TPPの自由とは、誰にとっての自由なのか? ~「本当のこと言って何か不都合でも? ―山本太郎が学んじゃうよ― vol.1」 2013.6.25

記事公開日:2013.6.25取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・松田/奥松)

特集 TPP問題|特集 山本太郎

 参院選東京選挙区に無所属で出馬を表明した山本太郎氏が、テーマ別に識者を交え、初心者にもわかりやすく解説する企画「本当のこと言って何か不都合でも? ―山本太郎が学んじゃうよ―」。2013年6月25日(火)20時から、東京都内で行われた第1回目はテーマをTPPに選び、安部芳裕氏をゲストに迎えて、その問題点を探った。

■ハイライト

  • ゲスト 安部芳裕氏(プロジェクト99%)

 安部氏は「アメリカを中心に、大企業と政府とが一体となり、彼らに有利なルール作りが進められる世界的な流れが、TPPの背景にある」と述べ、「カネと票で政治家は動く。結果、その2つを集めてくれる大企業を優遇するルール作りに偏ってしまう。本来は、格差の是正などのため、企業活動に規制をかけるのが政府の役割だが、それを縮小する流れが強まっている」とした。

 「TPPに関して、マスメディアには情報があまり出回っておらず、あっても『TPPに入ればバラ色だ』というような報道が多いが」と聞く山本氏に対し、安部氏は「広告に依存する商業メディアは、広告主に都合の悪い報道は控える傾向にある」とし、加えて、TPPが秘密協定であることを理由に挙げ、「現在、日本でTPPの内容をわかっている人はいない」と語った。

 「TPP交渉は非公開。今年中にルールを取りまとめるとされており、残る交渉は7月と9月。日本は米議会の承認を経てようやく交渉参加となり、そこで初めて、これまで決められた3000ページにも及ぶルールの中身を知ることができる。しかし、その内容を交渉で変えることは不可。安倍政権は、交渉で日本に有利なルール作りを進めるというが、この条件で、それができるのか」と疑問を呈した。

 安部氏は「すでにある米韓FTAが参考になる」と述べ、「そこでは、あらゆる非関税障壁の撤廃が謳われる。すべて撤廃が基本原則で、残したいものだけ交渉のテーブルに載せられる、ネガティブリスト方式。これはTPPも同様だが、時間が限られているため交渉も難しい」と話した。

 安部氏は他に、米韓FTAに見られる不平等な要素を列挙した。「外国企業も国内企業と同等の扱いを保障すべきとする、内国民待遇。企業や投資家が損失を受けた場合、相手国政府を訴えることができるISD条項。相手国内に事業所を設けなくてもよいとする、サービス業の非設立権認定。それらをハイレベルで、もっと自由にするというのがTPP。もはや、アメリカの治外法権の実現だ」と指摘した。

 国民生活への直接的な影響として、安部氏は食や医療への打撃を挙げた。「政府は農作物の売上げが3兆円減るとしているが、農家の経営が立ち行かなくなり、ただでさえ低い食料自給率がさらに低くなり、食料輸入に依存することになる。食糧危機が起きて輸入が滞れば、都市住民は飢えることになる」。

 また、遺伝子組み換え食品のさらなる流入も指摘。「遺伝子組み換え食品で、世界的シェア9割を占めるモンサント社にすれば、日本国内で食品に付けられる『遺伝子組み換えではない』という表示ラベルも、非関税障壁。TPPによって、それが廃止され見分けがつかなくなると、遺伝子組み換え食品が一気に流通していくことになるだろう」と述べた。医療分野への影響については、「アメリカの保険会社にとって、日本の国民皆保険制度は非関税障壁。撤廃を迫られるおそれがある」と危惧した。

 一方で安部氏は「TPP阻止には、批准に対して議会の過半数議員の反対が必要。現在は賛成派が多いため、7月の参院選が重要だ。反対派が増えれば、まだ可能性はある」と指摘した。

 ツイッターを通じて寄せられた「TPPに中国が入るのか」という問いに、安部氏は「中国は規制によって経済成長を果たしているので、TPPに入ることはまずない。しかし、アメリカは『ルールを教える』と中国に伝えており、加盟を求めている。国内のTPP推進派は『中国の脅威に対応するため』などとしているが、その根拠はない」とした。「TPPに入ると日本語はなくなってしまうのか」という問いには、「公共事業も、外国企業に広く門戸を開くことになる。入札の際、日本語だけの対応だと、それが非関税障壁とされるおそれがある」と答えた。

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