10数人のジャニーズ・ジュニアが寝ているところにジャニー氏がきて……! 国連の批判をどう考えるか、林外相に聞きたい!―8.7 第5回立憲民主党「性被害・児童虐待」国対ヒアリング ―内容:国連調査団からのヒアリングを受けた石丸志門さんよりヒアリング 2023.8.7

記事公開日:2023.8.14取材地: テキスト
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(取材・文、木原匡康・IWJ編集部、文責・岩上安身)

 2023年8月7日、ジャニー喜多川氏による性加害を受けた元ジャニーズ・ジュニアの石丸志門氏への、立憲民主党によるヒアリングが行われた。55歳の石丸氏は、約40年前に受けた被害経験に関して、どのように「性的搾取」が行われたのか、きわめて生々しい言葉で語った。

 また石丸氏は、日本政府は、国連人権理事会の理事国に立候補しているが、当の人権理事会からの批判(下記の国連作業部会の会見を指す)にどう答えるのか、林芳正外務大臣など閣僚に直接話を聞きたいとして、「日本が先進国として、立ち続ける瀬戸際」だと訴えた。

 ヒアリングでは、ビジネスと人権に詳しい蔵元左近弁護士も登壇し、この問題は外交・安保や経済政策、対中国との外交の点でも国益に関わると指摘。また、内閣府、法務省、警察庁、こども家庭庁、外務省、経済産業省の各担当者も出席して、質疑に応じた。

 なお石丸氏は、国連「ビジネスと人権」ワーキンググループ(作業部会)のヒアリングを受けており、同作業部会は調査報告の会見を、8月4日に行った。その会見の直後に同じ会場で、石丸氏は「ジャニーズ性加害問題当事者の会」副代表として、同会メンバーとともに会見を行っている。これらの模様は、以下でIWJが報じているので、ぜひ御覧いただきたい。

▲石丸志門氏(2023年8月7日、IWJ撮影)

「合宿所」の大部屋で、10数人のジュニアが寝ているところにジャニー氏が入ってきて……! そして翌日3万円が渡された!

 石丸氏は1982年1月17日、14歳の時にジャニーズ事務所のオーディションに合格した。その4週間後に、原宿にあったジャニー喜多川氏の個人邸である「合宿所」に初めて行った。

 大部屋でジャニーズ・ジュニアが10数人、ソファベッド等で寝ていたという。電気が消えても、異様な事に、全員無言で身動きしなかった。なぜなら、「これからジャニー喜多川がやってくることを全員が知っていたから」だという。

 ジャニー喜多川氏は、電気が消えて15分後頃に入ってきた。石丸氏は、その日のうちに被害を受けた。ジャニー喜多川氏は、一晩に数人、オーラルセックスをジュニアたちに行った。アナルセックスを強要された者もいた。しかし誰も声をあげず、身動きもしなかったという。

 石丸氏は、「第二次性徴期の男性の身体は、性的興味がなくとも、性器をいじられれば、勝手に反応して、摩擦を受ければ、勝手に射精してしまう」「それをジャニー喜多川は、夜毎に性的搾取を行っていた」と語った。

 次の日帰ろうとすると、石丸氏の記憶では3万円をジャニー喜多川氏から受けとった。他のジュニアの記憶では、1万円あるいは5万円の場合もあった。

▲ジャニーズ事務所本社(2023年4月29日)(Wikimedia Commons、Beryllium Transistor)

「性的搾取」で気に入られたジャニーズ・ジュニアは出世街道に乗れる! これは抗えない、例外のない事実!

 当然、合宿所に「行きたくない」と思うジュニアも出るが、彼らはジャニー氏の覚えがめでたくなくなり、「仕事をもらえる確率」が下がったという。逆にジャニー氏に気に入られ、「性的搾取を受ければ受けるほど、仕事をもらえる確率が上がった」。

 石丸氏自身、2年ほどたって、ジュニアの中でもトップのほうに入った頃、オーラルセックスを受けた翌日、意図的に「最近テレビに出てないから、テレビの仕事が欲しいなあ」と言ってみたという。すると、「ちょうど来週から始まるドラマがあるから、出ておいでよ」と言われ、テレビ局に行くと、すでに石丸氏の名前が書いてある台本が置かれており、半年間のドラマに出ることができたという。

 「要するに性的搾取によって気に入られたジャニーズ・ジュニアは出世街道に乗ることができる。これは抗えない、例外のない事実」と石丸氏は断言した。

 しかし一方で、当時のジャニー喜多川氏は「一度怒ると後に引けない、切れやすいタイプ」だったという。

 あるグループのバックダンサーとして踊っていた石丸氏が、「バックダンサーを降りたい、テレビの仕事に集中したい」と言うと、それだけで「もう来なくていい」と電話を切られた。

 翌週から新しいテレビドラマに出演が決まっていたが、テレビ局から「ジャニーさんには考えがあるみたいだから、今回の話はなかったことにしてくれ」と言われたという。「つまりジャニー喜多川に気に入られ続けなければ、芸能界でジャニーズのアイドルとしてデビューすることはかなわなかった」。

被害者は軽く4桁は超える! 一方、告発の理由はお金ではない!

 こうしたジャニー喜多川氏の性加害による被害者の数を、国連の作業部会は「数百人」と発表したが、石丸氏は「これは非常にミニマム」で、「確率論で普通に計算すれば軽く4桁は超えるはず」だという。

 その例証として、ジャニーズ事務所発足以前である約70年前から、 作曲家の服部良一氏の次男、服部吉次氏やその同級生が、わずか8歳でジャニー氏による性的被害にあっていたことを指摘した。それだけ長期にわたって、性加害が行われていたということである。

 また、「一部、私たちがお金目当てではないか、嘘を言っているのではないか、という意見がある。しかしジャニーズとは一切関係ない、しかもお金に一切困っていないであろう服部良一先生の息子さんが、80歳を手前にして、お金目当てで、名声目当てで、こんな恥ずかしいことを告白するでしょうか? 性被害をわざわざテレビカメラの前で告白して、得られるものは何があるんでしょう? 誹謗中傷や色眼鏡で見られることはあっても、お金が入ってくるだとか、そんなことは一切ありません」と、告発の理由は、金銭等ではないと否定した。

「身を挺して止めていたら、数千人の被害者は生まれなかったのに」という「加害者意識」!

 石丸氏らが性被害告発に立ち上がった理由は、同じくジャニーズ・ジュニア出身のカウアン・オカモト氏による告発と、BBCの報道だったという。

カウアン オカモト氏のYoutubeチャンネル。新曲「THE FIRST」演奏後には「大きな光の後ろにはずっと大きな影があった。何度も何度も諦めろって言われてきた。そして自分だけじゃないってことも知っている」などと語っている。

▲BBCドキュメンタリー「J-POPの捕食者:秘められたスキャンダル」【日本語字幕つき】のサイト(BBC News Japan)

 石丸氏は今年56歳になるが、カウアン氏は27歳で、約30歳の差があることから、「ジャニー喜多川は亡くなる寸前まで同じことをしていたのか」「もし、自分たちの時代で、ジャニー喜多川を止めることができていたなら……もちろんそれが可能だったとは言えず、正直に言って、不可能だと思うが……仮に『こういうことはやめた方がいい』と身を挺して言って、もしかしたら、それが功を奏していたら、何千人にも及ぶかもしれない後輩の被害者は生まなかったのではないか、これが私の中では加害者意識として、心の中に根付いてしまった」「これはもう黙ってはいられない」。

 石丸氏は、15年間、ジャニー喜多川氏やジャニーズ事務所を称賛する内容のブログ800本を書いており、週刊誌からはジャニーズ評論家としてコメントを求められたこともあったという。

 石丸氏はBBCの報道とカウアン氏の告発以降の、各報道局の報道の仕方、特にジャニーズのタレントが司会やコメンテーターを務める報道番組を注視した。

 あるコメンテーターは、「ジャニーズ事務所の看板を外さず、このまま続けていいのか、被害を訴えている方に真摯に向き合わなければならない」など、一見踏み込んだように聞こえると発言をしたという。

 しかし、その人物は、石丸氏がよく知っている人物であり、石丸氏は「いや、あなた知っているでしょう、あなただって被害を受けているでしょう、それを何を他人事みたいに言っているんだ」と強い調子で憤りを語った。

「あなたが性被害者だったら、何をもって救済されたと感じるんですか?」と、国民全体に問いたい!

 国連の作業部会によるヒアリングの際、石丸氏が被害を受けた事実をあらいざらい告白すると、彼らは非常に心を痛めている様子だったという。

 石丸氏は、8月4日の国連作業部会の記者発表について、「これは一ジャニーズ事務所と被害者との問題ではなく、エンターテインメント業界に関わる全ての企業、人、国の、全てが力をあわせて、具体的で透明性のある調査と、実効性のある救済をするべきであると、国連は断じてくれた」と高く評価した。

 石丸氏たちの活動は、「ジャニーズ事務所を責めようというものではない」という。事務所の現経営陣に今すぐ退陣を迫ったり、事務所の解体を求めたり、今すぐ裁判で訴えるという気持ちで活動しているわけではないという。

 一人でも多くの国民に、「あなたが性被害者だったら、何をもって救済されたと感じるんですか?」と問いたいという。8月4日の記者会見の最後に報道陣に問いかけた「あなたが帰りにレイプをされたとして、レイプ犯に何をされたら救済されたと思いますか?」との問いを、日本国民全体、そして立法府である国会も、行政府である国、役所も考えてほしいという。

日本が理事国に立候補中の、国連人権理事会からの批判! どう考えるのか、林外相に直接うかがいたい!

 石丸氏は、「日本は国連常任理事国入りを目指し、国連人権理事会でも立候補していると聞くが、その当の国連の人権理事会から、『この人権侵害は許されることではない』と名指しを受けたこの現状で、果たして、国連の場で、日本はプレゼンスを維持できるのか? よく考えていただきたい」と語った。

 その上で石丸氏は、「小倉(將信)子ども政策担当大臣と話したい。また、国連常任理事国入りを目指し、人権理事会に立候補したいのであれば、林(芳正)外務大臣とも、その点を踏まえてどうお考えなのか、直接お話をうかがいたい」と、閣僚と面談の希望を語った。

▲林芳正外務大臣(2023.8.8、IWJ撮影)

 そして出席した各省庁の担当者に対して、「お役人の皆様は日々たくさんの業務に忙殺され、本当にお疲れのことだと思う。しかし、これは一芸能事務所の問題ではなく、日本国家、日本国民が、世界から見られている、日本が先進国として、立ち続けるための瀬戸際に今いるものだと思っている。このことを意識を共有していただければ幸いだ」と締めくくった。

外交・安保や経済、対中国の点でも国益に関わる問題!?

 続いて語った蔵元弁護士も、国連作業部会の調査に協力、面談に参加している。

▲蔵元左近弁護士(2023年8月7日、IWJ撮影)

 蔵元弁護士は、作業部会の会見内容を振り返り、その前提とされる、国連のビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)では、「主要な人権を尊重し、保護する法的な義務は国家つまり政府に課されている」と指摘した。

 その上で、作業部会の報告のポイントは、「政府や、被害者と関係した企業が、対策を講じる気配がないことから、政府が主な義務を担う主体として、実行犯に対する透明な調査を確保し、謝罪であれ金銭的な補償であれ、被害者の実効的救済を確保する必要性」があるとしたことだと指摘した。

 また、日本政府が国連人権理事会に立候補している点を踏まえ、ビジネスと人権の取り組みは、外交・安全保障や経済政策と密接に関り、対中国との観点で米国やEUと協働する点から、国益にも関わることだとして、この点は閣僚に責任があると指摘した。

そもそもジャニーズ事務所は「公共調達で人権配慮」の政府方針に合致するのか?

 加えて蔵元弁護士は、2023年4月3日に、日本政府が「公共調達で人権配慮を求める」と発表したという内閣官房のプレスリリースにも言及。これまで政府のPRに関わってきたジャニーズ事務所を、今後も政府が起用する際、現在の事務所の事件への対応は、人権配慮を求める政府方針に合致するのか?と疑問を呈した。

 さらに、国連作業部会は、テレビ局にも人権デューデリジェンス(※)を求めているが、政府がテレビ局と公共調達の契約を結ぶ際の対応はどうなるのかと指摘した。

※IWJ注:人権デューデリジェンスとは、企業活動における人権リスクを抑える取り組み。自社の企業活動において強制労働やハラスメント等の人権リスクや人権に対する負の影響がないかを特定し、そのリスクを分析・評価して適切な対策を策定・実施する。

国連作業部会は政府に調査や救済の義務があると断言したが、国として「被害者に正式ヒアリング」するのかという質問に答えず!

 続いて、立憲民主党議員から、出席した各省庁の担当者等に質疑が行われた。

▲質問する立憲民主党議員(2023年8月7日、IWJ撮影)

▲回答する各省庁の担当者(2023年8月7日、IWJ撮影)

 国連作業部会が政府に調査や被害者救済の義務があると断言したことから、「政府として被害者に正式にヒアリングできないか?」との質問に対して、内閣府の担当者は、「子どもの性被害に関し、34の緊急対策を取りまとめたので、実行する」と述べたのみで、ジャニーズの性加害被害者へのヒアリング実施については明言を避けた。

質疑応答で、外務省は「作業部会の報告は、個人の専門家の見解で、強制力はない」と説明!

 「日本は、国連人権理事国に立候補しており、当選するには、国連人権理事会による今回の指摘に従って政府は動く必要があるはずだが、動くのか?」との質問に、外務省の担当者は、「個別の事項については、答えられない」とする一方、「人権理事会の(指摘)と言われたが、今回の報告は、正確には、個人の専門家としての見解」と、理事会の正式な指摘ではなく、「強制力はない」と、はぐらかす説明をした。

 聞きようによっては、今回の国連人権理事会の指摘は、「個人の専門家としての見解」で、軽いものであり、日本政府としては、重くは受け止めないとも聞こえる。

 出席議員が石丸氏に、閣僚との面談希望の意図を聞くと、石丸氏は、「朝鮮日報でもこの問題は報じられ、国際問題となっているが、林外務大臣は日本国の正当性をどう訴えていくのか、その覚悟を聞きたい」等と回答。さらに、立憲民主党の蓮舫参議院議員が芸能界出身であることから、話を聞きたいと表明。また、この問題の追及は立憲民主党にも資するとして、泉健太代表とも話したいと述べた。

ジャニーズ事務所は、性加害の「幇助」に該当しないのか?

 「政府主導で相談窓口を設置すべきだが、子どもは自分で声を上げにくいので、第三者が警察へ通報の義務を負うなど、児童虐待防止法改正などが必要ではないか」との質問に対して、内閣府の担当者は、「保護者などが性被害にあった子どものサインに気付くための啓発、第三者が通報しやすい環境整備に取り組んでいる」「特定の事業者に関わる事案は、当該事業者が対応すべきだが、当方としては相談窓口の充実、法的支援の充実等を行いたい」等と回答した。

 「以前のヒアリングで、強制性交罪や強制わいせつ罪に関して、当事者(ジャニー喜多川氏)が亡くなっているため、捜査しないとかできない等のやりとりがあったが、ジャニーズ事務所が、会社として実態を認識しても対応せず、タレントが『合宿所』に行くようにスケジュールを認めていれば、『幇助』に該当しないのか。それも当事者が亡くなると自動的に(捜査することが)なくなるのか」、との質問があった。

 これに、警察庁の担当者は「犯罪に該当するか否かは、具体的な事実関係に則して判断される」「一般論としては、被疑者が亡くなった時にも、個別の状況にもとづいて判断される」「公訴時効については、刑事訴訟法で犯罪が終わってから何年とされているので、それに従って判断されることになるだろう」等と回答した。

 「10代やそれ以下で受けた性被害を、大人になって告発した場合の時効の問題はどうなのか」との質問に対して、法務省は「先般成立した性犯罪に関する刑法・刑事訴訟法の改正では、性犯罪の公訴時効を延長するとともに、被害者が未成年の場合は、18歳に達する期間を加算して時効を伸ばした」「ただし衆議院等の審議では、被害時以降の実態を十分に踏まえられているのか等の意見もいただいているので、附則に、施行後5年を経過した場合の検討や、申告の困難さ等について調査をするといったことが定められており、こうした審議を踏まえて対応していく」と回答した。

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  • 日時 2023年8月7日(月)11:00~
  • 場所 衆議院本館 第16控室(東京都千代田区)

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