「リニアと原発はセットで輸出可能。これから人口減少が進む日本での採算より、海外への売り込みを狙っている」──。
2014年9月13日、「ストップ!リニア山梨大会」が、山梨県甲府市にある敷島総合文化会館で開かれ、ジャーナリストの斎藤貴男氏が「安倍政権と原発・リニア」と題して講演した。経産省が2007年に打ち出した「原子力立国計画」が蘇りつつある、と指摘する斎藤氏は、メリットの薄いリニア中央新幹線を国が推進する背景として、インフラシステム輸出や集団的自衛権との関係など、多角的につながった安倍政権の思惑があることを論じた。
- 主催挨拶 川村晃生氏(リニア・市民ネット山梨代表、慶應義塾大学名誉教授)「リニアの現状と課題」
- 講演 斎藤貴男氏(ジャーナリスト)「安倍政権と原発・リニア」
- 沿線住民ネットワークの方々の報告と意見交換
- 収録 2014年9月13日(土)13:30~17:00
- 配信 2014年10月5日(土)18:00~
メリットがあるとは考えられない、リニア中央新幹線
はじめに、主催者として開会挨拶を述べた川村昱生氏は、リニア中央新幹線について、「事業としてのメリットがないまま、議論が深められることもなく、環境アセスメントもずさんなまま進められている」と指摘し、それにもかかわらず、今月から来月にかけて着工の認可が降りるであろう、と表情を曇らせた。
一方で、一部の国会議員や若い世代の人々、フリージャーナリストたちが、リニアの問題を注視し始めたことに期待を寄せ、「いろいろな形でリニアが抱える問題を、訴訟なども含めて提起していく。リニア問題は、市民運動レベルから政治レベルで考える方向にシフトしている」と語った。
続いて、斎藤貴男氏の講演に移った。「リニア中央新幹線にメリットがあるとは、とても考えられない」という斎藤氏は、トンネル工事によって出る残土の処分地がないこと、水源への影響や生態系破壊の可能性などについて懸念を示した。
また、旧国鉄の債務を引き継いだJR東海に、総事業費9兆3000億円を出資することは不可能であるとし、「国レベルでの融資は免れないだろう」と指摘した。その他にも、騒音、振動、電磁波など、考えられる問題点を挙げていった。
国は福島第一原発の事故の教訓から、何も学んでいない
デメリットの多いリニア事業が、なぜ、強行されるのか。斎藤氏は「第一義的な要因として、建設業界を支持基盤に持つ自民党の復権がある」と解説した。
次に、「エネルギー基本計画や集団的自衛権などの文脈から、リニア事業が気になり始めた」という自身の問題意識を語る中で、福島第一原発事故のあと、政府が出したエネルギー基本計画に「核燃料サイクルの再開、推進」という記載があることに注目したとして、こう続けた。
「エネルギー基本計画を見ると、まるで『脱原発』は、もう忘れられたような書き方をしている。この動きは、2007年に経産省が打ち出した『原子力立国計画』が再び蘇りつつある、と読み取れるだろう。国は福島第一原発事故を風化させて、なかったことにしようとしている」。
リニアと原発のセットで輸出を企む
斎藤氏はまた、国内の原子力政策推進の動きと同時に、原発輸出も国策としてはっきり打ち出されている点を解説し、「発展途上国に、原発を中心に据えたインフラシステムを川上から川下まで輸出する。これを、官民一体のオールジャパン体制で受注しようとしている。これがアベノミクス第3の矢の中核だ」と語る。
その文脈の中で、「リニアと原発はセットで輸出可能」と斎藤氏は言及。これから人口減少が進む日本での採算より、海外の市場を狙う動きが強化されていると言い、「原発の再稼働も、リニアの国内事業も、実は原発メーカーやJRのためのショールームの機能を有している」と指摘した。
「経済侵略」のためには9条が邪魔
インフラ輸出の中核は原発とリニア?~リニア問題の背景に潜む安倍政権の思惑 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/174585 … @iwakamiyasumi
原発の再稼働も、リニアの国内事業も、海外の市場を狙うための見本市だ。日本は資本主義の実験場と化している。
https://twitter.com/55kurosuke/status/577957279841935360