ウクライナ危機は「米国によるユーラシア不安定化のステップ」 イングドール氏が警告、東に舵を切れ! 「ワシントンの奴隷国である限り破壊と低迷があるだけ」〜岩上安身によるインタビュー 第480回 ゲスト F・ウィリアム・イングドール氏 2014.9.12

記事公開日:2014.11.11取材地: | テキスト動画独自
このエントリーをはてなブックマークに追加

(記事:IWJ・菅美香子、記事構成:IWJ・ぎぎまき)

特集 IWJが追う ウクライナ危機
2025-2026、年末年始限定フルオープン!

 現在も続いている「ウクライナ危機」と呼ばれる出来事が表面化したのは、昨年2013年11月、当時のヤヌコヴィッチ大統領がEUとの連合協定締結を見送り、それに反発した「市民」が大規模なデモを行ったときだった。その後、ヤヌコヴィッチ大統領の解任と暫定政権の成立があり、新大統領が選出される一方で、内戦状態は続いていた。大勢の人々が死傷し、一部の地域では食糧や電気の供給が限定的になり、多くの人々が国内外へと避難している。

 ここ一年ほどのあいだに突然噴出したかのように見えるこの問題のルーツは、ソ連崩壊の時期にさかのぼると考えることができると、F・ウィリアム・イングドール氏は指摘する。これは、ウクライナという国に限定される問題でも、ロシアやヨーロッパといったユーラシア大陸で展開する問題でもなく、アメリカの策略に関わる問題として見ることができる。

 それは、NATOが拡大しロシアを破壊しようと迫りつつあること、アメリカがユーラシアを支配したいと望んでいること、だが、その一方でアメリカは力を失いつつあり、そのヘゲモニーが終焉しようとしていることを背景としているのである。それが、「ウクライナ危機」というかたちをとって今、現れている。

 岩上安身は今年2014年9月、渡独した先のヴィスバーデンで日本時間の12日と16日、イングドール氏を訪問し、2回に渡ってインタビューを敢行。イングドール氏は、ウクライナの混乱を、アメリカによる「日本を含めたユーラシア全体を不安定化させようとするステップ」であると説明した。

 また、そうした状況のなかで、日本はどのように対応するべきなのか。イングドール氏は、日本がユーラシアとともに成長し、輝かしい未来を手にするのか、「ワシントンの奴隷国」のまま沈んでいくのかという選択をしなければならないと述べた。

記事目次

<会員向け動画 特別公開中>

■第一弾

■第二弾

  • F・ウィリアム・イングドール (F. William Engdahl) 氏(フリーランス・ジャーナリスト)
  • 収録日時
    ・第一弾 2014年9月12日(金)現地時間 19:40ごろ〜(日本時間 13日2:40ごろ〜)
    ・第二段 2014年9月17日(金)現地時間 18:30ごろ〜(日本時間 18日1:30ごろ〜)
  • 場所 ヴィースバーデン(ドイツ・ヘッセン州)

<ここから特別公開中>

「ウクライナ危機」の発端は22年前のソ連崩壊と米国軍産複合体の企て

岩上安身(以下、岩上)「アメリカが今、ウクライナ政変に非常に深く介入し、ヨーロッパとロシアの分断を謀ろうとしているように見えます。去年の終わりから危機が大変深刻化したわけですが、イングドールさんは、このヨーロッパとロシアの間の問題を2009年ぐらいの時点ですでにかなり詳しくお書きになっている。100年前、第一次大戦前の大英帝国が果たした役割ということを分析し、それと重ねあわせて論じていますね。

 ウクライナ危機は、なぜ、誰によって仕掛けられたのでしょうか」

F・ウィリアム・イングドール氏(以下、イングドール・敬称略)「今年(2014年)2月にクーデターが起こりましたが、この問題のルーツは1991年のソ連崩壊にさかのぼります。その時、ソ連は、経済破産、国民は45年続いた冷戦で疲弊していました。だから、ロシアは西洋と平和関係を築きたかったのです。

 しかし、アメリカの軍産複合体が支配を目論みました。シェブロンやエクソンモービルといった石油企業や、ウォールストリートの銀行です。ソ連崩壊は、ペンタゴンが、『フル・スペクトラム・ドミナンス』と呼ぶほど、全てを軍事的に支配できる大きな機会でした」

ロシアとヨーロッパを分断させるため、米国が仕組んだ「オレンジ革命」

イングドール「1990年代に、キッシンジャーやブレジンスキーといったアメリカの戦略家は、ヨーロッパとユーラシア、特にロシアと中国の間の結びつきに気がつきました。一つの大地でつながっている経済的同盟が、超大国アメリカの覇権を終わらせることになると気がついたのです。

 ソ連の共産主義崩壊の直後、CIAやイギリスの諜報機関が動き、ウクライナに働きかけました。東と西のブロックを破壊するためです。

 軸(ピボットステイツ)となる国というのは、日本や中国やドイツのように経済的に重要なのではなく、場所的に重要な国のことです。ウクライナに火をつければ、ロシアにもヨーロッパにも飛び火することになります」

岩上「ピボット(※1)ですね? P・I・V・O・T。これはマッキンダー(※2)の言ったピボットの、ピボットエリアのことですね?」

  • (※1)ピボット(pivot):旋回軸
  • (※2)サー・ハルフォード・ジョン・マッキンダー(Sir Halford John Mackinder)イギリスの地理学者、政治家である。ハートランド理論を提唱し、この概念は地政学の基礎的な理論付けとなった。事実上の現代地政学の開祖ともいえる。(Wikipediaより

イングドール「そうです。ロシアは、ウクライナとのつながりを断たれてしまえば、ユーラシアの大国ではなくなります。だから、ウクライナは強国ロシアをブロックするために、ネガティブな意味で、軸国なのです。

 今起こっているように、ウクライナが経済的に破綻し、内戦になり、ワシントンとCIAによって後押しされた政府ができれば、ウクライナを通るロシアからドイツ、フランス、イタリアなどへの天然ガスのパイプラインは分断されてしまいます。

 2001年から2004年頃にかけて、ブッシュとチェイニー政権が非常に攻撃的な戦略を始め、NATOがポーランドやチェコやハンガリーといった東方に拡大しました。そして、ひそかにアメリカ政府と人権NGOが結びつき、2003年にキエフでカラー革命(※3)を起こしました」

  • (※3)カラー革命:色の革命(Color revolutions)、または花の革命(Flower revolutions)。2000年ごろから、中・東欧や中央アジアの旧共産圏諸国で起こった一連の政権交代を総体的に指す。非暴力抵抗を実行するという点において非政府組織(NGO)や、特に学生運動が重要な役割を果たした。2000年のセルビアにおけるブルドーザー革命、2003年グルジアのバラ革命、2004年ウクライナのオレンジ革命、2005年キルギスのチューリップ革命などが挙げられる。いずれも反体制派から独裁者とされていたそれぞれの国の指導者の辞任や打倒につながった。

岩上「オレンジ革命ですね」

イングドール「そうです。アメリカ政府から秘密のルートで資金が提供されましたし、オレンジ革命のロゴは、マディソン街の広告会社によってアメリカのために作られました。戦略は、ボストンのアルバート・アインシュタイン・インスティチュートのジーン・シャープによって作られました。マディソン街のプロが、ロゴやカラーを作ったのです。全部プロの仕業です。ハリウッド映画みたいに。

 この計画に投入されたのが、ヴィクトル・ユシチェンコです。ウクライナをEUに入れ、NATOに加盟しようというキャンペーンに同意しました。しかし、アメリカにとって都合の悪いことに、ユシチェンコは汚職で辞職。ウクライナの人々は、東部の産業とつながりを持っていたヴィクトル・ヤヌコヴィッチを選びました」

ブッシュ大統領の挑発、ミサイル防衛網で核先制攻撃ができるようになる米国!?

イングドール「今、何が起こっているのか――。冷戦の終わった1991年以降、NATOに加盟した国々があり、大西洋同盟ができます。ソ連から身を守るためだとされていますが、ソ連はすでに存在していません。ウクライナ、ベラルーシ、グルジア以外はNATO加盟国となり、完全にモスクワの首を絞めたのです。

 2007年、ブッシュ大統領は非常に危険なことをしました。軍事専門家以外の人々は、それが世界の平和にとっていかに危険なことかを理解していませんでした。

 アメリカ政府は、ポーランドとチェコスロバキアに弾道ミサイル防衛を作ることを発表したのです。後にブルガリアとトルコにも、これを拡張しました。このミサイル防衛は、イランや北朝鮮のミサイル攻撃から守るためだと言ったのですが、それは嘘でした。

 2007年初めにプーチンはスピーチで、『これは、ロシアの核防衛を対象にしたものだ』と指摘しました。核の対立国の一方が、他国からのミサイル攻撃を防衛できるシステムを持っていれば、核戦争に勝つことができます。これは世界の平和にとって、挑発的なことです。

 アメリカが、ポーランドからロシアに対し攻撃をしたとします。ロシアは反撃しますね。ロシアは対抗してミサイル攻撃します。それに対してアメリカは、ポーランドのミサイル防衛体制からミサイルを発します。ソ連が核兵器を持ってから初めて、ペンタゴンは先制攻撃ができる可能性を持ったのです。これは危険なことです」

ヤヌコヴィッチ大統領の辞職で誕生したネオナチ政権

イングドール「1989年のベルリンの壁崩壊以降、NATOやアメリカの軍事力はロシアにとって、自国を破壊するものに映りました。そして2013年11月がきます。選挙で大多数のウクライナ人に支持されたヤヌコヴィッチは、EUとの連合協定を受け入れず、当面は、ロシアとベラルーシとカザフスタンの『ユーラシア経済同盟』を検討すると発表しました。

 ワシントンはその決定を予期していました。ヤヌコヴィッチは、西につくかロシアにつくかを決められないでいる状態でしたから。

 ワシントンのお気に入り、アルセニー・ヤツェニュクがいます。現在の首相です。長年のワシントンのお気に入りである彼は、ヤヌコヴィッチがEUではなくロシアとの同盟プランを選ぶと言った数時間後に、Twitterで、政府に対し抗議しなければならないと言ったのです」

イングドール「ヤツェニュクはアメリカのセクト『サイエントロジー』のメンバーだと言われています。トム・クルーズとかもいるセクトですね。非常にミステリアスで力を持ったセクトです。

 米国のヴィクトリア・ヌーランド国務次官補は、在ウクライナ大使との有名な電話での会話で、ヤツェニュクを名指ししました。彼女は『私たちはヤツェニュクを首相にしたい』と言ったのです。クーデターが起こるより前のことですよ。ヌーランドは、アメリカの国務次官補で、ネオコンで、チェイニーのアシスタントですね。

 反政府デモは大きく拡大し、ヤヌコヴィッチの辞職を求めました。何人かの抗議者は、不可解にも射殺されました。ウクライナ政府が抗議者を殺したとも言われました。

 その後の調査では、抗議の始まる2013年11月より前に、CIAが秘密裏にウクライナのネオナチのイデオロギーを持つ右翼に、NATO加盟国であるポーランドで狙撃の訓練をさせていたことが分かりました。こうして訓練を受けたプロの狙撃手が、マイダン広場の抗議の安全を守る組織に送り込まれました。右派セクターと呼ばれる組織です。ネオナチです。

 2月21日にヤヌコヴィッチがクーデターで追放されると、代行の『暫定政権』ができました。ネオナチの右派セクターが、防衛、内務大臣、警察といったキーとなるポジションを占めました。このネオナチたちは犯罪者やギャンク以外の何ものでもありません。彼らが現在のウクライナで制服を与えられたのです。

 米国は、この政府をあらゆる方法で支援しています。そして、ドイツやヨーロッパ諸国、特にフランスは、ウクライナの内戦を避けるためにあらゆる方法で歩み寄ろうとしていました。2月21日に、ドイツ、フランス、ポーランドの外相がウクライナに来て、妥協案の合意をさせたのです。アメリカの介入なしに」

なぜ、米国は戦争をするのか?

イングドール「なぜアメリカ政府がウクライナの内戦を望むのか。ウクライナは西暦1000年以前にキエフ・ルーシができたところで、大ロシアの一部だったのですから、ロシアはロシア民族を守るために介入してきます。では、なぜ、ワシントンはこういうことをするのか。

 アメリカやその国民にとって、ヨーロッパでこの戦争をすることが良いからという理由ではありません。アメリカの政治を支配し、アメリカのメディアや軍産複合体を支配している権力者たちが、あらゆるところで力を失いつつあるからです。

 彼らはオバマ大統領を説得し、中国の経済力に対抗して、アジアの軸国が軍事的脅威を増やすと発表させました。背後では、日本政府に、南シナ海諸島をめぐる争いによって、中国と仲違いさせようとしています。ワシントンのネオコン戦争屋、ディック・チェイニーやダグラス・フェイスなどは、日本の安倍政権に、中国に対してますます軍事的・攻撃的になるよう勧めています。韓国に対してもそうです。

 チェイニーの周辺が、NATOの東方拡大やミサイル防衛によってロシアを刺激し、中国の脅威と言ってアジアを刺激しているのです。どちらも、ロシアのプーチンや、中国の習近平が大げさに反応し、間違いを起こさせようとするのが目的です。そうなると戦争になりますから」

ワシントンの好戦派が妨害した2009年の日・中・韓・北の和解と対話

岩上「現在、起こっている事態について、非常に詳しく説明していただきました。特にウクライナのキエフの政権が非常にクレイジーなものであるということは、だいぶ多くの人も理解するようになりました。

 ところが、イングドールさんはロシアとヨーロッパが対立するようにアメリカが動いているということを、かなり早い段階で分析していました。本の中では、これは、実は非常に古い手口なんだと指摘していますね。

 それは100年前、大英帝国が覇権を持っていた時代の末期、だいぶ力が落ちてきた時に、ユーラシアの中で新興国のドイツが勃興してきた。そして、ドイツのベルリンと中東のバグダッドが鉄道で結ばれるようになる。そういう計画が持ち上がってきた時に、これをイギリスの覇権にとって非常に危険なものだとみなして、ユーラシアが一つにならないように分断することを考えた。

 このユーラシア大陸が友好的に結びつかないよう、仲違いして、対立させる。そういうことを外交政策として行うようになったということを説明していますね。

 イギリスのあとに覇権を手にしたアメリカは、イギリスと同じようにユーラシア大陸の外にある帝国であって、同時に島国です。そして、イギリスの覇権が落ちてきた、没落してきた時と同じように、今、アメリカも経済的に没落しつつある。

 同じような条件で、アメリカも、当時、イギリスが行った政策と同じようなこと、ユーラシアが仲良く手を結ぶということを遮っていこうとしていると。そのあたりのことを、この100年前に起きたドラマと、そして今日の出来事、かつ今日との重なりあう点を説明していただきたいと思います」

イングドール「1880年代、ドイツの産業と政府は大きなプロジェクトを考案しました。ベルリンと、現在のイラクの間に鉄道をひくというものです。マッキンダーのようなイギリスの地政学者は、ドイツがこの鉄道を実現させれば、ドイツ産業の莫大な経済領域を広げるだけではなく、イギリス海軍から完全に独立してしまうことに気がつきました。

 1997年にブレジンスキーは『グランド・チェスボード』の中でこう書いています。『ユーラシアはアメリカの覇権にとって唯一の脅威である』。ロシアや中国といったユーラシアの大国が経済的に協力すれば、彼らは資源を持ち、多くの人口を抱え、技術力を持っていますから、経済大国になりうるのです。西洋からも、アメリカからも独立して、です。

 このため、ソ連が1991年に崩壊し、ワルシャワ条約機構が崩壊しても、NATOは消えなかったのです。ワシントンの好戦派はユーラシアを支配したがりました。中国とロシアと、その間にある全てを。だからNATOを拡大させ、同時に中国とアフリカの石油国の関係をコントロールしようとしました。

 そして、隠れた外交によって、アジア諸国同士を対立させようとしました。日本、中国、韓国です。各国がお互いに不信感を持っています。

 5年前、日本、中国、韓国、そして北朝鮮さえも和解や協力のための対話をしていました。日本の政府は沖縄の米軍基地を閉鎖することを約束していました。最近5年間の日本の大きな転換に責任があるのは、ワシントンの好戦派です」

岩上「何のためのDivide and Ruleなのか」、理解しがたいイギリスの戦略

岩上「日本人は、大英帝国の歴史とか、第一次世界大戦のときに何が起こったのかということに、非常に知識が乏しいのです。第一次世界大戦にはほとんど参加しなかったので、人ごと、他人事になっていて全然知識がないのです。

 100年前の第一次大戦下、ヨーロッパで何が起きたかというストーリーをちゃんと理解しないと、今、起きていることが理解できません。まず多くの人が不思議に思うのは、イギリスはなぜ、ユーラシア内部の国々が仲良くなるということをそこまで分断しようと思ったのか、ということです。そこが理解できません。自らが覇権を持っていて、その座から滑り落ちるぐらいならば、隣の奴らを破壊してしまえ、という考え方が理解できないんです。

 つまり、自分がトップでいられなくて、二番手以降が上がってきて、その隣の人たちが仲良くなる。自分以外の人たちが仲良くなるわけです。ドイツとフランスとロシアと、こういう人たちが仲良くなり、中近東が仲良くなるというのは、大成功でしょ。それで、繁栄していくというのをイギリスは少し遠い距離から見ていて、これを許せないと思い潰していく。そしてお互いに対立させて戦争に持ち込んでいったわけです。どうしてそういう戦略がとれるのか。それはジェラシーなのか、危機感なのか」

イングドール「パワーのためです」

岩上「先ほどすごくシンプルに、Divide and Ruleとおっしゃった。分断して統治せよ、という意味なのですが、それを理解できる人と、全く理解できない人がいます。支配のためには仲違いさせてしまえ、ということが、心から納得できない」

ドイツの台頭を秘密裏の軍事同盟で阻止したイギリス

イングドール「まず、それは一般のイギリス人ではなく、イギリスを支配しているイギリス人たちです。彼らは世界の悪人です。

 1873年、イギリスの歴史において『大不況』と呼ばれるものがあり、25年続きました。イギリス人は南アフリカの金を探し求めました。金を支配すれば、世界の金融を支配できたのです。

 大英帝国の力は、世界規模の負債のピラミッドを基盤としていました。1910年までにはこのピラミッドが崩壊し始めました。大英帝国の力は、金融の崩壊とともに、インドやアフリカでも崩壊していったのです。

 ドイツが中央ヨーロッパで勃興し、大英帝国を脅かしました。1900年までにドイツの産業は、今日における中国のように、30年足らずであらゆる領域でイギリスの産業を抜きました。鉄鋼業、機械生産、科学技術などの領域においてです。

 もし、ドイツがロシアや中央ヨーロッパの国々と経済的結びつきを持つならば、イギリスの競合になる経済圏が作られる。イギリスはあらゆる手を尽くして阻止しようとしました。

 彼らは、1880年代から1940年代の時期の間に、秘密のNATOのような軍事同盟を作ったのです。ドイツに対抗するため、ロシア、フランス、オーストリア、ハンガリーとの同盟。ロシアとドイツの協力を壊し、フランスにドイツを脅かせ、イギリス自身は島国からヨーロッパ人たちの戦争を見ていたのです」

アメリカの多国籍企業はエージェント企業にほかならない

イングドール「第一次世界大戦で、イギリス政府、フランス政府、イタリア政府は、ウォールストリートからのローンによって軍資金を得たのです。今のJPモルガンという銀行からです。なぜなら、イギリスは事実上、財政破綻していたので、ドイツとの戦争の費用を負担することはできませんでした。

 今日の状況と多くの点で似ています。第一次世界大戦前の大英帝国と似ています。今、『帝国』とは呼ばれていませんが、事実上『アメリカ帝国』ですね。彼らは国連やNATOやIMFという代理人を通じて、帝国を作っているのです。

 1873年以降の大英帝国と非常に似ているのは、『アメリカ帝国』は1970年代から不況に入っているということです。鉄鋼業は崩壊し、基本インフラへの投資は凍結されました。

 1971年8月にニクソンがドルと金の兌換(だかん)を停止しました。世界のドル準備金の創出は、爆発的に双曲線を描きました。アメリカの産業の雇用、研究、技術は、アウトソーシングされるようになりました。特に1994年に世界貿易機関ができてからです。

 アメリカの多国籍企業はエージェント企業にほかなりません。東欧の企業であれ、メキシコの企業であれ、アメリカに支配されるようになったのです。そしてアメリカは負債国になりました。個人、企業、そして国の政府までもが負債を抱えたのです。

 1970年以降、80年代、90年代と、アメリカは負債国になったのです。個人がクレジットカードで新車を買ったり、企業が負債を抱え、国や地元政府も負債を抱えました。

 そして2007年、この負債カジノは崩壊しました。サブプライムローンの崩壊とともに。そして2008年9月、ヘンリー・ポールソンはリーマン・ブラザーズに対する政府の救済を拒否しました。そして危機はグローバルに広がりました。

 経済の改善についての政府の公式発表がありましたが、政府のあらゆる経済データは現実に基づかないものでした。彼らは統計的なトリックを使い、国民に状況がそれほど悪くはないと説得していたのです。

 2014年現在、失業者、つまり仕事を欲しがっているのに就職できない人たちは、労働者人口の22%います。大学を卒業してもタクシー運転手になったり、皿洗いになったりしています。家族を養い、ローンを払うためです。大学卒業生は、通常、5万5000~10万ドルを借りて単位を取って卒業していきます。キャリアを始める前に借金を抱えているのです。

 私は1960年代、奨学金でプリンストン大学に行きました。当時の学費は600ドルでしたが、現在は6万ドルになりました」

岩上「100倍になった?」

イングドール「そのとおりです」

国民から搾取する経済システム―銀行業界によるクーデター!?

岩上「なぜ、こんな風になってしまったのか。なぜ、国民から搾取をするような経済システムに変わってしまったのでしょう」

イングドール「非常に単純です。ウォールストリートの大銀行が、徐々にワシントンをコントロールするようになり、経済をコントロールするようになり、国会議員は銀行が何をやってもいいようにしているのです。

 1950、60年代はアメリカに住んでいれば、無料か非常に安い授業料で高等教育が受けられました。1980年代から90年代に、ウォールストリートの銀行は、これを新しいマーケットにしようと決めたのです。借金のマーケットです。子どもに大学教育を受けさせるために家族は何でもするでしょう。そうすればいい仕事が得られますから。アメリカの銀行は、1兆ドルの大学ローンを貸し付けています。

 銀行の規制緩和は1930年代の大恐慌のときにも行われ、それはアメリカの過去30年間を崩壊させました。ウォールストリートの投資銀行と商業銀行の間で規制緩和が行われたので、それらの銀行は合併しました。シティ・バンク、バンク・オブ・アメリカ、JPモルガン、ゴールドマン・サックスなど、6か7の銀行が巨大になりました。それは銀行のクーデターでした」

大英帝国時代と重なりあう現代、帝国によるグローバル攻撃で核戦争は起こるのか?

岩上「大英帝国の時代と現代が、非常に重なりあうことは説明していただきました。これを参考にしながら、われわれはこれから先、どうなるのか。最終的に第一次世界大戦のような、悲劇的な結末が待っているのか。

 第二のポイントは、アメリカは核の先制攻撃ができるようになるとおっしゃった。今度、戦争が起きたときには人類の破滅ですよ。しかし、それが本当に現実になるのかと?」

イングドール「それはわかりません」

岩上「三番目が、大英帝国の覇権がダメになり、次にアメリカが覇権を握った。この次に覇権を取り得る可能性がある国は中国です。中国とロシアが連合すると、彼らが勝つのか、それともアメリカが勝つのか。覇権は交代するのか。それとも、中国やロシアやヨーロッパをめちゃくちゃにして、アメリカが覇権を続けるのか。どちらになると?」

イングドール「長期的に見れば、ヘゲモニー(※4)のための世界戦争の初期段階にあるかもしれません。ここ数年間の中東での動き、イスラム世界に起きたアラブの春、ウクライナの戦争、CIAが資金提供しているイスラム教徒のジハード、アフガニスタンでの戦争。これら全ては、死につつある帝国によるグローバルな攻撃の一部です。米国はこの現実を受け入れることができません。彼らは戦争とカオスを引き起こすという反応しかできません。だから、これが続けば、これは世界大戦の初期段階と呼ぶことができるかもしれません」

  • (※4)ヘゲモニー(hegemonie):特定の人物または集団が長期に渡ってほとんど不動とも思われる地位あるいは権力を掌握すること。(Wikipediaより

岩上「もし、ロシアがアメリカに屈服するようなことがあれば、今はロシアとアメリカとの間でバランスを取り合っているけれども、アメリカの核の一極支配が実現してしまうかもしれない。そして、核の先制攻撃が現実にできるような状態になるかもしれないというのは、大変怖いことです。

 今のロシアとアメリカの力比べは、最終的にどうなると思いますか? ロシアが屈服し、アメリカの核の一極支配が実現すると思いますか? 結果として、核戦争は起こり得ると思いますか?」

イングドール「もちろん基本的にそれは可能ですが、私個人的には、現時点でアメリカの軍部のトップがロシアとの核戦争を許すとは思いません」

イングドール氏、日本へ忠告「ワシントンの奴隷国である限り破壊と低迷があるだけ」

イングドール「皮肉なことですが、ロシアと中国は結婚する前に妊娠してしまったカップルのようなものです。緊密な関係にさせられてしまったのです。ワシントンの外交政策が、彼らが最も恐れるものを作り出しているのです。ユーラシアの統合です」

岩上「この団結したユーラシア、それは中国とロシアですね。それと、それを取り囲んでいるアメリカ、NATO、そして日本。この2つの陣営の、軍事的で、かつ政治的な戦略的な争いは、どういう決着になると思いますか?」

イングドール「アメリカとNATO、そこに日本も含めるかは議論が必要ですが、こちら側は事実上すでに負けています。ウクライナが崩壊し、2週間前にポロシェンコが停戦に合意しました。

 背後ではドイツ政府がワシントンの打開策を準備していました。彼らは停戦の交渉をし、そこにアメリカは呼ばれませんでした。ドイツの産業は、ロシアに輸出しなければならないのです。不況のアメリカに輸出するよりも」

岩上「結局世界は、緊張をはらみながらも大きな破綻がなく、皆が共存していけるのでしょうか? それとも、やはりそういう状態はバランスが崩れて、危険な状態に進んでいく可能性があるのか。どちらでしょう?」

イングドール「個人的な確信から言えば、世界は狂いません。人類の破壊の縁の前で止まるでしょう。そのような戦争が起きれば、地球の生命の終わりになりますから。そして、それが可能であるという多くの兆しが見えています」

岩上「日本は、アメリカにずっとくっついています。でも、日本がもし中国やロシアと、隣の国で仲良くすれば、状況はすごく変わるだろうと思うのですが、ご意見をお聞かせください」

イングドール「そうなれば日本の政治的未来、経済的未来を著しく変えるものになるでしょう。ワシントンは心臓発作を起こすでしょうね。ブレジンスキーが非常に思わせぶりに書いているのですが、日本はワシントンにとって奴隷国です。アメリカに言われたことをやる国です。

 地政学者としての私の意見では、日本は、ワシントンの奴隷国であり続ける限りは、未来がなく破壊と低迷があるだけです。日本が経済成長をユーラシアの経済成長と結びつけるならば、日本には輝かしい未来があります。私の見方では、それが唯一の未来です。それは、中国や韓国やロシアと組むことになるので大変ですが、それは日本の、世界に対する責任です」

前回のインタビュー直後、ウクライナはEUと「連合協定」を発表

岩上「9月12日のインタビューでは、ロシア、そしてウクライナの危機についてお話をうかがいましたが、少し補って質問をしたいと思います」

イングドール「重要なポイントは、ウクライナ政府が市民に対する砲撃を続けていることです。反政府勢力の停戦にもかかわらず、NATOもウクライナ政府に武器を与えています。そして、アメリカとEUはロシアに新たな制裁を課しました。ロシアが停戦の助けをしたにもかかわらず。

 アメリカが政治的解決に関心を持っていないことは明らかです。キエフ政府にも関心を持っていません」

岩上「一週間前(9月12日)にインタビューさせていただいた時、『この停戦に合意した。ということは、これはプーチンの政治的な勝利だ』とおっしゃった言葉が非常に印象に残っています。その意味は、私にはすぐには分かりませんでした。

 しかし、そのインタビューのあとに入ってきたニュースで分かったのは、この停戦の合意のあとに発表されたのは、ウクライナとEUの連合協定。そして、東ウクライナの自治を認めると。この自治を認めるというのは、大変大きな政治的勝利であろうと」

イングドール「EUとの協定の中身は空っぽですよ。今の時点では。ウクライナで、軍事的解決ではなく政治的解決の可能性ができたということが、プーチンにとっての勝利なのです。ロシアとウクライナが経済関係を再度もつ可能性も出てきました。彼らの経済は密接に結びついていますから。

 プーチンだって単純にこの停戦が長く続くとは思っていないでしょう。でも、これによって少なくともロシアがウクライナを軍事的に侵略するつもりがないことが世界に示されたのです」

岩上「前回のインタビューのときには、停戦合意をしたことで、とても楽観的だったような気がするんです。でもこの一週間で少しニュアンスが変わったような気がします。つまり、もっと悲観的といいますか。

 EUは相変わらず武器を送り込み、ウクライナ政府も相変わらず攻撃を続け、アメリカは全く政治解決に興味がない。西側が大変攻撃的であることに対して、とても悲観的になっているのでは?」

イングドール「用心深いのです。それは、先週起きたことのためです。先週、アメリカは新たな対ロシア経済制裁を行うよう、EUに圧力をかけました。NATOはウクライナに武器を送ることを発表しました。オバマもです。ウクライナが必要としているのは武器ではなく、疲弊した経済の再建です。新しい家、水の供給などです。

 ワシントンはヨーロッパの平和に真面目に取り組んでいません。彼らはロシアを破壊したいのですから。これは、日本を含めたユーラシア全体を不安定化させようとするステップです」

「マッキンダーの地政学」の再現と核兵器の脅威

イングドール「ワシントンはユーラシアの混乱を望んでいます。非常に単純です。アメリカの世界における力は劇的に低下しています。ウォールストリートの銀行や、ボーイングなどの軍事産業を支配するようなエリート一派は、アメリカのヘゲモニーに対する挑戦を避けなければなりません。その挑戦というのはユーラシアからの挑戦です。ロシア、中国、上海協力機構の加盟国、イラン、イラク、中東、シリアです」

岩上「この戦略というものは、イギリスがとってきた戦略、呼び方は『マッキンダーの地政学』、あるいは、最近のリアリストたちの言い方だと『オフショアバランシング』。沖合にいて、彼らをユーラシアのなかで分断し、そして互いに戦わせて、疲弊させる戦略ということなのですね?」

イングドール「それがまさに今の状況です。1904年にマッキンダーがイギリスの地政学を作りました。彼の理論の中心は、島国帝国としてのイギリスは、ユーラシアのランドパワーの国々が政治経済的に協力するのを妨げなければならないということでした。これが第一次世界大戦、第二次世界大戦の背景でした」

岩上「しかし、かつてと今が違うのは核があることです。ロシアを挑発するということは、ロシアは最後の切り札で、核を持っているということ。プーチンは、実際に我々は核兵器を持っているんだぞと啖呵を切りました。これは、これまでと違うことですね。

 アメリカとロシアの間では核の均衡(MAD)が成り立っていた。その核の均衡をいまアメリカは崩そうとしています」

イングドール「冷戦期は、米軍はソ連に対して決定的な核の戦略を取ることができませんでした。彼らは核の均衡を保っていました。一方が他方に核攻撃をすれば、他方は反撃し、両者とも破壊されます。

 ジョージ・W・ブッシュとドナルド・ラムズフェルド国防長官以降、アメリカの戦略は、ロシアや中国に対して、核の先制攻撃ができるようになったということです。(先日話した)ミサイル防衛網と呼ばれるものです。

 ミサイル防衛網に、日本も今一部になっていますが、ポーランド、チェコ、トルコ、ブルガリアが参加しています。もしアメリカが、ロシアの核ミサイルに対してミサイルを発射したとしたら、ロシアはもちろん反撃します。そしたら、ポーランドやチェコから、ロシアの核攻撃を破壊するロケット弾が発射されます。アメリカのダメージは非常に小さい。

 ですがこれは、ポーランド、トルコ、ブルガリア、チェコの政治家からすれば非常に馬鹿げています。最初に破壊されるのはポーランド、トルコ、チェコ、ブルガリアでしょう。日本の可能性もあります。でも、アメリカが破壊されるわけではないのです」

世界大戦で不況を乗り越える?! チェイニーやブッシュは「サイコパス」

イングドール「プーチンたちがやるべきことは、ポーランドなどのミサイル防衛を脅威として扱うことです。これがプーチンがやらなければならない唯一のことです」

岩上「非常に危険だと?」

イングドール「非常に大きい危険です。これは『ミサイル防衛網』ではなく『ミサイル攻撃網』です」

岩上「それはどういうことですか? 先制攻撃ドクトリンというものは、ブッシュ・ドクトリンの時に誕生したと言われています。しかし、この下書きが作られたのはもっと前で、ポール・ウォルフォウィッツ等が90年代のはじめにはもう書いていたという風にも聞いています。この先制攻撃ドクトリンという考え方について、説明していただけますか?」

イングドール「もし一方が有利で、彼らがその有利さを利用して敵を破壊したいとするならば、それが先制攻撃になります」

岩上「しかし、核の均衡、MADというのは第二撃があることによって、核の報復を抑止していたんですね。その第二撃、ソ連の原子力潜水艦からの報復をどうやって彼らは抑止するつもりなのでしょう?」

イングドール「正確に言いましょう。ペンタゴンに、全員ではなくとも、精神的に錯乱した人たちが何人かいて、ワシントンにはサイコパス、根本的に馬鹿で自分たちがやることの結果を予期できないような戦争屋がいます。ディック・チェイニー、ジョージ・W・ブッシュといった人たちです。ネオコンですね。

 こういうタイプの人々が、1930年代に大恐慌から抜け出すためには、世界戦争が良いのだと考えていました。彼らは、ヨーロッパでの戦争をあやつり、アジアでの戦争をあやつりました。

 今、アメリカは1930年以降でもっとも大きな不況です。同じように考える人々がいて、前回やってうまくいったことを、今回も同じようにやろうと単純な考えを持つようになってきています。つまり、世界大戦という考えです。でもそれは良い考えではありませんね。

 彼らは、彼らのための代理人、アクターを利用します。中国に対立するインドネシア、フィリピン、ベトナム、日本。ロシアに対立するウクライナ。イラン・シリア・イラクに対立するサウジアラビアとカタール。それらの国を利用して、世界規模で戦争の状態をつくりあげています」

ロシアと中国の通貨同盟「非ドルのシステム」を構築

岩上「大変大きな問題になってきました。しかし、ロシアも黙っていません。素早い動きを見せました。その一つは中国とのエネルギー同盟です。天然ガスのパイプラインを敷いて、40兆円の取引を中国とロシアで決めました」

イングドール「4000億ドルですね」

岩上「それだけではなく、彼らは軍事的な協力関係も深めていますし、さらに最も重要かもしれないのは、通貨同盟も築こうとしていることです。非ドル化政策を進めようとしています。貿易はなんでもドルで決済されていましたが、そのドル決済を止めて、人民元を使おうと」

イングドール「それとルーブルですね」

岩上「こんな話に西側諸国は誰も乗らないだろうと僕は思っていましたが、驚いたことに、最初にこの話に乗ってきた西側国はなんとイギリスです。イギリスがソブリン債とか、あるいは貿易の決済に人民元を使い始めるということを発表しました。

 この中国とロシアの同盟、これはパイプライン、つまり資源エネルギー。それから軍事的な同盟、そして通貨の同盟、これは成功するでしょうか?」

イングドール「さらに、先週、ロシアと中国は、国際支払いシステムであるSWIFTに代わるシステムを作ろうと議論しました。アメリカの銀行に支配されているヨーロッパにおいてです。

 さらにウォールストリートの格付け会社ムーディーズやS&Pに代わる、独立した格付け会社を作ることも議論しています。だから、中国とロシアは、包括的な非ドルのシステムを作ろうとしています。これは賢いやり方です。

 二つの国がアメリカ政府の国債を最も持っています。第一位が中国、第二位が日本です。

 中国がドルを使う限りは、ドルで中央銀行に蓄積を行い、安全なアメリカの証券に投資する以外の選択肢はありません。日本も同じです。このため、ワシントンは将来的に中国を弱めるために資金提供することができました。これは逆説的です。

 逆説的だというのは、中国は自らの破壊のために資金を出したくはないからです。ですが、皮肉なことに、アメリカの資金をドルで蓄積することにより、オバマ政権はペンタゴンの軍事予算に資金を出すことができます。1兆ドルの巨大赤字を持っているにもかかわらずです。

 誰もアメリカの負債を買おうとはしません。経済が悪化し、負債が大きくなっています。アメリカ政府は破産しています。国債はこの10年間、双曲線を描くように急増しています。だから、誰かがアメリカの負債を買わなければいけません。

 現在まで、最もこの負債を買っていたのは中国と日本でした。彼らは貿易においてドルの余剰金を持っていたからです」

中国「甘い言葉には騙されない」、アメリカからの戦略的な自立

岩上「そこのパラドックスはよく分かりました。けれども、その中国とアメリカの関係自体にパラドックスがあるんだろうと思います。

 というのは、中国とアメリカは経済的に深い結びつきがある。アメリカは相当中国に投資しています。世界をG2でまとめていこうという風なことも言ってきた。あるいは、こういう経済体制をチャイメリカと呼んだりする人もいる。

 こうやって、非常に経済依存をしている。他方で、アメリカは中国を、例えば日本を使って包囲するようなこともしていると。これは、どういう戦略なのか。和戦両様って言いますかね。平和共存と、それから、もし自分たちの覇権を脅かすのだったら叩いてしまおうという、両方の戦略ということなのでしょうか?」

イングドール「パラレルなのです。一方で中国に対して軍事的脅迫をしています。他方で経済協力があります。そうして中国のリーダーたちを混乱させています。ですが、これはうまくいっていません。これは重要です。私は最近、中国の人と話しましたが、彼らはワシントンのゲームをよく理解していました。『それには騙されない』、と。

 日本では80年代に不動産バブルが起こり、1990年代から産業が崩壊しました。そうして負債が生まれました。中国は日本の経験を見ているので、『結構です。私たちはワシントンとG2になりたくない』と言うのです。ワシントンは望んでいますが、中国は望んでいません」

岩上「G2というのはつまり、アメリカは甘い言葉をかけているけれども、実はアメリカの罠だと」

イングドール「もちろんです。良いことのように聞こえますが。2008年以来、中国がやっていることは、戦略的に、そして非常に静かに、非常に効果的に、アメリカから自立することです。ロシア、ドイツと新しい関係を築いています。今、中国の主な貿易相手国は、もはやアメリカではなくEUです。アメリカとの貿易量は落ちてきています。

 イギリスは歴史について鋭い感覚を持っています。彼らの相手のワシントンやニューヨークの銀行をみて、風は西にではなく東に向かって吹いていると考えています。それで国債を人民元建てにしたのです。これは歴史的なことです。こういうことをした最初の国です。イギリスは中国と良い関係を望んでいるのです。それに中国のお金も欲しい」

「1939年以降、彼らは狂った」

岩上「イギリスの態度は大変驚かされるとともに、どちらに風が吹いているのかを感じさせる出来事でした。もし平和が続けば、ヨーロッパと中国が結びつく。しかも、間にロシアがいて。この三者が資源を持っていて、経済力、工業力があって、そして消費力や文化力がある。これらが全部一体になれば、大変大きなパワーになります」

イングドール「非常に大きなパワーですね。だからワシントンの人々はこの大きな力を恐れているのです。それに対するワシントンの答えが、あらゆる場所で戦争を起こそうとすることなのです」

岩上「なぜ、同じ地球のなかで、アメリカはユーラシアと共存しようとしないのでしょう。平和的な共存をしようとしないのでしょう?」

イングドール「私自身、アメリカ人として、毎日、自分にそれをたずねています。少なくとも1939年以降のアメリカの政治をコントロールしている一派は、アメリカの人々の幸福に関心を持っていません。

 彼らが理解できるのは、パワーだけです。彼らは自分たちを世界の支配者と考えています。帝国が突然あらゆるところで崩壊し、彼らは狂ったのです。心理学的に言って、狂った」

岩上「大英帝国も100年前、経済的に瀕死の状態でした。彼らは、ドイツの登場とそれからヨーロッパおよびオリエントの結合、これを防ごうとした。その結果、第一次大戦が起こって、イギリスは覇権国ではなくなったけれども、イギリスから、覇権が移ったアメリカ、同じアングロサクソンの国々で、結果として100年アングロサクソンの人たちや、あるいはその資本のヘゲモニーというものが続きました」

イングドール「イエスでありノーですね。アメリカのリーダー層とイギリスのリーダー層の共通の目的がありましたが、対立する目的もありました。誰が帝国の長になるのか。アメリカなのか、イギリスなのか。これは非常に大きな権力闘争です。

 イギリスのエリート、リーダー層は、帝国の終わりとみなすことを拒絶していました。野蛮なアメリカの従兄弟が、イギリス帝国の役割を引き継ぐということを拒絶したのです。

 彼らはそれを信じられなかった。だから1919年から1945年まで争いました。この問題を解決するために、二つの大戦があったのです」

アメリカのリーダー層は人種差別主義者、非白人の人口削減計画

岩上「今度のドラマはどんな形で展開すると思いますか? 今度は、イギリスの野蛮な従兄弟みたいなものは存在しない。次の覇権国の候補は、中国です。

 確かに、中国にアメリカの資本は入っているけれども、中国は中国です。アングロサクソンではないし、親戚でもない。もしこれが交代するとなると、イギリスとアメリカの間でのフリクションなんていうレベルではないでしょう。彼らは『では中国にバトンを渡すか』という風になるでしょうか?」

イングドール「いえ。アメリカのリーダー層は、根本的に人種差別主義者です。日本はアメリカのエリートたちに平等に扱われていると考えてはなりません。彼らはあなたたちのことを下の階級だと思っています。アングロサクソンの白人ではありませんから。中国も同じです」

岩上「強いレイシズムを持っているということですね。これ、非常に重要です。これまでは非常に合理的な話でした。経済の話、それから軍事の話も、ある意味、合理性、論理的な話です。

 しかし、レイシズムの話が入ってくると、非常に一挙に非合理的で、だけれども非常に強いパワーを持つ要素です。そのアングロサクソンの持っているレイシズムについて、もう少しお話ください」

イングドール「アメリカの一般市民はそうではないですが、エリート層は非常に人種差別主義的です。自分の遺伝子は地球上の他のどの民族よりも優れていると思っています。それは人種差別のイデオロギーです。

 彼らは遺伝子学的な考えを持ち、非白人を殺す方法を作り出しました。一つがワクチン開発。このことは本で詳しく書きました。二つ目が、アフリカやアジアにおける戦争。三つ目が、農業です。遺伝子組み換え食品は毒を入れているのです。大豆などです。今、流通しているほとんどすべての大豆は遺伝子組み換えで、科学的な毒が含まれています。それを食べた人や動物は、非生産的になり、子孫を残すことができないのです」

岩上「大変恐ろしい話です。しかし、こういう人口削減計画のような話や遺伝子組み換えの話が、有色人種に毒を与えているんだというような話は、多くの人が『そんなバカな、それは、おかしな陰謀論なのではないか』と反論するだろうと思います。

 それを、そうではないんだと説得するためには、説得力のある証拠とか、ロジックが必要だろうと思います」

イングドール「そうですね。私も信じられませんよ。ですが、多くの証拠があります。このことは非常に重要なので、本に書きました。その本は14カ国で翻訳されています。

 これは非常に深刻な問題なので、別のインタビューが必要なくらいです。アメリカ政府が資金を出して開発している、けいれん用のワクチンがあります。妊娠中の女性がけいれんを止めるためにこのワクチンを使うと、子どもを産めなくなってしまいます。これは一つの証拠です。

 このワクチンは、男性には与えられず、第三世界の国の女性にだけ与えられます。『これはあなたを助け、健康にします』と言われるのです。

 二つ目の例は、アメリカ政府の支援を受けたアメリカの企業がさまざまなトウモロコシを作っていますが、男性がそれを食べると、その精子は子どもを作ることができなくなってしまいます。

 このことを書いたものを読むことはできませんが、私は『破壊の種子』という本のなかで書きました。これはワシントンやアメリカのエリート層のトップ・シークレットなのです」

安倍政権とネオコンの関係―「集団的自衛権」という危険な展開

岩上「ロシア、中国について、いろいろお話になっていらっしゃいましたけれども、『China in Gefahr』これはドイツ語の本です。実はドイツでずいぶん本を出されているんですね。

 それからもう一冊。これは新刊。一番新しい、6月に出たそうです。『アメリカの聖戦(Amerikas heiliger Krieg)』というタイトル。これはイスラムを敵視するアメリカの政策について。これは非常にホットイシューだろうと思います。もし、この本に書いていて、まだ足りない点があれば補足してください」

イングドール「日本の視聴者の方々が理解しなければならない重要なことは、ここ5、6年のペンタゴンの政策やCIAの政策が、日本と中国、ベトナムと中国、フィリピンと中国を敵にしようとするものであることです。敵対させることが、アメリカの支配層の関心です」

岩上「これは日本人にとって大変重要なポイントです。日本ではいま、戦争のできる体制に、猛スピードで移行しようとしています。集団的自衛権。そうしたものを、正規の手続きによらず、憲法の解釈を変えて、日本が自国の防衛ではなく、他国の利益のために戦争をする国になろうとしているわけです」

イングドール「これは、第二次世界大戦中に、アメリカの『戦争省』が『防衛省』に名前を変えたことを思い起こさせます。これは日本にとって非常に危険な展開です。ワシントンの戦争屋、ネオコン、ディク・チェイニーやポール・ウォルフォウィッツの仲間たちを助長するものです。日本や世界にとっては非常に危険なことです」

岩上「なぜ、日本はそんな危険な道に向かって、自分たちのレジームをチェンジしようとしているんでしょう? 例えば、今の安倍内閣は、ナショナリズムを刺激しています。私は、彼は本物のナショナリストではなくて、本物のパトリオットでもなくて、実はアメリカの言うことを聞いているだけの政治家ではないかと疑っています。

 日本のこの政治状況がどういうメカニズムで動かされていると思っているのか、ご意見を聞かせてください」

イングドール「私自身、知りたいですね。ここ5年間日本で起こっていることを見て、私はただ頭を掻きます。どうして日本のような美しい国が、自身を破壊するようなことをするのだろうか、と。

 私が思いつく唯一の答えは次のことです。

 日本がドイツと同じように第二次世界大戦で負けました。ダグラス・マッカーサーによるアメリカ占領がありました。マッカーサーを手伝ったのがジョン・ロックフェラーでした。

 アメリカ人は、日本の政治の内部に多くのコントロール・ポイントを作りました。これが、現在の安倍政権でも機能しています。これが唯一、私が説明できることです。どうやって機能しているのか。

 私が分かるのは、安倍一派はワシントンと緊密な関係を持っていること、民主党のオバマというよりは、ネオコンの戦争屋と関係を持っていることです。それはボーイングなどの戦争産業とも結びついています」

岩上「先ほど、中国で、中国の高官とディスカッションしてきたと。非常に大事な話です。中国はとても賢くて、アメリカの戦略を見抜いていると言いましたが、日本国内では今、非常にプロパガンダが行われていて、対中国ナショナリズムが過激化しています。この日本の動きを中国は、アメリカにそそのかされていることを理解していると」

イングドール「知識人や大学の人やシンクタンクの人は、そうだと思います。日本政府が南シナ海の島を購入できるという発表を聞いた中国政府の反応は、非常に慎重なものでした」

岩上「この火付け役になったのは石原慎太郎という政治家です。彼は、ヘリテージ財団で、この尖閣を買収するという発言をしました。ヘリテージ財団のブルース・クリングナーという研究員は、その年の11月、日本と中国が非常に仲が悪くなったのを見て、今、アメリカが政治的な目的を達成するための絶好の機会であるというレポートを発表しました。こうした動きについてもご存知でしょうか?」

イングドール「知っています。それが、今起こっていることなのです」

イスラム国とは誰なのか? 処刑ビデオは、ハリウッドで作られた?!

イングドール「『アメリカの聖戦』のポイントは、アメリカの諜報機関と狂信者、ジハーディストの同盟の歴史です。イスラムのジハーディストは、世界中の15億人のイスラム教徒のうちの1%に過ぎません。彼らは、アラーのためにジハード、聖戦で死ぬことを最高の生のあり方だと信じている人々です。死のカルトなのです。

 私は、第二次世界大戦の時代からを記述しました。そのとき、CIAはソ連のジハードと連携しました。赤軍と闘うためです。その後、70年代、80年代にアフガニスタンで赤軍と闘うために、サウジのオサマ・ビン・ラディンなどとともに、ジハーディストの訓練をしました」

岩上「そのストーリーはよく知られていますが、今、イスラムで注目されるのはIS、イスラミック・ステートです。イスラム国ですね。これが急に大きくなったことに皆、驚いています。そして、彼らがやることがあまりにも残酷であることにも。

 ヨーロッパの人も、ドイツの人々も、自分の身近なウクライナ危機よりも、ISのほうに関心があったりする。日本人もそうです。このISに対して、アメリカはさっそく空爆を行い、そして有志国連軍を10カ国で作る。NATOが加わっていく。日本も将来的には加えられる可能性がある。

 ISとはどういう存在で、一体何が、イラクやシリアで起こっているのですか」

イングドール「ISというのは、CIAとイギリスのMI6(秘密情報部)、それからイスラムのジハーディスト間の『結婚』から生まれた産物です。ISは、かつてはイラクでアルカイダと呼ばれていました。ここ2年で、ヨルダンやトルコの米軍基地で秘密裏に訓練されました。彼らは軍から、アメリカの兵器を与えられました。

 丸1年の間、バグダッド政府は、ISに対抗するためアメリカに軍事的支援を要請していました。オバマは軍事的支援を拒否しました。今、ISは、1年前のダマスカスでの化学兵器の使用によっても、アサドやイラク政府に対してなしえなかったことをさせています」

岩上「本当にびっくりする話です。それから、ヨルダンとトルコで訓練されたという話も本当に驚きました。

 ISというのは偽物なのか。それとも、過去、そうであったように、彼ら自身は本気でやっているんだけれども、そこにアメリカの手が入っているというようなものなのか。

 イスラミック・ジハーディストたちは、本当にカリフ体制を中東全域に作りたいと本気で考えているのですか。それとも、アメリカが中東を混乱状態に陥れるために、使い捨ての駒として使っているのか」

イングドール「アメリカ人ジャーナリストの処刑のビデオについて、プロのアナリストは、あのビデオがハリウッドで作られたと結論づけました。内容はフェイクで、ナイフや血も嘘です。

 このビデオでは、アメリカ人ジャーナリストが頭を持ち上げられて、首にナイフを突きつけられても反応していません。首にナイフを突きつけられれば、誰でも逃れようとするでしょう。もっと恐れる反応をするでしょう。このフェイクのビデオは、NATOによる軍事的侵略を可能にする一歩なのです。彼らは一年間、それができませんでしたから」

岩上「なるほど。ちょっとそれは本当に驚きなのですが、それは何か、絶対確実だという証拠がありますか?」

イングドール「あります。このビデオを研究しました。イギリスのメディアでは、完全にイギリス英語のアクセントで『ジハード』としゃべる処刑人がジョークになっています。諜報機関も関わっていると思います。

 私が確信しているのは、イスラム同胞団というものは、別々の国で、別々の姿で、シャリーアというイスラム法にもとづいて行動していることです。彼らはカタール政府から資金援助を得ていると考えられています。それは、カタールと、その裏にいるアメリカが、中東からアジア、中国、日本へのエネルギーの流れをコントロールしたいからです。そのための方法です」

カタール政府の背後にいるアメリカとイギリス、エネルギー事情に利用された福島原発事故

岩上「背後にエネルギーの戦略があるということなのでしょうか? もしかすると、先ほどまでずっと話してきた、ロシアの天然ガスの問題。そのロシアの天然ガスが中国に供給されたり、ヨーロッパに供給されたりするのをアメリカが壊したい、その関係を壊したいとおっしゃいましたが、そのことと、この中東の混乱というのは関係がありますか?」

イングドール「ロシアはかつて、シリアのアサド政権と同盟関係にありました。これは数十年前の冷戦時代にイラクと同盟にあったことにさかのぼります。

 アメリカがシリアのアサド政権を攻撃するのに対抗して、ロシアはイランと同盟を結びました。ロシアは地中海に海軍基地を置いていますが、それはシリアのタルトスにあります。ですから、ロシアにとってこの地域全体が非常に重要です」

岩上「中国も日本と同様に中東の石油に依存しています。日本は9割も中東に依存している。そうすると、マラッカ海峡を通るシーレーンに依存するわけで、ここを押さえれば、中国も日本もすぐにギブアップなんですね。チョークポイントがある。

 ですが、このシーレーンではなく、陸路でエネルギーが入ってくるようになると、中国は、ずっと安全になるわけですね。アメリカとしては、ユーラシアの内陸にエネルギーの輸送路ができるということを食い止めたい。中国をコントロールするためにも、もちろん日本をコントロールするためにも。そういう戦略があるのではないかなと思ったのですが、いかがでしょう?」

イングドール「LNGは、主に中東からマラッカ海峡を通って日本と中国にきます。サウジアラビアやイランなどからの石油も同じ、マラッカ海峡を通ります。これは日本と中国のエネルギーの安全にとっては弱点です」

岩上「日本は原発事故のあと、原発を止めて火力発電所を動かしました。そのために、世界一高いLNGを買わされています。とりわけカタールから。そのために、日本は史上最高の貿易赤字になりました。これは、まさに今、おっしゃっているような話とリンクするのでしょうか?」

イングドール「そうです。カタールのアミールは日本が大好きです。彼はフクシマの惨事を利用しました。カタール政府の裏にはワシントン政府、イギリス政府がいます。中東におけるアメリカの主要な軍事基地は、カタールの首都、ドーハにあります」

西に向きタイタニック号のように沈むのか、東を向いて経済発展を遂げるのか

岩上「日本人としては大変、東アジアの危機のことが心配になります。日本と中国の関係が悪化したときに、戦争になる可能性はどのぐらいあるとお考えですか?」

イングドール「中国と日本の間の戦争は起こってほしくないと思います。そのような戦争の可能性を考えたくはありません。自民党や安倍首相の周辺にはいないですが、平和が戦争に優越すると理解する強いグループがいると思います。だから私は慎重にですが、楽観しています」

岩上「世界が真っ二つに分かれてきているような感じがします。それが正しいかどうか分かりませんが。その場合、日本はこれからどうなるのでしょう。

 ユーラシアの端にいる国として、ユーラシアと、ユーロアジアと共に生きるのか。それともアメリカと一緒に心中するようなことになるのか。この日本の運命と、世界の運命について、これからの世界はどうなるのか、日本はどうなるのか、考えをお聞かせください」

イングドール「日本の未来のジレンマをうまくお話になったと思います。ドイツなどのヨーロッパにとっても同じで、アメリカと共に西に向きタイタニック号のように沈んでいくのか、中国やロシアや中東の東に向き、今後100年、共に大きな経済発展をとげるのか、という選択肢があります。

 日本も同じです。日本ではカミカゼと言いますね。非常に慎重に使わなければいけない言葉ですが、『カミカゼ自殺』。今、中国やユーラシアと共に進むのか、アメリカの戦争屋と共に進むのか。どちらを選ぶのか私には分かりません。日本が決めることです。

 個人的には日本の人々は、第二次世界大戦のときのカミカゼ特攻隊の人たちより、非常に頭が良いはずだと思います」

愛国者であれば、自国の間違いを批判し、変えさせようと努力するもの

岩上「最後に、なぜドイツでお暮らしなのかということだけ、日本の皆さんに、あるいはドイツの人たちにも、きっとメッセージがあると思いますので。たぶんドイツが住み心地がいいからなのでしょうけれども」

イングドール「1980年代にニューヨークからアメリカ国民として来ました。ドイツで経済ジャーナリストとして働くためです。それ以来ここに住み、8冊の本を書きました。そのうち7冊がドイツで出版されています。ある意味では、私は同じアメリカ人の仲間を愛していましたし、私も愛されていました。

 突然、ネガティブなことがワシントンで起こったのです。ここ25〜30年くらいのことです。私はアメリカ人ですが、自分の国を愛する愛国者であれば、自国が間違いを犯したら批判し、変えさせるものだと思います。私が著作でやっているのはそのことです。

 私はドイツにいて、ドイツ人の妻と結婚してずいぶん経ちます。だから長くここにいるのですが、ここにいることで、単にアメリカにいるアメリカ人の目よりも広い観点から世界を見ることができます。そこに価値があると思います。

 アメリカ人は今、世界がアメリカをどのように見ているか知る必要があります。ほとんどの場合、非常にネガティブなことが見えてきます」

 これほど深い知識をお持ちの方とお話するのは光栄でした。それほどあることではないから。あなたは私の世界を理解されました」

岩上「とんでもない。You understand my worldとおっしゃいましたけれども、It’s a same worldって言いますかね。Our Worldなんです。

 あなたが見ているものと僕が見ているものは同じものです。もちろんあなたの分析は非常に深いです。とても尊敬しています」

IWJの取材活動は、皆さまのご支援により直接支えられています。ぜひ会員にご登録ください。

新規会員登録 カンパでご支援

関連記事


「ウクライナ危機は「米国によるユーラシア不安定化のステップ」 イングドール氏が警告、東に舵を切れ! 「ワシントンの奴隷国である限り破壊と低迷があるだけ」〜岩上安身によるインタビュー 第480回 ゲスト F・ウィリアム・イングドール氏」への3件のフィードバック

  1. しぶやのぶこ より:

    イングドール氏の発言は、「目からうろこが落ちる」あるいは「目が点になる」ような内容だった。
    特に、遺伝子組み換えトウモロコシやワクチン接種などに不妊化の陰謀が隠れているとは思わなかった。
    著書が中国でベストセラーになっているというのもすごいし、日本でもこういう本が読めるというのも知りませんでした。
    氏の著書を購入して読んでいるところです。

  2. 第一次世界大戦開始に間違いは? より:

    面白そうな内容なので記事を読んで映像を見ようと思ったのですが、第一次世界大戦の戦争勃発についての見方にもう少し新味が欲しいと思います。ドイツがロシア戦を始めたのはご指摘のように鉄鋼技術が進んだことと英露関係の変化にあるとは思いますが、イギリスとではなく、「ドイツとオーストリア」との同盟関係など細かく書かれた『八月の砲声』第6章と第7章からみると、「秘密のNATO」に基づく第一次世界大戦勃発については訂正が必要と思います。
    もちろん、このことは、イングドールさんの趣旨を損ねない程度のことと思いますが。

  3. うみぼたる より:

    「フル・スぺクトラム・ドミナンス」という言葉を、映画のCMで聞いたことがあります。
    311以降、私はほとんどテレビを見ないのでそれ以前の話になりますが、全く意味がわからないので記憶に残ってました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です