緊急院内集会:国連勧告「従う義務なし」に異議あり!国際人権基準に背を向ける国・日本 2013.7.1

記事公開日:2013.7.1取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 2013年7月1日(月)14時から、東京都千代田区の参議院議員会館で「緊急院内集会:国連勧告『従う義務なし』に異議あり!国際人権基準に背を向ける国・日本」が行われた。冒頭、主催者であるアムネスティ・インターナショナル日本事務局長の若林秀樹氏は、橋下大阪市長の発言、さらに国連拷問禁止委員会での上田人権人道大使の「シャラップ」発言を酷評。さらに、国連拷問禁止委員会の勧告があり、日本政府が閣議で「法的拘束力はない」「従う義務なし」と言い切ったことに加え、これ以外にも日本は、国連の勧告を、ことごとく無視している実態が報告された。また、国連拷問禁止委員会に同席した小池振一郎弁護士は、上田大使発言の真意を分析した。

■ハイライト

  • 国連の勧告が持つ意味と役割とは? ~日本に欠けている視点と姿勢~
    寺中誠氏(東京経済大学、アムネスティ日本 前事務局長、人権共同行動 事務局長)
    阿部浩己氏(神奈川大学法科大学院、ヒューマンライツ・ナウ 代表)
  • 国連は何を指摘し、日本政府はどう応えてきたのか?
    小池振一郎氏(弁護士、日弁連えん罪原因究明第三者機関WG 副座長)「拷問禁止委員会日本審査の状況から見える日本の姿勢」
    伊藤和子氏(ヒューマンライツ・ナウ 事務局長)「社会権規約委員会勧告と原発問題」
    海渡雄一氏(弁護士、監獄人権センター 事務局長)死刑・代用監獄に関して
    原由利子氏(反差別国際運動日本委員会 事務局長)「人種差別、朝鮮学校無償化排除、ヘイトスピーチから考える日本の姿勢」
    渡辺美奈氏(アクティブ・ミュージアム女たちの戦争と平和資料館 事務局長)国連は慰安婦問題をどう捉え、勧告してきたか
    鳥井一平氏(移住労働者と連帯する全国ネットワーク 事務局長)人身売買について

 司会役の若林秀樹氏が、今回の発会に至った経緯と要旨を説明した。「国政選挙である参議院選挙告示3日前ということで、なんとしてでも、われわれの懸念、怒りを国政選挙にぶつけなければならない」と述べて、橋下市長の一連の発言や、政府のとった人権への取り組みの不誠実さに憤りを示した。

 寺中誠氏が「国連の勧告が持つ意味と役割とは?」をテーマに話をした。「国連拷問禁止委員会の勧告について、日本政府が閣議で『法的拘束力はないので、従う義務なし』という答弁書を決定した。また、国連での上田人権人道大使の暴言もあった」と背景を述べて、日本は人権条約関連など、ほとんど条約に締結していないことを示した。

 そして寺中氏は、条約機関が出した条約の、履行義務や法的拘束力に関して、「従う必要なし、との判断は間違ってはいない。しかし、この勧告は、日本が参加している数少ない国連拷問禁止委員会の、拷問と禁止条約に基づいて出されている。したがって、最初に条約の意味を考えるべきで、憲法の定める国際協調主義に基づき、遵守する義務がある」と分析した。

 次に、国際法と国内法の関係、条約の権限について、「国際法と国内法を別にする二元論と、国際法を国内法に照らし合わせて、ひとまとめに解釈する一元論がある。憲法98条2項によると、国際法は、憲法の下位におかれる。ここでの問題は、憲法に反した条約の場合、最高裁は違憲審査はできない。そういった場合、憲法の解釈を変えながら、条約適合的に理解し、憲法と条約は同じ立場にしなくてはいけない」と述べた。

 寺中氏は続けて、「条約機関が出している勧告とは解釈指針で、法的拘束力は持たないが、条約そのものを支えている。国際舞台では、法的拘束力の有無を議論することは無意味で、勧告を遵守しないことは、憲法の国際協調主義に反する。さらに、条約機関は、日本の法曹三者(裁判官、弁護士、検察官)、公務員などが、『条約についてまったく勉強していない、改善もされていない』と指摘している。日本は、まるで国際条約機関や条約そのものを、ネグレクトしているようだ。国際法は面倒だから国内法だけでいいとなったら、非常に危険。上田大使の「シャラップ」発言は、戦前の国際連盟脱退の場面を彷彿させた」と語った。

 次に、阿部浩己氏が登壇し、上田大使の発言について話を始めた。「上田大使は、今、大きな潮流のどこに身を置いたらいいのかわからない、という戸惑いから、暴言に走ったのではないか」と前置きをし、「自民党新憲法は、立憲主義から逸脱しているため、改憲論者からも疑問が出ている。今、国家権力を縛り、人権を擁護する立憲主義は、国際立憲主義となっていて、それが人権条約機関であり、国連人権メカニズムでもある。権力側にとっては、とても苛立ちを感じるのだろう」と、今回の一連の流れを分析した。

 次に阿部氏は、勧告に従う義務について話した。「この議論の枠組みを、条約は誠実に遵守する義務がある、と別の言葉を使って組み直す必要がある」と、パラダイムの組み替えを提言。「今回、勧告を遵守しない日本政府の見解は、それだけ権力側に危機感がある証拠。世界的には、主権国家中心社会だったのが、真の意味の民主化が進みつつある。しかし、日本国内は逆に後退している。ゆえに、参院選を迎える今、憲法改正と関連づけて、立憲主義をよく考えていかなくてはならない」と述べた。

 「国連は何を指摘し、日本政府はどう応えてきたのか?」と題して、小池振一郎氏が発言した。「日弁連の代表団として、国連拷問禁止委員会を傍聴した。その前段に、中世発言があった」と、上田大使の一件を解説した。「その審査委員会の席上、各国委員より、日本の刑事司法に対して、弁護士立ち会いのない刑事取調べ、えん罪の多発、裁判官に拷問研修がないなど、批判的な意見が数多く出ていた。そのせいか、日本側の委員には、大きな不満が見てとれた。そこで、中世発言を含む、追い討ちをかける意見が発せられた」と、モーリシャスの最高裁判事の発言を紹介した。

 「その発言とは、『弁護人の立ち会いが、取り調べを妨害するという理由に説得力はない。あまりに自白に頼りすぎている。これは、中世のやり方だ』と切り込んだもの。そして、委員会の最後、上田大使の挨拶での、あの発言となった。丁寧にも同時通訳は『うるさい、なぜ笑うんだ』と訳していた」と紹介した。この発言は、のちに国会の法務委員会で取り上げられ、上田大使は、口頭での注意処分を受けて終わった」。最後に小池氏は、国連委員会の勧告の意味を解説し、講演を終えた。

 次に、伊藤和子氏が登壇。「現在、日本は国連の勧告をことごとく否定している。本集会にも危機感をもって参加した。4月30日、ジュネーヴで行なわれた社会権規約委員会も、官僚答弁で終始はぐらかし、かつ態度の不遜さも聞き及んだ」と語り、「社会権規約委員会勧告と原発問題」について話した。

 「アナンド・グローバー国連特別報告者の勧告では、20ミリシーベルト安全基準、避難者支援の不備、甲状腺がんなど被曝による健康被害を懸念して、子どもや妊婦などは人権の視点から被曝線量などを決めるべき、と指摘している。ところが、日本政府は、30ページにもわたる反論書を提出。『個人の意見だから尊重する必要はない』とまで言い放った」と憤慨し、「自分たちは、これら政府の言動に対し、声を上げて是正していかなければならない」とスピーチをまとめた。

 海渡雄一氏が「死刑・代用監獄に関して」の話をした。「日本は、世界で一番、容疑者の取り調べ期間が長い。外国では、だいたい1度のみ、24時間の取り調べだ。これらに関しては、国連機関から20年以上、指摘され続けている。刑事拘禁でも、医療、心のケアが不十分という指摘がある。独房拘禁も、世界は原則15日間なのに、日本では、いまだ数十年だ」と述べた。

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