。これに対し村木氏は無罪を主張。大阪地裁は2010年、村木氏を無罪とし、同年9月21日、無罪判決が確定した。一方、同日には、この事件を担当した主任検事による証拠の改ざんが行なわれていたことが発覚(大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件)し、改ざんに関わったとされる3人の検事が逮捕・起訴された。この事件では改ざんの他にも、取調べメモの破棄や、脅迫的な取調べなどがあったとされ、社会問題となった。

記事目次

■ハイライト

  • 「取調べの録音・録画制度の導入の問題点」、「証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度の創設等の問題点」 渕野貴生氏(立命館大学法科大学院教授)
  • 「刑事免責制度導入の問題点」 石田倫識氏(愛知学院大学法学部准教授)
  • 「盗聴の大幅な拡大と手続簡易化の問題点」 村井敏邦氏(一橋大学名誉教授)
  • 日時 2015年5月14日(木) 17:00〜
  • 場所 参議院議員会館(東京都千代田区)

「取り調べの可視化“ちょっと”、司法取引・通信傍受“拡大”法案」

 民主党の階猛(しなたけし)議員は、「いつのころからか『取調べ可視化』の議論に、『捜査権限の強化』いう話がミックスされてきている。今回の法案でも、『取調べの可視化』に合わせて、『盗聴法(通信傍受法)』とか『司法取引』が含まれてきている。消費者被害で『抱き合わせ販売』というのがあるが、おかしなものを入れこんできた」と困惑を示した。

 共産党の清水忠史議員は、「天ぷらというのは、美味しいものを1つずつ選んで食べてこそ美味しい。それを十把一絡げに揚げて、『好きなものも嫌いなものも含めて揚げたから。熱いうちに食うか、食わないか』、こんなことを国民に迫るなんていうのはとんでもない」と現政権を批判した。

 維新の党の井出庸生議員は、同改正案を「取調べの可視化“ちょっと”、司法取引・通信傍受“拡大”法案」と名づけた上で、「誰もわかないところで会話が傍受されて、それがテロ捜査という名のもとに特定秘密になるのではという懸念もある。極めて危険」と、改正案の危険性に言及した。

 福島みずほ社会民主党副党首は、「司法取引は冤罪を生む可能性が極めて高い。可視化もほんの一部を録ったらかえって冤罪を生むと思う」と冤罪が増加する可能性を示唆した。

曖昧な規定――捜査機関の裁量によって逃れる可視化

 立命館大学法科大学院教授の渕野貴生氏は、「身体拘束下の取調べに録音・録画する義務を捜査機関に課した点は辛うじて評価されるものの、対象事件が限定され、任意取調べは対象とならず、また、例外的事由が設定されたことは大きな問題」であると解説した。

 この場合の「対象事件」とは、「裁判員裁判の対象となる事件」と「検察官独自捜査事件」を指す。しかし、これらの事件の全事件に占める割合はわずか3%。渕野氏は、「対象事件の範囲が狭すぎる」と指摘した。

 たとえば、4名の誤認逮捕者を出し、取調べにより虚偽の自白が生み出され、取調べ可視化が問題とされたPC遠隔捜査事件などは、この対象事件には含まれない。

 また、厚労省元局長村木厚子氏の無罪事件は「検察官独自捜査事件」になるが、独自捜査事件になるか否かは捜査機関の裁量に委ねられるので、今後同様の事件が全課程可視化の対象事件になるかは未知数とのこと。

 渕野氏は、「捜査機関の裁量によって可視化から逃れることができるような曖昧な規定になっているのは、ひとつの大きな問題点」と指摘。次のようにコメントした。

 「任意取調べが録音・録画されないという点も大きな問題。日本の捜査のやり方では任意取調べの段階が非常に長く続き、この中でかなり追及的な取調べが行なわれる。『任意』というのは言葉通りにとれば、帰りたいときに帰れるはずだが、現在の判例の理解では一定程度供述するように説得を続けることは認められる。この任意取調べでも違法な取調べが行われ、任意でない自白が取られるという危険は、逮捕拘留の時の取調べと変わらないくらい大きい」

取調べ可視化の対象事件でも曖昧な解釈で「例外」が許される

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