日刊IWJガイド・非会員版「岸田内閣の日中デカップリングは、日本国内の右派観客向けの『ミニプロレス』! 日本製鉄、トヨタと中国・宝山を提訴! 元祖『経済安全保障』国家の思想を思い出せ!」2021.10.16号~No.3320号


┏━━【目次】━━━━━
■はじめに~岸田内閣の日中デカップリングは、日本国内の右派観客向けの「ミニプロレス」! 日本製鉄、トヨタと中国・宝山を提訴! 元祖「経済安全保障」国家の思想を思い出せ!

■10月も前半が終わります! 9月のご寄付・カンパは月間目標額の56%にとどまり、185万円以上も不足に! 今期第12期のスタートの8月と9月の月間目標額の不足分は合計272万3500円に! 10月のご寄付・カンパも13日間で月間目標額420万円の6%にとどまっています! どうか経済危機が深刻化するIWJに皆さまの緊急のご支援をお願いいたします!

■【中継番組表】

■世界最大の半導体受託生産メーカーTSMC(台湾積体電路製造)が熊本に新工場を建設! ソニー、デンソーが参画、政府も補助! 日本はついに「産業の空洞化」を通り越して台湾メーカーの「普及品」製造工場を誘致する地位にまで転落! 岸田総理は会見で「経済安全保障に寄与する」と「手放し」で大歓迎!

■新しい資本主義実現会議は、「成長戦略会議」2.0! 新しい資本主義実現会議の有識者メンバーに貧困問題や本当に公平な分配を議論する専門家や困っている労働者の代表がいない! IWJは内閣官房に直撃取材!

■<IWJ取材報告1>枝野代表が市長選を制した横浜市で衆院解散後最初の訴え!「あなたが動けば政治が変わる!」「命と暮らしを支える役割を果たしてこなかった政治を変えよう!」~10.14立憲民主党 街頭演説(神奈川大作戦)

■<IWJ取材報告2>共産党、コロナ支援に収入減少者へ一人10万円、年収1000万円以下へ段階給付など政策(総合版)発表! IWJ記者の質問に「恒久財源のプライマリーバランスは回復を目指す」~10.11日本共産党・志位委員長総選挙政策発表会見

■<IWJ取材報告3>「総裁選での公約だった『健康危機管理庁』の創設はなぜなくなったのか?」IWJ記者の質問に「新しい行政組織の形にするかどうか」「まずコロナ感染症の『全体像 』をお示ししてから」と山際大臣! 今さらそこから!? ~10.15山際大志郎 経済再生担当大臣記者会見

■<タイムリー再配信告知>本日夜7時より、「いつでも独裁が可能!? いつまでも独裁が可能!? 憲法で堂々と独裁を肯定!? より危険性が高まった自民党新改憲の緊急事態条項!~5.21 岩上安身によるインタビュー 第872回 ゲスト 永井幸寿弁護士<エッセンス版>」を、改憲がかかる今回の衆議院選挙に向けて、フルオープンで配信します!ぜひ御覧ください!! 岩上安身が岸田総理あてにメールで送った「緊急事態条項」の危険性についての質問もあわせて、ぜひ御覧ください!!
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■はじめに~岸田内閣の日中デカップリングは、日本国内の右派観客向けの「ミニプロレス」! 日本製鉄、トヨタと中国・宝山を提訴! 元祖「経済安全保障」国家の思想を思い出せ!

 おはようございます。IWJ編集部です。

 岸田文雄内閣の最大の問題の一つが、中国との経済的関係の深さ、重要性を認めながら、中国との経済的デカップリングを進めるための経済安全保障大臣ポストを新設するなど、対中国との関係で融和の方向性を探るのか、敵対の方向性なのか、どちらの方向に傾くのか、判然としない点です。

 「経済安全保障」という考え方が広まったのは、米国のトランプ政権が、コロナ禍のような国家的緊急事態において、マスクなどの医療物資のサプライチェーン(供給網)を中国に大きく依存していたことで、迅速な国内対応ができなかったという反省から始まっています。

 そこからさらに現在では、バイデン政権による、中国が世界の生産の6割を占めているレアアースなどのサプライチェーンの見直しにまで至っています。レアアースは、ドローンやAIなど、現代兵器に欠かせないエレクトロ部品の製造に必要不可欠なキー・マテリアル(鍵となる物質)です。

※レアアースとは 中国が6割生産、日本の産業に不可欠(日経新聞、2021年3月12日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE09C350Z00C21A3000000/

 「経済安全保障」という考え方が、強調されるようになった経済活動、とくに、グローバリズムによってサプライチェーンが、国境を越えて広がり続けていますが国家の安全保障はEUなどをのぞいていまだに多くの国々は国家単位で組み立てられており、国境を越えた経済的な結びつきと、国家単位の安全保障はあちこちで齟齬をきたしているという現実が背景にあります。

 コロナ禍をきっかけに浮上した考え方ですが、新しいものではありません。国家の安全保障を左右するのは軍事だけに限らず、食糧やエネルギーのサプライチェーンも、同様に、国家の安全保障を左右するからです。食糧もエネルギーも、海外に大きく依存する日本は、元祖「経済安全保障」国家です。これは戦後日本の基本的な外交思想です。

 米中の経済的な相互依存は、生産・消費関係だけでなく、研究開発の分野でも近年、深まりつつありました。コロナ禍で明らかになったことの一つは、コロナウイルスに新しい機能を獲得させる機能獲得研究を米中で共同研究していたという事実です。

※日本のマスメディアがほとんど報じない一大事!コロナ禍は「米中合作」!? 米中対立が激化してゆく中、新型コロナウイルス武漢ウイルス学研究所流出説が再び急浮上で米国内騒然! 米国のジョー・バイデン大統領は情報機関に再調査を指示! この動きに、どんな政治的思惑が!? 2021.6.26
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/493630

※<武漢ウイルス学研究所漏洩説続報!>新型コロナは自然界に存在しないウイルスだった!? 米国内で大騒ぎとなっている新型コロナ人為説と武漢流出説再燃に、自然発生説サイドから反論! 科学的議論は必要だが、悪質な「政治的利用」は許されない! 2021.7.8
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/493520

 こうした米中の強固な経済的結びつきを踏まえ、米中対立は「プロレス」だとエコノミストの田代秀敏氏は指摘しています。

 この米中による「プロレス」をそのまま、訳も分からずに、今さらなぞっているのが、岸田政権の経済安全保障大臣ポストであると言えるでしょう。

 言ってみれば、日中デカップリングは、「ミニプロレス」でしかありません。

 米国も、日本も、この「政治的プロレス」には、熱狂する観客がついています。その観客は、中国を敵視する国内右派層です。

 日中の「ミニプロレス」の舞台裏が垣間見えたのが、日本製鉄によるトヨタと中国・宝山の提訴です。

 日本製鉄は10月14日、ハイブリッド車など電動車のモーター材料となる鉄鋼製品で自社特許権を侵害されたとして、トヨタ自動車と鉄鋼世界最大手の中国宝武鋼鉄集団の子会社、宝山鋼鉄を東京地裁に提訴しました。

※日本製鉄、トヨタと中国・宝山を提訴 鋼板特許侵害で(日経新聞、2021年10月14日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC1466O0U1A011C2000000/?unlock=1

 日経新聞は、「国内の鉄鋼大手が大口取引先である自動車大手を知的財産権侵害で訴えるのは異例だ」と伝えています。

 日経のこの記述はピントが外れています。この提訴が「異例」であるとしたら、それは鉄鋼メーカーが自動車メーカーを訴えた、ということではなく、原告が日本メーカーで、被告が日本メーカーと中国メーカーである、という点です。日中の大企業が束になって提訴されているであり、また、日本企業が技術や知財を盗まれたとして訴えているという単純な話ではなく、日中の経済的な結びつきが、これまでとは別次元のレベルになっているということでしょう。

 日経新聞は、日本製鉄が、トヨタも提訴した理由について「特許権に抵触する電磁鋼板を使い電動車を販売したことは、当社(日本製鉄)の特許権に抵触していると判断した」と報道しています。

 これは、トヨタの、電動車のモーターの回転効率を左右するのが宝山鋼鉄の電磁鋼板だと、日本製鉄が認識しているということです。宝山鋼鉄の電磁鋼板がなければ、トヨタの電動車は、成り立たないということです。

 これは、日中間にフラットな分業が存在するのではなく、階層的な分業が存在し、その階層上位の技術は、すでに中国にある、ということです。

 こうした現実を踏まえたとき、国家安全保障にからめて、日中のデカップリングを進めよと軽々しく論じる議論がいかに非現実的なものか見えてきます。

 「経済安全保障」大臣は、原告側の日本製鉄の肩をもつのか、宝山鋼鉄の電磁鋼板を採用した採用したトヨタの肩をもつのか、それとも司法の判断が下るのを指をくわえて待つのか、どうするのでしょうか。

 税金を無駄に使って、米国に追随した「ミニ日中対決プロレス」を演じるのではなく、元祖「経済安全保障」国家の思想を思い出し、まずは複雑にからみあったに日中間の経済の現状をありのまま直視して、ひとつひとつ丁寧に問題を解いていくべきでしょう。

■10月も折り返しを過ぎました! 9月のご寄付・カンパは月間目標額の56%にとどまり、185万円以上も不足に! 今期第12期のスタートの8月と9月の月間目標額の不足分は合計272万3500円に! 10月のご寄付・カンパも13日間で月間目標額420万円の6%にとどまっています! どうか経済危機が深刻化するIWJに皆さまの緊急のご支援をお願いいたします!

 9月のご寄付・カンパの集計が確定しましたので、ご報告させていただきます。

 9月のご寄付・カンパは、223件で、234万7400円でした。ご寄付・カンパいただいた皆さま、本当にありがとうございます。

 しかしながらこの金額は、今期の新たな月間目標金額である420万円の56%にとどまり、9月は185万2600円の不足となりました。

 IWJでは、今期第12期の年間の予算の見通しを立てさせていただきました。その上で、今期の会費収入は、7月時点で前期より10%の減少と予想し(第11期実績、6200万円、第12期予想6000万円)、ご寄付・カンパの目標額を月額420万円(年間5040万円)とさせていただきました。前期の目標額は月間450万円でしたから、さらに緊縮して30万円下げております。

 それでも、コロナ禍の続く現状を見ていると、会費・ご寄付・カンパ等の収入は、予測を下回ってしまうかもしれません。何とぞ、皆さまのご支援、ご協力をお願いいたします。

 10月は1日から13日までに、29件、24万8900円のご寄付・カンパをいただきました。ありがとうございます。

 しかしこの金額も、今月の月間目標額420万円の6%にとどまっています。このペースが続くとすると、IWJは壊滅的な打撃を受けます。

 今期第12期は、3ヶ月目に入ったばかりですが、すでに8月は月間目標額を87万900円下回り、9月は185万2600円下回って、合計272万3500円の不足となっています。

 今月10月の目標額420万円に、8月と9月の不足分272万3500円をあわせた692万3500円に対して、今月のご寄付・カンパはまだ4%にとどまっています。

 IWJは、赤字でキャッシュフローの足りなかった8月を乗り切るため、100万円を岩上安身から借り入れました。すでにお伝えしている通り、IWJは、岩上安身に前期だけで993万5000円借り入れており、今回の100万円とあわせて1093万円を借り入れてしまっています。

 個人が1000万円を超えるお金を会社に貸す、というのは大変なことです。第12期のスタートにあたって、岩上安身は前期も途中から無報酬で働いておりましたが、今期も1年間、無報酬で働くことを決めています。これ以上、会社が岩上安身に頼るのは苦しい状況です。

 どうか皆さまのお力で、IWJをお支えください!

 12年目となるIWJへ、皆さまからの温かいご支援を、引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

※ご寄付・カンパはこちらからお願いします。
https://iwj.co.jp/join/pleasehelpus.html

※ご寄付・カンパを取り扱っております金融機関名です。よろしくおねがいします。(クレジットカードの場合は、上記URLからお入りください)

みずほ銀行
支店名 広尾支店
店番号 057
預金種目 普通
口座番号 2043789
口座名 株式会社インデイペンデント ウエブ ジヤーナル

城南信用金庫
支店名 新橋支店
店番号 022
預金種目 普通
口座番号 472535
口座名 株式会社インディペンデント.ウェブ.ジャーナル

ゆうちょ銀行
店名 〇〇八(ゼロゼロハチ)
店番 008
預金種目 普通
口座番号 3080612
口座名 株式会社インディペンデント・ウェブ・ジャーナル カンリブ

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◆中継番組表◆

**2021.10.16 Sat.**

あくまで予定ですので、変更、中止、追加などがある場合があります。また電波状況によっては、安定した中継ができない場合もございますので、ご了承ください。

【IWJ・エリアCh1・大阪】「衆院選に関する内容」
視聴URL: http://twitcasting.tv/iwj_areach1
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【タイムリー再配信 1012・IWJ_YouTube Live】19:00~「いつでも独裁が可能!? いつまでも独裁が可能!? 憲法で堂々と独裁を肯定!? より危険性が高まった自民党新改憲の緊急事態条項!~5.21 岩上安身によるインタビュー 第872回 ゲスト 永井幸寿弁護士<エッセンス版>」
視聴URL: https://www.youtube.com/user/IWJMovie/featured

 2018年5月に収録した、岩上安身による永井幸寿弁護士インタビューを再配信します。これまでIWJが報じてきた永井幸寿氏関連の記事は以下のURLから御覧いただけます。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%e6%b0%b8%e4%ba%95%e5%b9%b8%e5%af%bf

[記事URL] https://iwj.co.jp/wj/open/archives/421982

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◆中継番組表◆

**2021.10.17 Sun.**

あくまで予定ですので、変更、中止、追加などがある場合があります。また電波状況によっては、安定した中継ができない場合もございますので、ご了承ください。

【IWJ・エリアCh1・京都】「衆院選に関する内容」
視聴URL: http://twitcasting.tv/iwj_areach1
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【タイムリー再配信 1013・IWJ_Youtube live】17:00~「自民党が改憲で目指す家族国家観の危険性!『純血日本人主義』『血の共同体』がファシズム・排外主義の根拠に!? ~岩上安身によるインタビュー 第859回 ゲスト 元文科事務次官 前川喜平氏 第3弾」
視聴URL(冒頭以降は会員限定): https://iwj.co.jp/wj/open/archives/420867
 
 2018年3月に収録した、岩上安身による前川喜平氏インタビューを再配信します。これまでIWJが報じてきた前川喜平氏関連の記事は以下のURLから御覧いただけます。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%e5%89%8d%e5%b7%9d%e5%96%9c%e5%b9%b3

[記事URL] https://iwj.co.jp/wj/open/archives/416295

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◆昨日アップした記事はこちらです◆

共産党、コロナ支援に収入減少者へ一人10万円、年収1000万円以下へ段階給付など政策(総合版)発表! IWJ記者の質問に「恒久財源のプライマリーバランスは回復を目指す」~10.11日本共産党・志位委員長総選挙政策発表会見
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/497379

枝野代表が市長選を制した横浜市で衆院解散後最初の訴え!「あなたが動けば政治が変わる!」「命と暮らしを支える役割を果たしてこなかった政治を変えよう!」~10.14立憲民主党 街頭演説(神奈川大作戦)
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/497456

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■世界最大の半導体受託生産メーカーTSMC(台湾積体電路製造)が熊本に新工場を建設! ソニー、デンソーが参画、政府も補助! 日本はついに「産業の空洞化」を通り越して台湾メーカーの「普及品」製造工場を誘致する地位にまで転落! 岸田総理は会見で「経済安全保障に寄与する」と「手放し」で大歓迎!

 10月14日付け日本経済新聞は、「世界最大の半導体受託生産会社(ファウンドリー)である台湾積体電路製造(TSMC)は14日に開いた決算発表会で、日本に新工場を建設すると発表した」と報じました。

※TSMC、日本に新工場表明 22年着工24年稼働(日本経済新聞、2021年10月14日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC146YJ0U1A011C2000000/

 記事によると、日本の新工場は、TSMCの大口取引先であるソニーグループの画像センサー工場(熊本)の隣接地に建設される見通しとのことで、新たに設立される工場運営会社には、ソニーグループが出資する予定です。

 また、自動車部品最大手のデンソーも、何らかの形で参画すると報じられています。

 日経記事は、「TSMCはこれまで独資での事業運営を基本としてきた」とした上で、発表会では日本の事業運営について「他の企業、顧客との合弁形式もケースバイケースで検討する」と質問に答えたことを報じています。

 一方、「投資規模については詳細な回答を避けた」とのことですが、12日付け時事通信は、新工場について「約2000人の雇用を見込み、総事業費は8000億円規模に上る。経済安全保障上、重要な半導体産業の国内誘致を目指す日本政府は、半額を補助する方向で検討している」と報じています。

※台湾TSMC、熊本に半導体工場 雇用2000人、ソニーG・デンソー参加(時事ドットコム、2021年10月12日)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021101200832&g=eco

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 半導体はかつて「産業の米」と言われ、日本の電機産業の核になるものでした。1990年には、世界の半導体生産ランキングトップ10中、日本企業が6社を占めていましたが、2015年には東芝1社となり、2018年には日本のメーカーは、ランキングから姿を消しました。

 1980年代の日米半導体摩擦をきっかけに衰退していった日本の半導体製造と、日本産業の空洞化については、岩上安身が2019年6月17日と18日の2日間にわたり、『「空洞化」と「属国化」 ― 日本経済グローバル化の顛末』の著者である名古屋経済大学の坂本雅子名誉教授にインタビューを行っています。

 この機会にぜひ、あわせて御覧ください。

※電機産業は崩壊!? 凋落する日本のものづくり!~岩上安身によるインタビュー 第949回 ゲスト『「空洞化」と「属国化」 ― 日本経済グローバル化の顛末』著者 名古屋経済大学・坂本雅子名誉教授 2019.6.17
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/450800

※【第443-448号】岩上安身のIWJ特報!電機産業は崩壊!? 凋落する日本のものづくり!岩上安身による『「空洞化」と「属国化」 ~日本経済グローバル化の顛末』著者 名古屋経済大学・坂本雅子名誉教授インタビュー前編(1/2) 2020.1.1
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/462849

※【第449-455号】岩上安身のIWJ特報!電機産業は崩壊!? 凋落する日本のものづくり!岩上安身による『「空洞化」と「属国化」 ~日本経済グローバル化の顛末』著者 名古屋経済大学・坂本雅子名誉教授インタビュー前編(2/2) 2020.1.31
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/466368

※【第456-464号】岩上安身のIWJ特報!電機産業は崩壊!? 凋落する日本のものづくり!岩上安身による『「空洞化」と「属国化」 ~日本経済グローバル化の顛末』著者 名古屋経済大学・坂本雅子名誉教授インタビュー後編(1/2) 2020.4.30
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/469127

■新しい資本主義実現会議は、「成長戦略会議」2.0! 新しい資本主義実現会議の有識者メンバーに貧困問題や本当に公平な分配を議論する専門家や困っている労働者の代表がいない! IWJは内閣官房に直撃取材!

 山際大志郎経済再生相は15日の閣議後会見で、岸田文雄政権が掲げる政策実現のための有識者会議「新しい資本主義実現会議」の構成メンバーを公表しました。

 この会議は、ロイター通信が奇しくも本質を突いて報道しているように、「同会議(新しい資本主義実現会議)は、これまで官房長官の下で政府の成長戦略を議論してきた『成長戦略会議』に代わるもの」です。

※政府の新しい資本主義会議メンバー公表、AIの松尾東大教授ら15人(ロイター、2021年10月15日)
https://jp.reuters.com/article/japan-growth-panel-idJPKBN2H506R

 15日の閣議決定は次のように、新しい資本主義実現本部の設置に言及しています。

 「『成長と分配の好循環』と『コロナ後の新しい社会の開拓』をコンセプトとした新しい資本主義を実現していくため、内閣に、新しい資本主義実現本部(以下『本部』という。)を設置する」

※新しい資本主義実現本部の設置について (閣議決定、2021年10月15日)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/honbu/dai1/shiryou1.pdf

 新しい資本主義担当大臣は、「成長戦略会議」とまったく同様に内閣官房長官です。

 新しい資本主義実現会議の有識者メンバーは、次のとおりです。

 翁 百合 株式会社日本総合研究所理事長

 川邊 健太郎 Zホールディングス株式会社代表取締役社長

 櫻田 謙悟 経済同友会代表幹事

 澤田 拓子 塩野義製薬株式会社取締役副社長兼ヘルスケア戦略本部長

 渋澤 健 シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役

 諏訪 貴子 ダイヤ精機株式会社代表取締役社長
 
 十倉 雅和 日本経済団体連合会会長

 冨山 和彦 株式会社経営共創基盤グループ会長

 平野 未来 株式会社シナモン代表取締役社長CEO

 松尾 豊 東京大学大学院工学系研究科教授

 三村 明夫 日本商工会議所会頭

 村上 由美子 MPower Partners GP, Limited. ゼネラル・パートナー

 米良 はるか READYFOR 株式会社代表取締役CEO

 柳川 範之 東京大学大学院経済学研究科教授

 芳野 友子 日本労働組合総連合会会長

※新しい資本主義実現会議 有識者構成員(内閣官房、2021年10月15日)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/pdf/rist.pdf

 このメンバー表を見て、貧困問題や税制や社会保障制度を通じた本当の意味で公平な分配を議論するメンバーが一人もいないことに気が付きます。

 「連合」の芳野友子会長が入っていますが、連合傘下の労組は、自動車や電機などの大企業労組がほとんどで、大企業の正規労働者の組合が、貧困問題や不平等な分配構造に本当に苦しめられている不正規労働者やフリーターや失業者、中小自営業者や中小企業労働者の代弁者にはなりえません。

 芳野会長の主張は、彼女の意向の主張ではなく、衆院選後に立憲民主党を中心とする政権が樹立された場合、共産党が「限定的な閣外からの協力をする」とした「立共党首合意」について「連合として閣外協力はあり得ない」と申し入れを行い、野党共闘に楔を打ち込むとして物議を醸したばかりです。

※共産との閣外協力あり得ず 連合の芳野会長、立民に申し入れ(熊本日日新聞、2021年10月11日)
https://kumanichi.com/articles/428675

 芳野会長は、前任の神津里季生前会長の主張を踏襲したにすぎません。神津前会長は、6月23日に行った講演の中で、立憲民主党政権において、共産党との閣外協力は「あり得ない」との考えを示しています。

 その理由が、「共産は民主主義のルールにのっとって物事を進める組織と言えない」「安全保障や日米同盟など国のあり方の根幹にかかわる考え方が違う。閣外であっても(協力は)あり得ない」というのです。

※立憲と共産の閣外協力「あり得ない」 連合・神津会長(朝日新聞、2021年6月23日)
https://digital.asahi.com/articles/ASP6R6D5LP6RUTFK013.html

 これが連合という労働組合組織の現実です。大企業と米国の利益を優先する自民党の補完勢力と見なすべきでしょう。

 孫崎享元外務省国際情報局長は、芳野友子連合会長が新しい資本主義実現会議メンバーに入ったことについて、自身のツイッターで次のように痛烈に批判しています。

 「裏切り。共産攻撃も納得。芳野友子・連合会長は自民党の広告塔か。岸田首相が提唱の『新しい資本主義』実現会議→選挙用でしょう。『岸田首相が提唱の新しい資本主義実現会議、議長首相。担当は山際経済再生相、有識者に経団連会長・日本商工会議所会頭そして連合会長の芳野友子氏』(読売)」

※孫崎享氏の10月15日のツイート
https://twitter.com/magosaki_ukeru/status/1448869535554019329

 IWJは、内閣官房の新しい資本主義実現本部事務局へ直撃取材しました。

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■<IWJ取材報告1>枝野代表が市長選を制した横浜市で衆院解散後最初の訴え!「あなたが動けば政治が変わる!」「命と暮らしを支える役割を果たしてこなかった政治を変えよう!」~10.14立憲民主党 街頭演説(神奈川大作戦)

 衆議院が解散された10月14日の夕方、横浜・JR桜木町駅前で行われた立憲民主党街頭演説会で、枝野幸男代表が演説を行いました。

 枝野代表は集まった市民に、「国民の100人に1人(の自民党員)しか投票できない自民党総裁選が終わり、衆院解散で、国民が本当の総理を選ぶ選挙が、いよいよ始まる」と訴えました。

 枝野氏は続けて、衆院解散後最初に横浜に来た理由について、8月の横浜市長選での野党統一候補の勝利を念頭に「あなたが動けば政治が変わる、そのことを誰よりも実感しているのが横浜市民のみなさんだと思ったからだ」と呼びかけ、「命と暮らしを支えるという役割を果たしてこなかった政治を、変えようではありませんか」と訴えました。

 詳しくはぜひ、全編動画を御覧ください。

※枝野代表が市長選を制した横浜市で衆院解散後最初の訴え!「あなたが動けば政治が変わる!」「命と暮らしを支える役割を果たしてこなかった政治を変えよう!」~10.14立憲民主党 街頭演説(神奈川大作戦)
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/497456

■<IWJ取材報告2>共産党、コロナ支援に収入減少者へ一人10万円、年収1000万円以下へ段階給付など政策(総合版)発表! IWJ記者の質問に「恒久財源のプライマリーバランスは回復を目指す」~10.11日本共産党・志位委員長総選挙政策発表会見

 10月11日、東京都千代田区の衆議院第一議員会館で、日本共産党の志位和夫委員長が、衆議院選挙政策に向け、4回目となる発表を行いました。

 共産党は衆議院選挙に向けてこれまで、「気候危機を打開する日本共産党の2030戦略」「コロナ危機を乗り越え、暮らしに安心と希望を―日本共産党の新経済提言」「ジェンダー平等の日本へ いまこそ政治の転換を」と、3回の政策発表を行っています。

※エネルギー政策、安全保障、コロナ対策に関するIWJ記者の質問に志位委員長が回答「米国は犯罪に対し報復戦争でこたえ、テロを拡散しただけだった。日本はこれに加担した!」~9.1日本共産党 志位和夫委員長 政策発表 記者会見 2021.9.1
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/495771

※日本共産党、次期衆議院選挙に向け、政策提言第2弾を発表!「コロナ危機を乗り越え暮らしに安心と希望を」と6項目を提言!~9.22日本共産党・志位和夫委員長による政策「日本共産党の新経済提言」発表会見 2021.9.22
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/496529

 この日、志位委員長は総合版ともいえる政策「なにより、いのち。ぶれずに、つらぬく」を発表しました。コロナで収入が減った人に一人当たり10万円を基本に、年収1000万円以下のいわゆる中間層を含めて、収入に応じて段階的な給付を行う、としまた。

 IWJ記者は志位委員長に、財源としての国債発行限度について質問しました。

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 詳しくはぜひ、以下の全編動画を御覧ください。

※共産党、コロナ支援に収入減少者へ一人10万円、年収1000万円以下へ段階給付など政策(総合版)発表! IWJ記者の質問に「恒久財源のプライマリーバランスは回復を目指す」~10.11日本共産党・志位委員長総選挙政策発表会見
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/497379

■<IWJ取材報告3>「総裁選での公約だった『健康危機管理庁』の創設はなぜなくなったのか?」IWJ記者の質問に「新しい行政組織の形にするかどうか」「まずコロナ感染症の『全体像 』をお示ししてから」と山際大臣! 今さらそこから!? ~10.15山際大志郎 経済再生担当大臣記者会見

 10月15日午前11時30分頃より、東京都千代田区の中央合同庁舎にて、山際大志郎 経済再生担当大臣(新型コロナ対策・健康危機管理担当大臣)の記者会見が開催されました。

 会見冒頭、山際大臣より、会見前に行われた閣議にて、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトとした新しい資本主義を実現していくため、内閣に、「新しい資本主義実現本部」を設置すると報告がありました。

 「新しい資本主義実現本部」は、総理大臣を本部長とし、「新しい資本主義担当大臣」となる山際経済再生担当大臣、および、官房長官が副本部長、そして、その他すべての国務大臣が本部員となるとのことです。

 また、「新しい資本主義実現本部」の下に置かれ、コンセプトの具体化を進める「新しい資本主義実現会議」の構成員として、株式会社日本総合研究所理事長の翁百合(おきなゆり)氏をはじめとした15名の有識者の氏名も発表されました。10月中にも初会合が行われる予定であり、日程が決まり次第、発表されます。

 続いて、会見に先立って開催された「新型コロナウイルス感染症対策本部」において、岸田総理より「次の感染拡大に向けた、安心確保のための取り組みの全体像」の骨格として検討すべき事項について、改めて、指示があった旨、報告がありました。

 この総理の指示を受け、政府として、「医療提供体制の強化」、「ワクチン接種の推進や追加接種」、そして、「治療薬の実用化と確保」、「ワクチン検査パッケージ等の活用による行動制限緩和の具体的内容」等について、早急に検討する予定です。

 山際大臣からの報告に続いて、大臣と各社記者との質疑応答となりました。IWJ記者は、以下のとおり質問をしました。

※ここから先は【中略】となります。会員へのご登録はこちらからお願いいたします。ぜひ、新規の会員となって、あるいは休会している方は再開して、ご覧になってください!

https://iwj.co.jp/ec/entry/kiyaku.php

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 詳しくはぜひ、以下の全編動画を御覧ください。

※「総裁選での公約だった『健康危機管理庁』の創設はなぜなくなったのか?」IWJ記者の質問に「行政組織の形をとらずとも岸田総理の問題意識は何一つ変わっていない」と山際大臣~10.15山際大志郎 経済再生担当大臣記者会見
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/497527

■<タイムリー再配信告知>本日夜7時より、「いつでも独裁が可能!? いつまでも独裁が可能!? 憲法で堂々と独裁を肯定!? より危険性が高まった自民党新改憲の緊急事態条項!~5.21 岩上安身によるインタビュー 第872回 ゲスト 永井幸寿弁護士<エッセンス版>」を、改憲がかかる今回の衆議院選挙に向けて、フルオープンで配信します! 岩上安身が岸田総理あてにメールで送った「緊急事態条項」の危険性についての質問もあわせて、ぜひ御覧ください!!

 本日、夜7時より、「いつでも独裁が可能!? いつまでも独裁が可能!? 憲法で堂々と独裁を肯定!? より危険性が高まった自民党新改憲の緊急事態条項!~5.21 岩上安身によるインタビュー 第872回 ゲスト 永井幸寿弁護士<エッセンス版>」を、改憲がかかる今回の衆議院選挙に向けて、公共性に鑑み、フルオープンで配信します。

 「緊急事態条項」の危険性について、岩上安身は、10月14日、岸田総理会見に参加しましたが、挙手し続けていても、また指名されずじまいでした。15日付の日刊IWJガイドでお伝えした通り、14日夜、質問状をメールで送っています。こちらもぜひお読みください。

※はじめに~衆院解散! 岸田総理は会見で「分配と成長の好循環」について「分配を言うだけの野党とは違う」と主張するが、「成長の果実が行き渡るのはいつか?」との質問に「3年後、4年後に賃金が上がりますよと言うのは誤解を招く」と具体的な回答を避ける! 法改正ですぐにも実現する野党の分配戦略に対し、何年待てばいいのかも不明! 岩上安身はまたしても指名されず! メールにて官邸に質問を送付!
https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/49603#idx-1

 10月19日公示、31日投開票となった、第49回衆議院選挙。今回の選挙は争点が豊富です。「政治とカネ」で堕ちるところまで堕ちた自民党政治、安倍・菅政権のオトモダチ政治への鉄槌を下す選挙であり、格差社会を招いた自民党政治、安倍・菅政権の新自由主義路線を転換させることができるかどうかの選挙でもあります。

 もちろん選挙の看板が岸田総理になったからと言っても、自民党政治は何も変わりません。UR金銭授受疑惑の甘利明氏が幹事長、安倍氏の子飼いの高市早苗氏が政調会長なのです。「政治とカネ」疑惑は封印される可能性があります。

 何よりも危険なのは、2012年に政権を取ってから、安倍・菅政権が推し進めてきた「日本を戦争できる国」にする一連の政策です。

 まず、2013年12月には「特定秘密保護法」を成立させました。

 2014年7月には、憲法9条の解釈を変更し、集団的自衛権の一部行使を容認する閣議決定をしました。翌2015年には「安保関連法案」、いわゆる「戦争法案」を国会に提出しました。この「戦争法案」は、武力攻撃事態法や自衛隊法など10の法案を一括改正する「平和安全法制整備法案」と新法案である「国際平和支援法案」の2本からなる複合法案でした。その内容はもとより、重要な法案を束ねて一括で拙速に審議する手法への批判も含め、国会前抗議デモが連日開催されましたが、2015年9月19日、参議院本会議において強行採決されました。

 2017年6月には「共謀罪」の構成要件を改めた「改正組織犯罪処罰法」も成立させています。

 今年2021年、第204回通常国会で、「改正国民投票法」が6月11日に参議院本会議で賛成多数で可決され、成立。6月16日には「重要土地利用規制法案」が参議院本会議で成立しています。

 2012年から9年かけて進められてきた「日本を戦争できる国にする」ための法案整備はほぼ終わりました。いよいよ憲法改正に王手がかかります。「改正国民投票法」はCM規制を欠いたままです。このまま、自民党が与党にあり続ければ、確実に憲法改正に踏み込んできます。

 自民党は2012年の改憲草案に続き、2017年に改憲4項目を発表しています。この改憲4項目は一見、文面だけを見ると、評判の悪かった2012年案よりも「マイルド」になったかのように見えますが、実態はむしろより危険になったといえます。最大の問題は、「緊急事態条項」の憲法への導入です。

 2017年案の「緊急事態条項」の危険性に気づき、声をあげたのが永井幸寿弁護士です。永井弁護士は、「これは大変だ、みんな気がつかないが、旧案よりはるかに危険になっている! IWJで話させてくれ!! 」と岩上安身に訴えたことから、こちらのインタビューが実現しました。永井弁護士はインタビューの冒頭で以下のように語っています。

永井「(2017年案は2012年案に比べて)滅茶苦茶危険になりました。にも関わらず、危険が収まったように皆さん勘違いしている。憲法記念日にさえ議論になってないんですよね。これはもの凄く大変な事です。メディアも取り上げない。だからもう、私は岩上さんに電話するしかなかったんですよ」

 永井弁護士は、岩上安身のインタビューの中で、2017年案の緊急事態条項の危険性について、「いつでもいつまでも」期間の制約なく、「なんでも」どんな内容であれ、無制限に内閣独裁を許すものになっていると指摘しました。
 
 「緊急事態条項」の歴史を振り返ってみると、明治憲法(大日本帝国憲法)には緊急事態条項がありましたが、悪名高い治安維持法の改正などで濫用されたため、戦後の日本国憲法では緊急事態条項が削除されたという経緯があります。

 2017年に発表された自民党改憲4項目には「緊急事態条項」が含まれています。

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【緊急事態条項】
 第73条の2
 (第1項)大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる。
 (第2項)内閣は、前項の政令を制定したときは、法律で定めるところにより、速やかに国会の承認を求めなければならない。
 (※内閣の事務を定める第73条の次に追加)
 第64条の2
 大地震その他の異常かつ大規模な災害により、衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の適正な実施が困難であると認めるときは、国会は、法律で定めるところにより、各議院の出席議員の3分の2以上の多数で、その任期の特例を定めることができる。

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 2017年案からは、2012年案の「我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱」「法律と同一の効力を有する政令」「(国の指示に)何人も従わなければならない」「(地方自治体に内閣は)指示できる」といった、戦争やナチ独裁を彷彿させるあの強権的な文言は条文案の表面上から消え去りました。

 かわって「大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる」と簡潔に、平易な言葉でまとめられています。

 2012年案では緊急事態条項専用に「98条・99条」を新設し、憲法の一大要素のように位置づけられていたものを、2017年案では内閣の事務を定める73条と国会の章の末尾にあたる64条という離れた二つの条文の、それも各々の追加項目として添えるという、ちょっとした微修正のようにも見える書き方をしています。

 しかし、2017年案は、内閣の独裁を無制限に許す条項になっています。

 「政令を制定することができる」とは、「法律の制定を待ついとまがない」「速やかに国会の承認を求める」と言っていることから、事実上、法律と同じ効力を有する政令を制定する、と言っているに等しいと思われます。大日本帝国憲法の緊急勅令と同じ、内閣による「独立命令」にあたり、内閣に強大な権力を付与する、内閣独裁条項とでもいうべきものです。

 2012年案では「内閣総理大臣が緊急事態を宣言」、「事前または事後の国会の承認」などの緊急事態宣言解除の手続きも一応書いてありましたが、2017年案では手続き規定がなくなっています。つまり、国民が知らない間に閣議で政令の制定を決定できるとも読めます。いわば「宣言なき国家緊急権」です。

 「大地震その他の異常かつ大規模な災害」は「自然災害」だけではなく、「無力攻撃災害」も含まれ、緊急事態条項が戦争に用いられる可能性があります。

 大日本帝国憲法の緊急勅令にさえ、緊急権発動の期間制限に「議会閉会の時」という限定がありましたが、2017年案には期間制限がありません。期間制限のない緊急権発動など、少なくとも先進諸国には、どこの国にもありません。「いつでもいつまでも」内閣独裁が可能です。

 また、2017年案には立法できる事柄に関する制限もありません。「なんでも」内閣独裁が可能です。

 つまり、2017年案の「緊急事態条項」とは、「いつでもいつまでも」「なんでも」無制限に内閣独裁を可能にするものです。このような欠陥を持った自民党2017年の改憲案は、まず撤回させなければなりません。

 ぜひ、最初に「緊急事態条項」の危険性を告発した、2018年5月21日に行われた、岩上安身による永井弁護士へのインタビューをご覧ください。1時間のエッセンス版となっております。

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【タイムリー再配信 1012・IWJ_YouTube Live】19:00~19:59
いつでも独裁が可能!? いつまでも独裁が可能!? 憲法で堂々と独裁を肯定!? より危険性が高まった自民党新改憲の緊急事態条項!~5.21 岩上安身によるインタビュー 第872回 ゲスト 永井幸寿弁護士<エッセンス版
視聴URL: https://www.youtube.com/user/IWJMovie/featured

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 それでは、本日も1日よろしくお願いします。

※日刊IWJガイドのフルバージョン(会員版)は下記URLより御覧ください。
https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20211016

IWJ編集部(岩上安身、六反田千恵、城石裕幸、尾内達也、渡会裕、中村尚貴)

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