【IWJブログ:「TPPは憲法違反。国民主権から外資主権へ権力が移行する一種のクーデター」 国家の主権と民主主義を空洞化させるTPPの危険性を徹底議論 ~岩月浩二弁護士インタビュー】 2013.4.24

記事公開日:2013.4.24取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ富田・佐々木隼也 / 文責:岩上安身)

特集:TPP問題

 安倍総理がTPP交渉参加を表明したのは2013年3月15日(金)。それからおよそ1ヶ月あまり。この間、日本政府は参加各国と二国間事前協議を急ピッチで進め、2013年4月20日(土)、11カ国すべてから正式に交渉参加の承認を得るに至った。現在、日本政府は7月の交渉会合参加を目指している。

 大手メディアは、日本の交渉参加入りの過程については大々的に報じるものの、TPPがはらむ本質的な危険性については、いまだに直視しようとはしていない。TPPは、「国家の仕組みそのもののを変えさせられ、その主権を脅かす」と、多くの識者が警鐘を鳴らしているにもかかわらず、である。

 2013年4月11日(木)に岩上安身のインタビューに応じた弁護士の岩月浩二氏(愛知県弁護士会・司法問題対策委員会TPP部会長)は、ISD条項は米国が押し付ける「不平等条約」と批判した。そして「憲法違反」「内政干渉」「外資主権」、さらには「クーデター」というキーワードでTPP問題の焦点を大きく浮き彫りにし、同様に米国から「不平等条約」を押しつけられた韓国政府も、米国とのFTA(自由貿易協定)締結の際に、ISD条項の盛り込みを回避しようと必死に抵抗を試みたことを指摘した。

 岩月弁護士のように、正面から真摯にTPP問題に取り組んでいる法曹関係者は、ごく稀である。「TPPは違憲です。法律家は、とりわけ憲法学者は何をしているのか」と憤慨する岩月氏は、「絶望的だが、この状況を覆すことは可能と信じる」と力強く訴えた。

以下、インタビュー実況ツイートのまとめに加筆・訂正したものを掲載します。

憲法の存在が無視されている

岩上安身「まず、岩月先生がTPPやISD条項の危険性に気づかれたきっかけをお教えください」

岩月浩二氏(以下、敬称略)「ISD条項がTPPの要になっていると思います。私はたかだか4カ月くらいしか勉強していませんが、ISD条項は多くの問題をはらんでいることが分かった。これは、本来なら憲法学者や日弁連のしかるべき立場の人が指摘すべきことなのですが」

岩上「先生は、ISD条項は、途上国の司法制度の不備を理由として、途上国の司法を排除することを目的とする制度だと評しています。そして、日本がこのISD条項を認めるのであれば(すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属するとしている)憲法76条をはじめ、41、99条など多くの条文に違反する。また表現・言論の自由を保障する憲法21条などには、『ただし、外国投資家の利益を害する場合はこの限りではない』とのただし書きが必要になってくると、ある種の皮肉を込めて語っています」

岩月「外国人投資家ができるだけ儲けるには、投資対象国のルールを都合よく変えてしまうことが手っ取り早い。しかしそれは、戦後の国際秩序と完全に矛盾している。ISD条項は外国人投資家に内政干渉を促す制度にほかなりません。

1995年ごろまでは、ISD条項の発動は年間でも1、2件でした。が、NAFTA(北米自由貿易協定)で初めて、先進国同士がISD条項で結ばれたのを受け、訴訟が活発になった。最初の例は、『エチル事件』です(人体有害性の指摘があるガソリン添加剤の輸入を禁止したカナダ政府を生産者である米エチル社が訴えた事件)」

岩上「あの事件で使われた論理が『間接収用』でした。(資産接収や物理的損害がない場合でも、その国の法律・規制を理由に外資系企業のビジネスが制約された場合、国家による収用と同等の措置がとられたとみなして、損害賠償を請求できるという理屈)」

岩月「例えば、町並みを整えるために、都市計画の規制を強化する際、当然所有権の行使が阻害されるが、(日本の場合)憲法21条『公共の福祉に反しない限り』という文言によって訴訟を起こされることは通常考えられない。しかし『間接収用」という考え方では、個々の所有権が損害を受けたとの理由で、自治体を訴えることができるのです」

ISD条項に懸念を表明しない専門家たち

岩上「ISD条項というのは『市場奴隷制である』とさえ言われています」

岩月「投資家にとって都合の悪い部分を極力排除するものですから、(投機ではない)リアル(実需)の世界で働いている人の収入は減り、労働条件は悪くなるでしょう」

岩上「一般労働者が国家によって保護されることのない奴隷のような存在になるということですね。非常に恐ろしい話です」

岩月「これはある種の『クーデター』だと思いますが、これに対し、発言すべき立場にいる人が何も言われないのがどうにも解せない。まず憲法学者が発言して当然でしょう。国際法の学者も言ってしかるべきです」

岩上「基本的人権が侵されるという話なら、シンプルに理解できるから、反応が得られやすい。9条を巡る議論もそうです。ところがISD条項がらみの場合、憲法の専門家でも、その多くはISD条項について不勉強であり、しかもアメリカから不意打ちの格好で突きつけられていますからね」

岩月「教科書に載っていない、知識の蓄積がないことを論じるのは、学者が一番怖れることですからね」

岩上「『民法』が変えられようとしているという話も聞こえてきますが、これはどういうことなのでしょうか」

(※)民法

人が集まって社会を形成すると、他人に対して権利を持ったり義務を負ったりするが、その権利や義務の内容について一定のルールがないと秩序が維持できなくなる。このような一定のルールを定めたのが民法である。

私人間の生活関係を規律するような法律であり、普段生活をしている私たちが、だれかほかの人ともめた時、その事件を解決するために定められている法律。ちなみに民法の法律条文は数が多く、1,000条をこえて規定されている。

岩月「ポイントは、外国人に分かりやすいかどうかということ。契約法をアメリカ法の発想に変えてしまおうということです」

岩上「明治以来、日本は西洋文明を租借して国の形を作ってきた。戦争をはさんで憲法も変わりました。とはいえ『民法』には継続性があり、膨大な積み上げがあります。その民法ががらっと変わるというの、交通ルールが急変するような話で、あらゆるところで衝突が起こる。悪いことをした認識がなくても違法だと言われかねません」

岩月「アメリカでは大統領に貿易の交渉権はありません。今までは『大統領貿易促進権限(TPA)』(※)というもので権限が与えられてきましたが、2007年に失効している。ただ、02年成立したこの法律は『国際貿易の拡大は、米国の国家安全保障にとって必須のものである』という文言から始まっているおり、この点を今さらながら問題視したい」

(※)大統領貿易促進権限(TPA)

米合衆国議会から大統領に与えられた、他国との通商協定に関する交渉権限。合衆国憲法によれば、本来、関税と通商については大統領に交渉権限がない。]

ジョージ・W・ブッシュ政権は、2002年8月に成立したTPA法(2002年超党派貿易促進権限法)によって貿易促進権限(TPA)を得た。

これによって、議会への事前通告や交渉内容の限定などの条件を満たす限り、議会側は行政府の結んだ外国政府との通商合意について、個々の内容の修正を求めず迅速な審議により一括して諾否のみ決することとされた。

TPAは2005年6月に延長され、再延長が議会に働きかけられたが果たされず、2007年7月1日に失効したまま現在に至っている。(wikipediaより)

韓国政府がエコカー減税を先送りした真の理由とは

岩上「さかのぼって日米安保から碇が下ろされていたと」

岩月「サンフランシスコ平和条約に基づく日本の国家賠償は、アメリカが物品と役務で賠償すればいいと告げてきたので、実質的には公共事業という形で痛まずに行われきた。それが今になって、アメリカに『借りを返せよ』と言われている。それがTPPだし、日米安保なんです」

岩上「日米安保とTPPを一緒にして考えないと本当のところは理解できませんね。昨日、元内閣官房副長官補の柳澤協二氏にインタビューを行いました。彼はイラク戦争を反省し、アメリカにひたすら追随していくことが果たして日本にとっていいことなのかと疑問を口にされた。冷戦の間は日本を守ってあげるよといい、優しくしてアメ玉までくれたおじさん(米国)が、今はTPPで日本から詐欺的な収奪を行い、日本を(中国に対する)盾にする軍事戦略を立てているとまで言っておられました」

岩月「アメリカの国としての最盛期は90年ごろ。今は財政が破綻状態です」

岩上「90年以降、アメリカは必要のない戦争を繰り返し、巨大な軍事国家となった。それは、崩壊につながって当然のこと。TPPを日米安保と一体で考えると、アメリカは太らせてきた日本と抱きつき心中をしようとしているようにも映ります」

岩月「ぜひ知ってほしいのは、韓国の法務省が、07年の米韓FTA(自由貿易協定)締結前にISD条項を認めるとどうなるか真剣に検討したということ。韓国の法務省は、ISD条項を非常に真剣に憂えていたんです。

 そして、この条項を使われる限りは、政府・地方政府のあらゆる不作為が提訴の対象となると考えなければならない、という結論を導き出している。だから、ISD条項が盛り込まれない形でFTA協定を結ぼうとしたんです」

岩上「つまり韓国政府は、ISD条項で実際に訴えられて敗訴する場合もあるということだけではなく、投資家の利益を第一に考える状況が自国に常態化することを怖れていたわけですね。韓国政府はエコカー減税をやろうしたが、米国企業に訴えられるのではないかと考え、先延ばしにしたことが、最近、明らかになりました。もっとも国民には、違う理由で説明していましたが。

 韓国はなぜ、ISD条項の導入をはねのけられなかったのでしょうか」

岩月「それは難しい質問ですね。私には分かりません」

岩上「日本がISD条項に合意すれば憲法99条『公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う』に、『外資の利益を最優先にする』という、ただし書きが入ることになると、岩月先生は主張されています。これではまさに外資主権の下の属国ではないですか」

岩月「本来は認めないという態度を貫くべきです」

岩上「国益が損なわれるだけではなく、国民主権、民主主義が奪われる」

岩月「奪われますね」

アメリカは自国の法律を変えない

岩上「ISD条項による仲裁事例であるメタルクラッド社のケースを説明してください」

岩月「有害廃棄物処理場をめぐって争われたケースです。もともとは、メキシコ政府が、国内企業に処理場の建設許可を出していた。メタルクラッド社は、そのメキシコ企業に出資し、廃棄物処理事業を請け負いました。しかし水質汚濁の懸念から、処理場建設反対運動が起こった。

市当局は、市からの許可を得ていないとして建設中止を求めたが、同社は連邦政府からの許可があるとして、処理場を完成させた。が、住民の妨害行為によって操業ができず、メタルクラッド社は2000万ドルの賠償を求めて、世界銀行の下の投資紛争解決国際センター(ICSID)に提訴し、1700万ドルの賠償を得ました。メキシコ政府と地方自治体の判断が同社の利益を損なっているというのが、このケースのポイントです。

 日本人投資家と外国人投資家が国内で同じ商売をしている場合、外国人投資家の財産に関しては、国際投資仲裁に訴えを起こすことができるが、日本人はできません。NAFTAにおけるISD条項を使った訴訟は45件あり、メキシコがアメリカを訴えたのが1件、カナダがアメリカを訴えたのが14件です」

全世界の国民同士の連帯で覆すことは可能

岩月「メキシコやカナダの訴えの中身は分かりませんが、NAFTAのみならず、アメリカはWTO(世界貿易機関)や米韓FTAでも、国内でどう履行するかを考える過程では、(自国の法律は変えないで済むように)連邦法・州法に反する条項は無効という姿勢であったことは確かです。日本は暴れる覚悟で臨まなければ、アメリカに不平等条約を押しつけられてしまいます」

岩上「日米安保やTPPをどう振り払えばいいのでしょうか。国内法や地方自治であれば、国民の意思で決められますが」

岩月「まず地方自治という問題をどれだけ重く見ていくかでしょう。特に基礎自治体をどう考えるか。自分たちの生活圏をどう作っていくのか。その立場から視野を広げて考える姿勢が、グローバリズムに向き合っていく上でのポイントになると思います」

岩上「韓国は米国とのFTAに批准しましたが、それをなんとか覆そうとする動きも見られます」

岩月「全世界の国民同士の連帯の運動であると思います。覆すことは可能であると信じます」(了)

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  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見より) より:

    全国民が知るべき内容
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